「もうメディアに出られないかも」から始まったメタバース生活。ガリガリガリクソンがバーチャル世界で取り戻した“少年時代”

 『あらびき団』や『ザ・イロモネア』『爆笑レッドカーペット』『エンタの神様』など、数多くのお笑い番組に出演している人気芸人・ガリガリガリクソン。彼はいま、芸人・株式投資家として活動しつつ、“メタバース”を遊び場としている。

 テレビ・劇場を主戦場とする芸人生活から一転、活動自粛を経て出会ったバーチャルの世界。そこで彼が衝撃を受け、ガリガリガリクソンの姿を脱ぎ捨てて真摯に活動するなかで取り戻した“少年の心”とは。芸人でありバーチャル世界の住人、という視点から見た“メタバース”など、独自の観点から大いに語ってもらった。(編集部)

「『どうせ芸能人が来て、荒らすだけ』と思われるのがすごく悔しかった」

――まず、いわゆる「メタバース」に出会ったきっかけを教えて下さい。

ガリガリガリクソン(以下、ガリクソン):率直に言うと、芸能活動を自粛しているタイミングがあったのですが、「多分今後もうメディアには出られないだろうし、自分の姿を出せないならVTuberとして活動してみよう」と思って勉強を始めました。

 本格的にやり始めたきっかけというのは、「ガリガリガリクソン」というキャラクターが強烈過ぎたので、この姿を”脱ぎたい”と思ったんですね。ガリガリガリクソンとして活動する事に飽きたし、効率が悪いので正直「ちょっとしんどいぞ」という感じだったんです。そこで新しいキャラクターを求めて「VRChat」や「NeosVR」にお邪魔した感じです。

ガリガリガリクソン

――現在はVTuberとしてタレント活動をするのではなく、メタバースの住人としての生活に比重を置いていますね。なにか理由があったのでしょうか。

ガリクソン:この2〜3年で『Oculus Quest/Quest 2』が出て、それがすごく普及したと思うんですね。実際に手にとって触ってみると、すごく面白い。YouTubeに何かを発信するというよりは、みんなとコミュニケーションを取る方が面白いなと思い、こういう形になりました。。

――これまでにMMORPGのようなバーチャル空間にハマったことはあるのでしょうか。

ガリクソン:過去にオンラインゲームをプレイしたことはあったのですが、その時はあまりハマれなかったんです。でも、いま自分がいるメタバースの世界は、自分でキャラクターを作れば、ほかに同じキャラクターが2人といないじゃないですか。そうやって自分の姿を作るようになってから、本格的にこの世界にハマりましたね。

 やっぱりお笑い芸人という仕事をしていると、バーチャルの世界でも個性を出したいんです。そうなると普通のオンラインゲームというよりは、オリジナルな姿をクリエイトしていきたい。バーチャルの世界にはそういう方がたくさんいたので、一気にハマってしまいました。

――ということはメタバースが最初にハマったバーチャル空間だということですね。不安などはありませんでしたか?

ガリクソン:不安というわけではないのですが、最初は「コミュニケーションが苦手な人が多いのかな」と勝手に思っていたんです。でも実際にみなさんと会ってみると全然そんなことはなくて、むしろ僕の方がうまく打ち解けられないというか、自分の殻が破りきれていないのかなと感じましたね。

――それは素の自分を出すのが難しいということでしょうか?

ガリクソン:正直恥ずかしい部分があるんです。僕がメタバースに来たきっかけって、完全に「ガリガリガリクソン」というキャラクターに自身が飽きてしまって、新しい自分、なりたい自分になれると思ってきたところがありました。とはいえ実際に始めてみると本当の自分に戻るというか、ガリガリクソンから新しい何かになるのではなく、ガリガリガリクソンになる前の僕に戻ってしまった。僕は本名が坂本なのですが、この世界では少年時代の「坂本くん」になってしまうので、まだ恥ずかしい部分はありますね。

 メタバースに入って色んな方々とやり取りするようになったのですが、「ガリガリガリクソン」のことを知ってる人もいれば知らない人もいます。これまでの「あ、ガリガリガリクソンさんですよね?」という距離感ではなく、あくまでもこの世界のひとりの住人として接してくれるので、現実世界よりも打ち解けやすいというか、話しやすいですね。

――なるほど。「お笑い芸人のガリガリガリクソン」として特別視されないということですね。

ガリクソン:そうなんですよね。きっと僕が出会ったなかには僕よりももっとすごいお仕事をされてる方がたくさんいらっしゃると思うのですが、そういうことは関係なく、みんなでキャッキャと遊べるのがすごく楽しいです。

――普段はメタバースでどのように過ごしているのでしょうか。

ガリクソン:色んな方が「このワールド面白いよ」とか「遊びに来ませんか?」とお誘いしてくれるので、声をかけてくれたところに顔を出して一緒に遊ぶという感じですね。お笑い道場みたいなワールドや、怖い話をするワールド、ほかにもサバゲーをするワールドがあったりして、本当にその日によって色んなワールドに顔を出しています。逆に言うと毎日特定のことをやっているというのはないですね。

 僕もTwitterとかで「こういうことしませんか」って誘ったりすることもありますが、みんな来てくれないので(笑)。なので、アグレッシブに活動されている方に「こういう企画をやってください」とお願いして、メンバーを集めていただいて一緒に遊ぶというようなことをしています。実は、僕は内気な方なので、「邪魔するのは悪いな」と思って1人でフラフラとして遊んでいることもあります。

――アバターをはじめメタバース上で様々なものをクリエイトされていますが、そのモチベーションの源泉はどこにありますか?

ガリクソン:お笑い芸人のころは、正直「ネタを一生懸命作る」みたいな体験がなかったんです。感覚でやっていた。特に僕はピン芸人なので、ネタも練習するというよりは自分のタイミングでボケて突っ込んで……というのが多かったので、「コツコツ積み上げていく」という体験をしないでここまで来てしまった。ですが、メタバースの世界にいる人は皆さんとてもクリエイティブで、たとえばアバターを作る人、ワールドを作る人、色んな仕組みを作る人……さまざまなモノをクリエイトしているんです。せっかくそういう場所にいるのに、何もせずふらふらと遊んでいるだけでは何も変わらないと思いましたし、僕と遊んでくれる人たちも、「お笑い芸人のガリガリガリクソン」としてではなく、新人の住民として受け入れてくれたので、その期待に応えたくて。

 それに「どうせ芸能人が来て、荒らすだけなんでしょ」って思われるのがすごく悔しかったので、それがモチベーションですね。「芸能人の暇つぶし」だと思われないためには、みんなと同じようなことをやって、みんなと同じことに悩まないといけないなと思ったんです。そこでUnityやBlenderを触りながら、その過程をTwitterなどにアップすることをはじめました。そうしたらみんなが応援してくれたので、これも続けるモチベーションになりました。人型のアバターを持っていくとみんなが「すごいね、頑張ったね」と言ってくれるのが嬉しいんです。

――タレントではなく、1人の住人としてみんなと同じ体験をして、成長していくのを楽しんでいるイメージですね。

ガリクソン:ある意味でRPG的と言うか、自分が成長していくのが面白くてやっている部分もあります。

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