国や自治体が取り組んでいる通信災害への対応に迫る 無料で使える「災害対策インフラ」に注目

無料で使える「災害対策インフラ」を紹介

 7月2日1時35分から発生し、86時間後の7月4日に全面復旧したKDDIの大規模な通信障害。auだけではなく、KDDIの回線を借用する格安SIMのユーザーなどにも影響が及んだ。

 今やスマートフォンは、生活するうえで欠かせない存在となっている。別のキャリアを契約していたり、デュアルSIMを運用していたりすれば通信障害に対処できるかもしれない。一方で代替手段がなければ、いざというときに困ってしまうだろう。

Photo by Pixabay

 今回のような通信障害に伴い、「00000JAPAN」の提供や「公衆電話」の活用などに注目が集まっているようだ。中には、フリーWi-Fiを活用して乗り切った人もいるだろう。そこで本記事では、今後より重要性が高まるであろう「通信災害対策」に資する自治体や企業のサービスを紹介する。

00000JAPAN(ファイブゼロ・ジャパン)

 「00000JAPAN」(ファイブゼロ・ジャパン)とは、日本で大規模な災害が発生したときに、安否確認などを行う目的で無料開放される公衆無線LAN(フリーWi-Fi)だ。00000JAPANは「無線LANビジネス推進連絡会」が中心となり、ガイドラインを制定するなどして取り組みを推進している。

 今回のような通信障害ではなく、主に自然災害の発生時に発動されている。2016年4月の「熊本地震」の発生時に初めて運用され、大手キャリアが自社のWi-Fiを無料で開放した世界初の事例として話題になった。熊本地震以降も、豪雨や台風などの自然災害が発生したときに開放されている。Wi-Fi設備を運用する事業者であれば、自らの判断で00000JAPANを発動できる。

00000JAPANを統括する無線LANビジネス推進連絡会のYouTubeチャンネル「00000JAPANの紹介動画」より

 2022年6月23日時点では、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルなどのキャリアや自治体などがサービス提供事業者として認定されている。00000JAPANを利用する際には、IDやパスワードは必要ない。「00000JAPAN」を選択すればすぐに利用できる。

 なお、通信は平文であり、暗号化されていない点に注意が必要だ。個人情報やクレジットカード番号などの入力は避け、あくまで緊急時の連絡や情報収集で活用することが求められる。

公衆電話

 不特定多数の人が使える、「公衆電話」。携帯電話の普及によって数が減少し続け、最近では見たことのない人も少なくないはずだ。 公衆電話は10円で利用できるうえに、100番・118番・119番は無料で使える。災害時には通話料が無料になることも。また、「災害時用公衆電話(特設公衆電話)」は災害時などに無料で利用できる。公衆電話・災害時用公衆電話の在処は、NTT東日本・NTT西日本のホームページから確認可能。防災マップアプリ「goo防災マップ」からも確認できるのでチェックしておこう。

App Store「goo 防災アプリ」のスクリーンショット

 使わない人が増えている中で、通信障害や自然災害の発生時に役立つ公衆電話。NTT東日本では、「はじめての公衆電話キッズページ」を設け、使い方を動画などでわかりやすく解説している。

NTT社が公開する「はじめての公衆電話キッズページ

 自治体・NTTなどが運営するWi-Fiサービス

 自治体などが提供するフリーWi-Fiは、通信障害や自然災害発生時にも活用できる。

 東京都は「TOKYO FREE Wi-Fi(FREE_Wi-Fi_and_TOKYO)」を展開しており、メールアドレスやSNSアカウントがあれば無料で利用可能だ。都心を中心に、アクセスポイントが点在しており、公園・美術館・空港などで利用可能だ。街中では観光案内標識・デジタルサイネージ・公衆電話にもアクセスポイントが設けられている。公衆電話には、「TOKYO FREE Wi-Fi」のマークが貼ってあるためわかりやすい。

 また災害に備えた取り組みとして、東京都はNTTグループと連携し「TOKYO FREE Wi-Fi」の公衆電話ボックスのアクセスポイントに、停電時のバックアップ電源機能を搭載している。

 NTTBPでは、「Japan Wi-Fi auto-connect」といったフリーWi-Fiアプリを提供している。空港や列車内、コンビニ・カフェなどにある提供元が明らかなアクセスポイントのみに、自動でつながる仕様。TOKYO FREE Wi-Fiをはじめ、JR東日本の主要駅で使える「JR-EAST_FREE_Wi-Fi」や、ローソンで利用できる「LAWSON_Free_Wi-Fi」などが対応している。

 訪日外国人向けではあるが、もちろん日本人も利用できる。専用のアプリをインストールし登録すれば、以降は簡単に接続できるのも魅力。無料で利用でき、いざというときに活躍するだろう。通信障害や自然災害発生時に備えるべく、自宅周辺のアクセスポイントにつながるかどうか確認しておきたい。

 本記事では、KDDIの通信障害をきっかけとして今後ますます重要性が高まるであろう「通信災害対策」に資する自治体や企業のサービスを解説した。総務省が公開している「Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル」などとも合わせて確認し、フリーWi-Fi接続時のセキュリティなどについての理解を深めつつ、より確実な通信災害対策を取ろう。

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