“顔出し解禁”を終えた学芸大青春。「ようやくスタートラインに立てた」5人がいま考えていること

 “現実世界とメタバースを行き来する”本格派ダンス&ボーカルグループ・学芸大青春(ガクゲイダイジュネス)。9月に大阪、10月に東京で初の「顔出し」でのライブにもなった『学芸大青春 3周年記念ライブ』を行った彼らは、現在「ピアノダンス」楽曲の5ヶ月連続リリースの真っ最中だ。今回は、ライブを終えたばかりの彼らに、素顔解禁となった経緯や現在の心境、ライブで感じたこと、そして新境地となるピアノダンス楽曲について聞いた。(堀口佐知)

顔出しは“切り札”ではない スタートラインに立った学芸大青春はここからが勝負

ーーついに素顔が解禁となりましたね。このタイミングとなった経緯を教えてください。

南優輝(以下、優輝):これまで、自分たちの音楽が世に広まってから解禁しようとやってきたのですが、そううまくはいかなかった、というのが正直なところです。“このままでいいのか”という葛藤は、5人の中につねにありました。僕らの目標である「青春を届ける」ことを達成するためには、持てるものをすべて使おうという結論に至り、3周年記念ライブで顔出しをすることになりました。

南優輝

ーーみなさん、納得されたうえでの結論だったのでしょうか?

優輝:最終的にはそうですね。過去にもこの話が出たことはありましたが、まだやれることはあるだろう、と踏みとどまったことも何度かあります。たとえばTikTokやYouTubeに注力してみようとか、サングラスや仮面ではなく目線にモザイクを入れて動画を撮ってみようとか、いろんな可能性を話し合いました。でもやっぱりなかなかうまくいかなくて。今回言い出したのはたまたま僕でしたが、みんなそれぞれ顔出ししたいと思うタイミングはありました。

ーーTikTokも、複数のコンセプトを持ったアカウントを運用していたり、その名前が何度か変わったりと、試行錯誤していることは感じていたので……いまの言葉にもリアリティがありますね。

内田将綺(以下、将綺):僕個人としては、過去に顔出しの話が出たときも、まだ出したくないなと思っていました。これは最終兵器だからと。ただ今回のタイミングで話し合ってみて、もうそれしかないのかなと思う瞬間があったので、決断することができました。

内田将綺

ーー「青春を届ける」とは、具体的にどんな状態をイメージしていましたか?

優輝:数字的な目標というよりは、たとえば街中で自分たちの曲がよく耳にしてもらえるとか、音楽番組のランキングに入っているとか、感覚的に届いていると感じられるような状態ですね。

将綺:抽象的なものだからこそ、決断が難しかったです。

星野陽介(以下、陽介):これまでは、顔出しが“最後の切り札”だと思っていて、このカードを切ってしまったら自分たちになにが残るんだろう、という不安がありました。でもカードを切ることで、僕たちはようやくスタートラインに立てるんじゃないかという考えに変わったので、今回の決断ができました。ここからが僕らの本当の勝負です。

星野陽介

ーー葛藤がありながらも素顔が解禁されて、ファンの方からの反響はいかがでしたか?

将綺:「思ったとおりの顔だった」といった言葉をいただいたのは、すごくうれしかったですね。安心しました。

陽介:僕らの2次元の姿(キャラクター姿)が好きな方は特に、僕らを美化して見てくれてる部分があると思うんです。その期待を超えられるか不安もあったので、「私のタイプだった!」とコメントがいただけたときは、安心感が大きかったですね。

優輝:音楽や内面をまずは知ってもらいたいという思いで活動してきたこの3年間は、決して無駄じゃなかったと思えました。2次元であってもそれも僕らだし、3次元の生身の姿でも中身は変わらないからこそ、イメージ通りだと感じてもらえたんだと思います。

相沢勇仁(以下、勇仁):いつも応援してくれているじゅねフレ(ジュネスファンの呼称)はもちろんですが、今回の3周年記念ライブで顔出しすることをきっかけに久々に見てくれた方もいました。「ようやく顔出しできてよかったね」と温かいコメントをくれたり、「みんなかっこいい」と言ってくれる方もいて、うれしかったし、顔を出してよかったなと思います。

相沢勇仁

顔出しで手に入れた、“表情”と“視線”でライブパフォーマンスの質が向上

ーー3周年記念ライブのオープニングでは、客席のセンターステージから登場しましたね。観客のすぐ近くでパフォーマンスしてみて、いかがでしたか?

優輝:いつも応援してくれているみなさんへの感謝を込めて、客席から登場しました。いざやってみると緊張しましたね。みんなと目が合うし、情報量も多くて、僕たちにとって新体験でした。

仲川蓮

仲川蓮(以下、蓮):そうですね。みんながこっちを見るので、見ないでほしいなと思いました(笑)。

一同:(笑)。

将綺:人見知りが出てるよ。

蓮:これまではサングラスのフィルターを挟んでたから大丈夫だったんですが、素顔だと緊張しちゃいました。

ーーサングラスを外してのライブパフォーマンスで、感じたことはありますか?

