PERIMETRON・西岡将太郎のプロデューサーとしての審美眼 制約の中で表現を尖らせることができる理由

 新世代のミクスチャーバンドとして、数々の人気楽曲を生み出してきたKing Gnu(キングヌー)。

 その類い稀な音楽センスと、カオティックでディープな世界観は唯一無二とも言え、彼らの一挙手一投足全てに注目が集まっている。

 そんななか、King Gnuのミュージックビデオ(MV)やアートワークなどを制作しているのが、リーダー兼プロデューサー常田大希が主宰するクリエイティブレーベル「PERIMETRON(ペリメトロン)」だ。

 エッジの効いたクリエイティブで、King Gnuの醸し出す独特の雰囲気を表現するPERIMETRONの存在は、もはやそれなしでは語ることができないと言えるだろう。

 今回は、PERIMETRONで企画プロデューサーを務める西岡将太郎に、アイデアの源泉やクリエイティブを考える上で大切にしていることについて伺った。(古田島大介)

俳優・村上虹郎との出会いがPERIMETRONに入るきっかけに

西岡将太郎

 西岡は、もともと大手広告制作会社の「TYO」にプロダクションマネージャーとして勤めていた。

 そこでは、クライアントの広告案件における制作チームの進行管理や予算管理などを経験してきたという。

 そんななか、PERIMETRONに入るきっかけになったのが「村上虹郎くんとの出会いだった」と振り返る。

 「NTTドコモのCM案件の現場があって、そのメインキャストが虹郎くんだったんですよ。そのCM撮影の3日後くらいに六本木を歩いていると、偶然にも虹郎くんを見つけて(笑)。声をかけ、一緒に家路へと向かっているなかで意気投合し、連絡先を交換したことで、その後もよく会う仲になったんですよ。お互い遊び仲間として会ううちに、虹郎くんのスタイリストを務める松田稜平(PERIMETRONの元スタイリング・衣装デザイン担当)とも仲良くなって。『PERIMETRONのオフィスに遊びにおいでよ』と言われて、時々オフィスに足を運ぶようになったんです。そうこうしているうちに、半ば遊びの延長線上でPERIMETRONに加入したという感じですね」

ガワだけ決めれば、いくらでも尖ったクリエイティブを作れる

 2017年11月からPERIMETRONのメンバーとして活動を始めた西岡は、前職の広告制作会社での経験を生かし、さまざまなクライアントワークの企画・プロデュースを手がけている。

 映像作家やビジュアルエディター、デザイナーなど、新進気鋭のクリエイターらが集うチームのプロデューサーとして、どのようなことを心がけながら、クリエイティブ表現を行っているのだろうか。

 「表面的な流行りものや突拍子がないものではなく、文化的背景に沿っているか、育まれてきたカルチャーに筋が通っているかを大事にしています。まず最初にガワだけ決めれば、あとはいかようにもエッジを効かせたり、表現を尖らせたりできる。ただ、本質的には何が課題で、なぜそれをやるのかという肌感を理解した上で、クリエイティブに落とし込むのが大切になると思っています。そこに、バジェット(予算)の問題も絡んでくる。制作におけるさまざまな制約の中で、どういう感じで映像美術や描写を取り入れるかを意識していますね。この辺りは広告制作会社に勤めていたときに、いろんな案件に携わっていたことで、クライアントワークの全体感を把握できたのが役立っていると思います」

 クリエイティブを考える上では「ふとした瞬間に思いついたことをメモしたり、妄想の世界に浸ったりするなどして、アイデアを巡らしている」と西岡は続ける。

 「なにかルーティンがあって、そこにすがっていることはないですね。自分のなかで大切にしているのは『アウトプットのバランスを整える』こと。作品やアートワークを出すことは自分をすり減らしてしまうことだと考えていて。その制作に追われ、忙しくなり、アイデアが枯渇してしまうのは嫌なので、しっかりと考えられるように時間を作りたいと思うタイプなんです」

 また、現代ではスマートフォンが主要なデバイスとなり、テレビのような大画面ではなく、手のひらサイズの小さな画面で動画を見るのが主流になっている。

 そんななか、クリエイティブを制作する側として、どのような映像表現を試みているのか。

 西岡は「スマホの画面でも世界観が伝わるよう心がけている」と述べる。

 「VFX(視覚効果)などを入れることや、動画全体の色味のバランスを取ることも、最近は事前にスマホで検証をするようにしています。制作側は映像の完成品をパソコンで見る一方、いまの生活者はほとんどがスマホで見るわけで。そうなれば、視聴環境に合わせた映像表現を魅せた方がいい。ただ、大きなスクリーンで見てほしいという意識もあります。これは音楽家が楽曲をスピーカーで聴いてほしいと思う感情と同じかもしれません」

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