キーボード沼”という深い世界(第二回)
“キーボード沼”への入口はキースイッチにあり “メカニカル”と“軸”を知ろう
一度入ると抜け出せないという危険な“沼”。そんな沼がガジェット界にも存在しているのはご存じだろうか。カメラ沼、レンズ沼、マイク沼——。中でも筆者が足を踏み込んでしまったのが、「キーボード沼」だ。
前回はキーボードの沼の導入としてキーボードの種類や、なぜ筆者が沼にハマってしまったのかをご紹介した。今回は、その沼の入口ともいえるキースイッチについて深掘りしていこう。
「キースイッチ」とは?
キースイッチとは、キーボードの中で核となる存在といっても過言ではないパーツで、キーボードの打鍵音や打感をつかさどるパーツを示している。軸の色により押した感触が変わることが多く、赤軸、青軸、緑軸という俗称で呼ばれ「どこそこ(メーカー名)の○○軸が〜」という感じで説明することが多い。
現在主流となっているキースイッチは以下の4種類。
メカニカル:ゲーミングキーボードをはじめとするやや高級路線のキーボードが採用しているスイッチ。キー一つ一つに可動機構があり、高価になりやすい
メンブレン:市販されている比較的安価なキーボードが採用している、突起のあるゴムシートを押す仕組みのスイッチ。
パンダグラフ:ラップトップPCで多く採用される、薄型の可動スイッチ。ペチペチとした感触が特徴。
静電容量無接点:物理的接点のない、耐久性に優れたスイッチ。東プレの「REALFORCE」やPFUの「HHKB(Happy Hacking Keyboard)」などが採用している
それぞれ特徴は異なるが、キーボード沼におけるキースイッチといえば「メカニカル」が主流。コスパに優れ、耐久性もあり、扱いやすいのが特徴。さらにメカニカルスイッチは、さまざまなメーカーのものがあり、「Cherry」や「Gateron」、「Kailh」といったメーカーが有名だ。
見慣れない言葉ばかりで面食らってしまう人もいるかもしれないが、「沼に入るならメカニカルがおすすめ!」とだけでも覚えておけば問題ない。なお本連載では、基本的にキースイッチといえば「メカニカル」のことを示している。
打鍵音や打感の根幹となる”軸”
先ほどはキースイッチの大枠の種類を解説したが、ここではさらに「軸」に焦点を置いて解説していこう。先述したとおり基本的にキースイッチは、青軸、赤軸、茶軸といった「色+軸」で表現される。手持ちのキーボードに何軸が使われているのかは、キーキャップを外せば簡単に確認することができる。
軸の種類はかなりあるので、すべての軸を網羅するのは割愛するが、大まかに解説すると下記の通りになる。
クリッキータイプ:カチャカチャと甲高い打鍵音でキー入力も滑らか。ザ・キーボードという音。主に青軸などが挙げられる。
リニアタイプ:コトコトいった割と静かな打鍵音で比較的落ち着いた雰囲気を持つ。主に赤軸などが挙げられる。
タクタイルタイプ:赤軸をちょっと固めにした感じで、確かなクリック感がある。優しい打鍵音が人気。主に茶軸が挙げられる。
打鍵音や打感というのは言葉ではなかなか伝えづらく、一番簡単に確認する方法は、実際に目で見て手にふれ、耳で聞くこと。家電量販店やPCショップのキーボードコーナーには、サンプルが展示されていることもあるので、そちらで試すのが手っ取り早い。ただ、このご時世と言うこともあるので、とりあえず音だけでも聞いてみたいという人には下記のような動画がおすすめだ。
さらに、こちらの動画で使用されているメカニカルスイッチテスターは実際に購入することも可能。なんと、72種類ものキースイッチの打鍵音や打感を確認することができる優れものなのだ。
なお、こちらのメカニカルスイッチテスターは海外製のものだが、日本でも購入することができる。やや値の張る商品ではあるが、コレクターズアイテムとしてはもちろん、キーボード沼の深淵にたどり着いた時、このガジェットのありがたみを十二分に感じることができる最高の逸品なのだ。すでに沼に入りかけている人はもちろん、これからキーボードをカスタマイズしてみようかなという読者の方にもおすすめしたい。
もちろん、キースイッチはこれだけではない。さらにマニアックな軸もあり、調べれば調べるだけ出てきてしまう勢い。気がつけばブラウザのタブはキースイッチのページだらけなんてこともザラ。
ということで、今回はキーボードの核ともいえるキースイッチについて深掘りしてきた。次回は、筆者がおすすめするキーボード沼初心者向けのキーボードやスイッチといった製品の数々を紹介していこう。