学芸大青春『PUMP YOU UP!!』
「理想が形になった」 学芸大青春が新たに掴み取った“2次元×3次元”の表現
“2次元と3次元を行き来する”ダンス&ボーカルグループ、学芸大青春(ガクゲイダイジュネス)。夏に行われた初のライブツアー『Hit your City!!』では、困難もありながら4公演を成功させ、着実に成長する姿を見せつけた。12月1日には、ニューアルバム『PUMP YOU UP!!』がリリースされるほか、来年3月からは、過去最多の7都市を周る4thライブツアー『PUMP ME UP!!』がスタートするなど、彼らの勢いは加速するばかりだ。本記事では、激動の2021年を振り返るとともに、楽曲制作への思いや、来年への意気込みなどをたっぷりと語ってもらった。(堀口佐知)
“まるで別世界” 4都市を駆け抜けた、グループ初のライブツアー『Hit your City!!』
ーー2021年は、ミニアルバム「Hit me!!」のリリースに、2ndライブ『Hit you !』、3rdライブツアー『Hit your City!!』の開催など盛り沢山の1年でしたが、改めて振り返ってみていかがですか?
内田将綺(以下、将綺):2021年を振り返ると、『Hit your City!!』のツアー期間中と、それ以外の期間が、別世界のような感覚でした。ツアーをやってるときはすごく夢中になっていて、それが終わると現実に戻ってくるというか。SFのような、不思議な気分でしたね。
星野陽介(以下、陽介):2021年は、ジュネスとしての活動が増えて忙しくなったこともあり、常になにかに追われているように感じていました。レコーディングやダンス、ライブ、パフォーマンスと、あれもこれも練習やリハーサルを重ねないとって思っていて。ライブツアーをやる中で、新たな課題もたくさん見つかったんですが、自分なりにアレンジを工夫できるようになったりと、少しずつ余裕がもてるようになった期間でもあります。2ndライブに3rdライブツアーと、経験を積めたのは大きいですね。
南優輝(以下、優輝):僕もたくさんのお客さんの前で披露できたライブツアーが、やっぱり今年一番印象的です。これまでの自分の大きな原動力は、自分の理想の姿になることだったんですけど、実際にファンのみなさんの前でライブをして、自分のパフォーマンスで喜んでくれている姿を見て、応援してくれてる人たちを喜ばせたいという思いがより強くなりました。
ーー今までは画面やスクリーンの向こう側だったのが、実際に目の前で会えるとやっぱり違いますよね。
優輝:ファンのみなさんからもらえるパワーの大きさにも、改めて気付かされました。
仲川蓮(以下、蓮):今年は、やりたいことがたくさんできた1年でした。たとえばミニアルバム『Hit me !』の限定盤や、2ndアルバム『PUMP YOU UP!!』に、自分が作った曲が収録されましたし、「Hit me !」や「HOLD US DOWN」など、今までにないような楽曲にも挑戦できました。新しいことをするたびに、受け入れてもらえるかどうかの不安はありましたが、挑戦できてよかったです。
相沢勇仁(以下、勇仁):自分としては、あれだけ気をつけていたのに、コロナになってしまったことが悔やまれますね。共同生活をしてるから誰か1人でも感染すれば周りに広がってしまうし、そうなると仕事もストップして、いろんな人に迷惑がかかってしまう。それは全員わかっていたのですごく気をつけてたんですけど。楽しみにしていたツアーの前にそうなってしまって、改めてコロナと向き合う1年になりました。
ーーやはりライブツアーはみなさんにとって大きな出来事でしたよね。その中で特に印象に残っていることや、前回のライブと比較して成長した点、または新たに見つかった課題を教えていただけますか?
優輝:コロナに感染してしまったからこそ、ライブは自分たちだけじゃなく、たくさんの方の協力があって初めて完成すると改めて感じました。すぐ近くにいるスタッフの方たちだけじゃなく、いろんな方が携わってくださっていることを実感して、感謝の気持ちが増しましたね。
将綺:成長したことでいえば、僕はツアー期間中の過ごし方ですね。
優輝:それは間違いない。初ツアーだったもんね。
将綺:今までは、1つのライブに全力を出し切って、その中で出てきた課題を次のライブで改善することの繰り返しでしたが、今回は各公演の反省点を、それ以降の公演に活かすことができました。あとは体調管理も含めた、1ヶ月を通してツアーをやる上でのコンディショニングがうまくなったと思います。
ーーみなさんにとって今回が初ツアーとなりましたが、手応えはいかがですか?