陽介:ペンライトってこんなに綺麗なんだと思いましたね! 自然とテンションが上がるし、今までにない高揚感もあって、すごくいい気持ちでパフォーマンスできました。

蓮:僕は、メンバー同士のアイコンタクトがしやすくなったのがうれしかったです。「Suger」では毎回優輝と目が合うたびににやけてました。心から“楽しい”と思う瞬間が増えましたね。

優輝:これまでは視界が悪くて、ブレイクダンスをするときに恐怖心がありましたが、今回はサングラスがない分、より伸び伸びと踊れるようになりました。あとダンスでの表現に、表情をつけられるようになったのは大きいです。たとえば切ない曲のときは、表情でも切なさを表現するように意識しました。お客さんと目が合って、その子まで切ない表情に変わっていたのを目にしたときは、僕の表現がちゃんと伝わったんだと体感できて、改めてライブって素敵だなと思いました。

ーー表情や視線もパフォーマンスに加わったんですね。

将綺:僕はお客さんの反応で、さらにテンションを押し上げてもらったと感じています。これまではどこか僕らが一方的に客席を見ている状態でしたが、今回は目が合ったことをお客さんもはっきり感じられるようになったのか、みなさんすごくいい反応を返してくれるんです。それでこちらも気持ちが高まって、より感情を込めた表現ができるようになりました。パフォーマンスをするうえでの楽しみが1つ増えましたね。

勇仁:自分は、より遠くの席のお客さんに目線を送れるようになったのが大きいと感じてます。特に歌がメインの曲で、“いま、そこを見て歌ってるよ”と目線を届けられるのがうれしいですね。初めて会場全体に向かって歌う感覚を感じられて、すごく気持ち良かったし楽しかったし、新しい体験でした。

ーー今回のライブで、1番印象に残ってることを教えてください。

勇仁:東京公演で蓮とMCをしたことですかね。お互いあんまりたくさん話すタイプじゃないし、2人でMCをするのは初めてだったから思い出深いです。

将綺:裏で聞いてたんですが、普段あんまり喋らないコンビがそれっぽい雰囲気を作ろうと思ったのか、ちょっと芸人さんみたいになってましたね。会話の出だしが「僕たちね、共同生活をしてるんですけども」とか、「最近心霊現象が起こるんですよ」とか、漫才みたいでした。

優輝:蓮はMCが1番緊張してたって言ってたよね。

蓮:そうなんですよ。ライブではあんまり緊張しないんですけど、MCはかなり緊張しました。

ーー蓮さんは今回のライブで印象に残っていることはありますか?

蓮:ソロ曲(「予報通り、雨。」)で初めてシンセサイザーを弾いたことです。ずっとライブでピアノを弾きたいと思っていたので、やっと楽器の演奏ができてうれしかったですね。すごく楽しかったです。

 

優輝:僕もソロ曲(「Chilling Day」)が印象的ですね。今までデュオが多くて、1人でのパフォーマンスは今回が初めてだったんですよ。自分でラップを作詞した曲だったしすごくワクワクしてたんですけど、いざ終わってみるとめちゃくちゃ課題が見つかりました(苦笑)。みんなはこれを前からやってたんだなと感心してます。

ーーどんな課題ですか?

優輝:すべての時間と空間を自分1人で作り上げるのが大変でした。間奏の部分も自分で雰囲気作りをしないといけないし、表現の幅を広げないと、1人で見せ切るのは難しいと感じましたね。

ーー空間と時間を自由にアレンジできる分、場をもたせないといけない難しさもありますね。

陽介:自分もソロ曲(「This is ラブソング」)で、優輝と同じく、1人だと寂しく感じました。5人の曲では、誰かが歌ってるときに次のパートを歌う準備ができるんですが、ソロだと最初から最後まで自分で作り上げないといけないのがプレッシャーでした。

ーー以前のライブでは、2次元の姿でソロ曲を披露されましたが、そのときとはどう違いましたか?

陽介:お客さんからの視線がダイレクトに自分自身に向けられることですね。普段はそれぞれのメンバーを見ているファンの方たちが、このときばかりはいっせいに僕1人に注目してくれるので、圧倒されちゃいました。本来なら力にすべきなんですが、まだ慣れなくて。でもこんな機会はそうそうないですし、気持ちよかったです。

 あと、蓮とのデュオ曲の「Scene」で、蓮のラップパートを初めて自分で振り付けをして1人で踊ったことも、僕にとっては新しいチャレンジでした。

将綺:僕は、舞台裏でのやりとりで気付きがありました。ステージの裏で仕切ってくれているスタッフさんたちに迷惑をかけないよう、「どっちの方が楽ですか?」、「どっちがやりやすいですか?」と聞きすぎて、スタッフさんに「内田さんがパフォーマンスに集中できる方で大丈夫ですよ」と言われてしまいました。パフォーマーとして気を遣いすぎたなと反省しています。だって僕、控えめで内気な性格ですから……。

蓮:内気じゃないでしょ(笑)。

優輝:どちらかというと前に出るタイプでしょ(笑)。でも気を遣う人だよね。

将綺:メンバーといてもそうで、なにかやるときに優輝と蓮が納得してくれていれば、僕もそれでいいやと思ってしまうんです。気にしいなんですよね。でもそれだけじゃダメだと気づいて、たまには我を出していこうと思っています。

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