連載「MCUの『ゲーム横丁8丁目』」第4回:ゲームの裏技(後編)

現在ではありえない、ファミコン版『タッチ』原作完全無視の裏技……レトロゲームの“パスワード”には様々な物語がある

 さまざまな懐かしのハードが“ミニ”になって復刻したり、海外では中古ソフトの価格が高騰したりと、近年色んな意味で改めて注目が集まっているレトロゲーム。そんなレトロゲームについて、音楽業界随一のゲーマー&レトロゲームコレクターとして名高い、KICK THE CAN CREWのMCUがひたすら語り尽くす連載「MCUの『ゲーム横丁8丁目』」。

 連載第3回・4回で取りあげるテーマは、「裏技」。第4回では、意図して仕込まれた“裏技”のほか、パスワードやゲーム雑誌の投書コーナーなどについて取り上げていく。(編集部)

意図された技やパスワード技も

 ここからは意図して仕込まれた「裏技」を中心に取り上げましょう。まずはサン電子の『アトランチスの謎』ファミコン版。「アトランティス」ではなくて「アトランチス」なんですが、「アトランティスの謎」と言っている人に「アトランチスだよ」と指摘すると、マウントを取った感じになるのでやめたほうがいいです(笑)。

 この『アトランチスの謎』は全100面ですが、1面の次の面に行ける扉に入らず、逆方向に行って崖のところでギリギリで止まって落ちると、いきなり33面に行けちゃいます。このゲームは、いたる所に隠し扉があってワープできちゃうので、僕の友人のゲーム芸人フジタは、これを数分でクリアします。

 また、ハドソンの『キャッスルクエスト』は、簡単にいってしまえば将棋のコマを擬人化したようなゲームなのですが、このゲームのクエストモードでプレイヤーの名前を入れる際、自分の名前ではなく「おおくほななこ」と入れると、「おおくぼななこ」というキャラクターが突然現れて自己紹介をし始めます。自己紹介では、最後に「パパのつくったゲーム ヨロシクね」とスピーチします。恐らく開発者の娘さんだと思われる、温かい展開になるんですね。名前も生年月日も公開しているので、いまだと個人情報をさらしていると問題になると思うんですが(笑)。ほかに「なかしままさと」というキャラクターも出てくるなど、そういうパスワード的な隠し技、隠しキャラというのもあります。

 パスワードでいうとコナミの『月風魔伝』も有名ですね。タイトル画面で「つづける」を選んで、パスワードに「おわりをみたいなおわりをみたいな」と入力すると、いきなりエンディングシーンが見られます。

 ほかのパスワードものでいうと、ファミコン版『タッチ』についても話しておきたいです。

 『週刊少年サンデー』に掲載されていたあだち充先生の野球漫画『タッチ』を原作としたゲーム・ファミコン版『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』のことです。これは“伝説のクソゲー”ともいわれていまして、ゲーム内容がまったく野球とは関係なく、主人公の上杉達也と上杉和也がヒロインの浅倉南を守りながら謎を解くというものだったんですね。ゲーム内容もさることながら、ゲームの続きを復活させるパスワードがやばいです。

 ゲームは3人それぞれに入力するパスワードがあって、本来はゲームを途中でやめたときに表示されたパスワードを入力するものなのですが、ここで達也と和也のパスワードにそれぞれ「みなみにHしてしまいました」と入力し、最後に南ちゃんのパスワードに「TATUYAとHしてしまいました」と入力しゲームをスタートさせると、達也のパラメータが最強になります。和也は嘘をついているから弱い、という謎の状況になるんですね。

 もしかすると、『タッチ』のゲーム以降、あだち先生の漫画のゲーム化が一切ないのは、これが原因なのかもしれません。

 パスワードといえば、先ほどの『えりかとさとるの夢冒険』にもありました。「みのりくみこきよはる」といった特定のパスワードを入力すると隠しメッセージが表示され、また制作陣に対する愚痴や暴言など、いろいろなメッセージが表示されます。興味がある人は調べてみてください(笑)。

ゲーム雑誌も裏技で盛り上がる

 こうしてファミコンのゲームにいろいろな裏技や隠しコマンド、メッセージが多くなってきたことで、各ゲーム雑誌には必ず裏技のコーナーが誕生しました。

 ゲーム誌は「裏技」を毎号紹介するようになったんですけど、『ファミマガ(ファミリーコンピュータMagazine)』ではウル技(ウルテク、ウルトラテクニックの略)と呼んでいたコーナーがありました。このコーナーが「ウル技50+1」というように「+1」が特徴的で、毎回1本だけウソの技が載っていたんですね。どの技がウソかは書いていなくて、読者がそれを考えて答えを投稿するというコーナーでした。

 そうしたウソ技の中で、いまでも伝説として語り継がれているのがスクウェアのファミコンディスクシステム用アドベンチャーゲーム『水晶の龍(すいしょうのドラゴン)』です。掲載された記事は、なんとゲーム中のヒロイン「シンシア」と野球拳ができるという裏技だったのですが、プレイヤーがジャンケンで勝つと、シンシアが服を脱いでいくという内容で、掲載されたゲーム画面もリアルで、本当にシンシアが脱いでいる写真だったのです。当時の読者であった少年たちはこのウソ技に翻弄され、これがウソで、実際にはできない技だとわかった日には絶望の淵に突き落とされた気分でした。

 ちなみに自分の中で2番目は『グラディウス』のオプションが5、6個付けられる(普通は2個しか付かない)というウソ技が忘れられません。結構、本物っぽいものが掲載されていたんですよね。

 時々、わかりやすいこともありました。「1942」という有名な縦スクロールシューティングゲームがあったんですが、そのボスキャラがプロ雀士の井出洋介さんの顔という、画面を見るとすぐにわかるようなウソもありました。

 このコーナーは次号で、どれがウソ技か発表されるんですが、それまで一切情報はなく、当時はインターネットで調べるということもできなかったので、少年らは次号まで悶々としていました。これも裏技の思い出の一つですね。僕らの世代は、ウソ技というと「ああ、『水晶の龍』の野球拳ね」と口をそろえて言うと思います(笑)。

なんとゲーム内ゲームも

 SNKの『ゲバラ』というアクションシューティングゲームでは、「サスケvsコマンダ」という隠しゲームが入っていました。どちらも、元々はアーケードゲームで、『ゲバラ』だけでもすごく面白いのに、これはお得感がありました。

 遊び方は、『ゲバラ』のスタート画面で、まずステージセレクトで5面を選んで、その後に1Pと2PのコントローラーのAボタンとBボタンと上をそれぞれ同時に押したまま、ゲームのスタートボタンを押すと、画面が「サスケvsコマンダ」に切り替わって遊べるというものでした。

 あと、タイトーの『ゴルフッ子オープン』というゴルフゲームでは、あることをして全18ホールを終え、表示されたパスワードをゲーム再開時に入力すると同じくタイトーのゲーム『奇々怪界』の小夜ちゃんを対戦相手に選べたり、対戦相手がプロでキャディーがちえみの時に6番ホールでOBを3回繰り返すと、『奇々怪界』敵キャラのはしりタイが登場したり、ほかのタイトーのゲームキャラも登場するといった仕掛けもありました。

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