陽介:僕としては、課題が残るツアーでしたね。終了後に自分たちの公演を見て、これは練習方法から変えないとだめだなと痛感しました。
ーー具体的に、どんなことが気になりましたか?
陽介:僕、自分の声が直接自分の耳に返ってくるのが嫌で、イヤモニが苦手なんですよ。それが歌にも影響してしまっていて。だからツアー後は家で練習するときにもマイクを使って、仮レコーディングのような状態にして歌うようにしたら、イヤモニに対する苦手意識が薄れてきました。そのあとに開催された「渋谷音楽祭2021」で、少し手応えを感じましたね。ここ最近だと、大きい経験だったなと思います。
優輝:僕が課題だと感じたのは、ライブ中にテンションが上がりすぎて、自分の中に客観的な視点がもてなくなってしまうことですね。ツアーの2公演目、3公演目になると、緊張がほぐれてきている分、入り込みすぎて、あとで思い返してみたら自分がいなくなっちゃってる瞬間があったなと感じていて。熱中することと俯瞰で見ること、その割合を毎公演、自分の中で1番気持ちいいところに持っていけるようにすることが、次のライブへの課題ですね。
将綺:俯瞰の目は大事だよね。理想はどれくらい?
優輝:今のところ、7対3とかかな。
蓮:僕は体力面が課題です。今回のツアーでは、毎回1曲目で疲れてました。大勢のお客さんを前にすると、これまでのライブよりもさらにテンションが上がって、その分息も上がってしまって。普段の練習から、たくさんのお客さんがいるステージをイメージして練習する必要がありますね。
ーーツアーとなると、1公演で数時間パフォーマンスして、それが連日となりますから、スポーツ選手並みの体力が必要なんだろうなと感じます。
将綺:どれだけ想定してても、経験したことのない息の上がり方しますからね。
優輝:本番にしかない緊張感というか、力みみたいなのがあるしね。
陽介:僕らは全員スポーツをやってきてるんですけど、スポーツの疲れとまた違うんですよね。まさに違う息の上がり方で、いつもの呼吸ではなくなるんです。
勇仁:自分は将綺と同じく、コンディショニングを重視してました。新たに見つかった課題を次までにどう改善しようとか、公演と公演の間をどう過ごそうとか、結構意識してましたね。それでも毎回納得いかない部分は出てくるんですが、KT Zepp Yokohamaでの最終公演では、自分の中で1番良いパフォーマンスができたので、ツアーの4公演を通して成長できたと思います。
ただツアー後に『渋谷音楽祭2021』に出演したんですが、そのときはテンションが上がりすぎちゃったんですよ。それはそれでライブっぽくていいかなとも思いつつ、いつもほど冷静じゃなかったので、どれだけ経験を積んだとしても初心は忘れちゃだめですね。
将綺:渋谷だったしね。勇仁の第二のホームだからね(笑)。
挑戦が詰まったニューアルバム『PUMP YOU UP!!』 メンバーの素が垣間見える楽曲も
ーー次にニューアルバム『PUMP YOU UP!!』について伺います。どんなアルバムに仕上がりましたか?
優輝:タイトルは「みんなを元気にしていくぞ!」という意味で、こういうご時世だからこそ、“俺たちの音楽やパフォーマンスでみんなを元気にしたい”って思いが込められています。音楽的な面でも、新たな挑戦が詰まった1枚ですね。たとえば今回、蓮と陽介が作曲や作詞に参加していたりとか。
あとこれまでの僕たちの楽曲は基本的にダンスミュージックなんですが、今回新たに録り下ろしたデュオ曲などは、そうではないテイストのものもあって、今後こういうジャンルにも挑戦していくことも示せたと思います。
ーーたしかに、後半はしっとりした楽曲も多いですね。まずはリード曲の「Sugar」についてお話しいただけますか?
