『Weekly Virtual News』(2022年6月20日号)
TikTok進出にAI化……多様化するVTuberと、VTuber的手法を取り込むアニメ・マンガ業界
いまやVTuberは「TikTok」にも進出している。そして「TikTok」に投稿した動画がバズったり、過去に発表した楽曲が人気になったり……といった形で「TikTok」で人気を得るVTuberも一定数増えてきた。そうした「TikTokで人気を得たVTuber」の一端が、「TikTok2022上半期トレンド」という形で可視化された。
タグ総再生数が約2.9億回を記録したVTuber・はっかの「#君と私わたがしたわし」や、10万本近くの投稿を集めたホロライブ所属の湊あくあのオリジナル曲『#あくあ色ぱれっと』など、VTuber発祥の作品が上半期のトレンドにまで上り詰めているのは興味深い。それだけVTuberがポピュラーなカルチャーとなりつつある証左かもしれない。「TikTok2022上半期トレンド」は、6月28日まで投票受付中だ。
@debutin100days 100日後にVtuberデビューする女子高生。#fyp #jk #vtuber #おすすめ #vlog ♬ Surges - Orangestar (feat. 夏背 & ルワン)
そして、「TikTok」からスタートし、幸先の良い初動を切るVTuberも現れた。「100日後にVTuberデビューする女子高生」は、アバターも名前も決まっていないVTuber志望者が、100日後のデビューを目指して「TikTok」にて毎日19時に動画投稿を行うというプロジェクトだ。投稿一本目の動画は29K=約29,000いいねを獲得しており、フォロワー数は25K=約25,000。「TikTok」全体で見てもなかなかの初動だ。
仮の名義とアバターで活動を始め、最初期のファンを獲得を試みるVTuberは一定数存在する。「100日後にVTuberデビューする女子高生」は、これを「YouTube」ではなく「TikTok」にて実践した形だ。そして、「デビューまでの過程」そのもののコンテンツ化は、プロセスエコノミーのわかりやすい一例と言えるだろう。「100日後にVTuberデビューする女子高生」は、5日目で「唯恋ひな(ひこいひな)」という名前が決まり、担当イラストレーターも決定したようだ。100日後にどのようにデビューするか心待ちにしたいところだ。
「興味深い形式のVTuber」をもう一例ご紹介したい。AI実況者育成番組『ゴー・ラウンド・ゲーム』だ。「ゲーム実況の生配信」という活動スタイルはVTuberとしてはありふれているが、配信に登場するVTuberはAIが動かし、合成音声で発話する「AI VTuber」の形式をとっている。
ぎこちなさはゼロではないが、ゲームや視聴者に対する反応、そして合成音声のなめらかさは、ふとした瞬間に「実は人間ではないか」と疑ってしまうほど、自然な存在として感じられる。Live2D製アバターも、セリフに応じて多様な表情を見せてくれ、その「表情豊かさ」はともすれば従来のVTuberも凌ぎ得る。先例たるAI VTuber「紡ネン」も含め、「中の人」と呼ばれる演者の存在しないVTuberは、どのような可能性を提示するだろうか。
国民的アニメにも3Dトラッキング技術が持ち出された。あの「ドラえもん」のメインキャラクターであるジャイアンが、誕生日を記念したスペシャル回にて3DCGとなり、歌って踊ったのだ。新曲『ジャイアントドリーム』のMVにて登場した3Dジャイアンは、ジャイアン役の声優・木村昴がモーショントラッキングを担当しており、歌と動きをともに担当声優が吹き込んだ形となる。