格差社会を生み出す? NFTゲームが抱える闇とは

「ゲームで稼げる」ユートピアの実現?それとも......

 NFTゲームが注目されているのは、ゲーム性ではなく「play-to-earn(プレイして稼ぐ)」の側面があるからである。この側面は、プレイによって獲得したNFTアイテムの転売に留まらない広がりを見せている。ゲームメディア『TheGamer』は22日、前出の人気NFTゲーム「Axie Infinity」のエコシステムを特集した記事を公開した(トップ画像は同ゲームの画像)。

 ポケモンライクなモンスターを育成してバトルさせるAxie Infinityをプレイするには、はじめに暗号通貨イーサリアムを使って3体のモンスターを購入しなければならない。それゆえ、初期投資として現在では最低でも1,065ドル(約12万円)は必要とある。初期費用が工面できないプレイヤーの救済策として、「スカラーシップ」と呼ばれる制度がある。この制度は、実績のあるプレイヤーが初心者プレイヤーにモンスターを貸し出すものだ。

 スカラーシップを利用してモンスターを借りたプレイヤーは、バトルに勝利して「Smooth Love Potion(SLP)」と呼ばれるゲーム内通貨を獲得して、その通貨の一部をレンタル料の返済に充てる。SLPは暗号通貨でもあるので、現金に換金できる。

 Axie Infinityには、SLPのほかにさらに希少なAXSという通貨もある。この通貨の主な使い道は、モンスターの育成である。つまり、モンスターにさまざまな属性や能力を付与するためにAXSを消費するのだ。

 Axie Infinityにおいてもっとも高効率かつ大規模に稼ぐ方法は、バトルによるゲーム内通貨の獲得ではない。その方法とは、大量のモンスターを育成して大規模にスカラーシップを運営することだ。スカラーシップを運営していればゲーム内通貨をレンタル料として継続的に徴収できるうえに、AXSを使えば貸し出すモンスターをさらに育成できる。こうしたスカラーシップ稼業で、同ゲームからの利益だけで家を2軒建てたプレイヤーが誕生した。バトルもせずに大きな不労所得が得られるので、同ゲームは一部のプレイヤーにとってまさにユートピアである。

 以上のようなAxie Infinityのエコシステムは、スカラーシップを運営してレンタル料で莫大な利益を得る富裕層と、レンタル料の返済のためにプレイ継続を強いられる貧困層を生み出している。つまり、現実の格差社会が同ゲームのなかで再生産されているとも見れる。こうした「格差社会ゲーム」は、果たしてゲームと呼べるのだろうか。

 現実の格差社会を再生産し兼ねないNFTをめぐっては、ゲームに導入する際にプレイヤーから反発を受けるのは当然と言えるかも知れない。その一方で富裕層に仲間入りするチャンスを提供するNFTゲームは、今後も一定数のプレイヤーを呼び込むだろう。

(トップ画像出典:TheGamer「Axie Infinity, NFT Games, and the Dismal Future of Play」より画像を抜粋)

〈Source〉
https://www.engadget.com/ubisoft-nft-quartz-ghost-recon-blockchain-140720063.html?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly9uZXdzLmdvb2dsZS5jb20v&guce_referrer_sig=AQAAABcPALN8qFAQ_N7Jhl1KKSnC4tbNwfPYzGz7yogCIZbfTXjPTbF-wZ0kd6hLNmvxv2L6vW9fozZOzp9qECbh1Ub5P9BcECpEe-ziGlyCXwUz0oy9w5wdb93Efnkhp-_tvDiD_0iZ_STZ0I5GVNyhYmGDA8wFQD0CIE4EOTghppGe
https://www.pcgamer.com/ubisoft-de-lists-overwhelmingly-disliked-nft-announcement-video/
https://www.cnbc.com/2021/12/20/cash-grab-or-innovation-the-video-game-world-is-divided-over-nfts.html
https://www.thegamer.com/axie-infinity-nft-games-and-the-dismal-future-of-play/

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