優輝:「Sugar」は、初めて聞いた瞬間から大好きな曲です。今までのジュネスにはなかったようなセクシーさがあって、どんな振り付けがつくのかもすごく楽しみでした。
陽介:星野は「Sugar」をいただいて、「ありがてー!!!」って感じでしたね。自分は普段からおもしろくてうるさいやつというイメージなので、新たな一面を表現できるぞと思って。
将綺:おもしろいって自分で言ったぞ(笑)。
陽介:ちがうちがう(笑)。キャラ的にかわいい系だと思われがちだから、ギャップを見せていきたいと思ったんです。「Sugar」みたいなかっこよくて色気のある曲って、新しい僕をみんなに見てもらえる最高のチャンスだったんですよ。いつも高音パートを任せてもらってますが、今回低音にも挑戦していて、プロデューサーの杉沢さんに「低いところも色気がちゃんと出せてるね」って言ってもらえました。僕としては、挑戦となった曲ですね。
優輝:僕は今回、Aメロで勇仁とラップを担当することになり、毎度のようにどういう方向性でいくか迷ってたんですが、2人でラップをするからこそ、違いを出すことを意識しました。勇仁は、感情を表に出すような熱いラップをしていたので、僕は大人っぽくてクールなかっこよさを表現しています。
陽介:イメージした人とかいる?
優輝:シンガーソングライターのSIRUP(シラップ)さんかな? 楽曲的には「Sugar」とちょっと違うけど、余裕があって力も抜けてて、かっこいい大人のイメージがあるから。そこに自分なりの色気を足しました。
ーーお2人とも新しいことに挑戦された1曲なんですね。
優輝:そうですね。あとレコーディングのとき、自分のパートじゃないところでもハモリやフェイクを口ずさんでいたら、プロデューサーが「それいいじゃん!」って言ってくれて、実際に曲に取り入れてもらえたんです。自分もクリエイティブなことができたような気がしてすごくうれしかったですし、成長できたことの1つだと思っています。
ーーその場で楽曲が出来上がっていく感じがしますね。「Sugar」は遊び心のある曲だと感じますが、そこに優輝さんが一役買っているのかもしれません。
勇仁:ラップパートは、力強くリードしていくようなイメージで歌いました。「HOLD US DOWN」のラップとはまた全然違う声になってると思います。曲をいただいて、練習し始めたばかりのときは難しかったんですけど、「力強さ」という方向性が決まってからは楽しく歌えてたので、あとは自分がラップをするときにどれだけノれるかを大事にしてレコーディングしました。
曲の冒頭に英語でのセリフがあるんですが、そっちの方が難しかったです。“歌う”よりも“話す”に近いニュアンスですし、英語なので発音も気をつけないといけない。何回も練習して、試行錯誤しながら録りました。
ーーセリフだと音程としての正解がない分、難しそうです。
蓮:僕は今回、各パートで4人全員と一緒に歌ったりハモったりしてるので、今までで1番メンバーの歌い方を研究しました。「Oh baby you're my sugar」の部分は陽介と、サビは将綺と歌っていて、勇仁と優輝のラップパートに合いの手を入れたりもしています。結構難しかったんですけど、レコーディングのときプロデューサーに「今回歌割りが複雑でごめんね」って言われて、いいように利用されたなと思いました(笑)。
一同:(笑)
優輝:器用だからね。
ーー器用さが買われたということですね。今回研究した分は、今後にも活かされそうです。
将綺:僕はミュージックビデオに注目してほしいですね。
ーー今まで二次元と三次元を行き来していたのが、今回は“共演”している感じがします。
将綺:理想が形になりました。今までは僕たちを理解してもらうために、二次元の姿と三次元の姿をそれぞれ見せて、「これは同一人物です」って説明してたんですが、「Sugar」のMVを見てもらえたら、僕らがどういうグループかすぐにわかるんじゃないかな。そして歴代のMV撮影史上、一番たくさん踊りました。
勇仁:間違いない。
将綺:CGシーンでは、壁だけでなく、床にもグリーンバックが敷き詰められてるんですよ。カーペットの上で踊ってるような感覚で、難しかったですね。
勇仁:ずっと踊ってると、どっち向いてるかわからなくなってくるよね。