AIアート×ゲームの可能性。楽しみを生み出すカギは「絵をどう活かすか」

 『ぼくとAIのなつやすみ』は、生成された絵を「どう活かすか」に焦点が当てられていたが、次に紹介する『AIアートインポスター』は、AIアートを生成することそのものの面白さを感じることができる作品だ。

 『AIアートインポスター』はお題に沿った絵をAIに描かせて遊ぶパーティーゲーム。プレイヤーはほかのプレイヤーと協力し、展覧会のための絵を準備することとなるが、一人だけお題を知らないプレイヤー(インポスター)が存在する。インポスターはほかのプレイヤーにバレないよう、テーマを予測しながらAIに絵を描かせなければならない。ゲーム終了時、アーティストはインポスターを当てれば勝利、インポスターはばれてもお題を当てられれば勝利となる。

 類似ゲームはすでにいくつか存在するが、お題となるワードを打ち込み、絵をAIに描かせるため、プレイヤーの絵の上手さはゲームに影響しないのが本作の特徴だ。AIが画像を生成することで、短時間で背景まで書かれた絵が描かれたり、人間ではお題から思い浮かばないような絵画が生まれたりするのは、それだけで面白い。ときには生成されたものがお題からズレていることもあり、笑いを生むこともある。

『AIアートインポスター』

 そもそも、AIによる画像生成はそれ自体がゲームのような面白さを有している。画像生成のもとになる「呪文」と呼ばれるワードから、ユーザーの求める絵を生成するまでの試行錯誤は、推理やクイズゲームのような感覚で楽しめる。実際、筆者も「Midjourney」が登場したてのころは「呪文」と、そこから生成された絵を友人と共有して遊んでいた。

 『AIアートインポスター』では、インポスターは自分がインポスターだと悟られないように、それ以外の回答者はインポスターにお題がバレないように、考えながらワードを打ち込むことになる。そうすることでAIアートが持つ「遊び」の側面を強化し、より楽しみを共有しやすくしていると筆者は感じた。

 そう考えてみると、本作は生成された絵をどう使用するか、どう活用してコンテンツにするかだけでなく、AIアートの生成過程までもがコンテンツの面白さに組み込まれているタイトルなのではないだろうか。

 なお、「AIインポスター」はSteamと、iOS/Androidで配信されている。こちらも短時間でプレイできるので、気になる方は触ってみてほしい。

課題はあるが、新たな遊びをもたらすAIアート

 重要なのは、AIは人間の創造した文化や作品を模倣し、生成を積み重ねることでそれを強調することはできるが、どのようなコンテンツをつくるかを決定するのも、そこに面白さを見出すのも(少なくとも現在は)AIではなく人間だということだ。

 今回紹介した2作品はどちらも、AI画像生成という道具を使って、いかに面白いコンテンツを作るかが考えられている作品だ。『夏休み』はAIアートを物語の中で重要な立ち位置に置くことで、『インポスター』は生成過程もパーティーゲームにおける盛り上がりの1つにすることで、それぞれ単にAIアートをゲームで使用すること以上の面白さを生んでいる。

 また、ゲーム以外での話題にはなるが、一時期SNS上で「ラーメンを食べる美少女」の画像をAIで生成し、共有するのが流行していた。丼に浮かぶ麺を、箸でつかんで口まで運ぶという、人間にとってはなんでもない動作のイラストをAIに任せると、丼に美少女が浮かんだり、髪の毛と麺が一体化したりといった、無秩序な絵が生成され話題になったのだ。こんな風に、AIが作り出したものを人間が「面白がる」ことで、ただの不出来な絵がコンテンツとして共有される。何を面白いと思い、共有するかも人間の営みだ。AIは蓄積されたデータを用いて、新たなものを生みだすことができるが、人間の恣意的な操作や意味付けがなくては新規性のあるものは生み出し辛いのだ。

 AIが人間が面白がるものを学習し、供給し続ける未来も想像できるが、それだけで完結するのは単純に「面白くない」と筆者は感じる。だからこそ、AI画像生成という道具をただ利用するだけではなく、新たな楽しみを生み出すような人の血が通った作品が、今後増えていくことに期待したい。

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