13階建ての巨大球体を搭載した、原子力エネルギーで動くヨット

 コロナ禍が長引くなかで、富裕層の間ではスーパーヨットの需要が高まるばかりだ。しかしインディアナ大学の学者による計算によると、大勢の乗組員を抱え、ヘリポートやプールを備えたスーパーヨットは、年間7000トン以上ものCO2を排出するという。それが世界中におよそ300存在するとされており、総排出量は200万トンを超える。環境への影響は甚大だ。

Earth 300より

 そんな中、豪華さはそのままに、原子力をエネルギーとした地球環境に優しい船「Earth 300」の構想がある。

 この計画を主導する起業家のアーロン・オリベラ氏は、「この船は、世界中の人々が旅できるようにするフローティングコンピュータになる。乗船する裕福な人々は、この経験を自分たちの間だけでなく、世界に共有する必要がある」と述べている。また「私たちがこの船を計画する理由は、気候変動が地球規模の問題となっており、それに対応できる乗り物が必要だからだ」としており、「海洋は炭素を吸収するため、地球の心臓部である」と付け加えた。

 全長300mの「Earth 300」のアイデアは、モルディブでダイビングをした際に、サンゴが死んでいるのを見て思いついたという。“贅沢さ”と“環境保護”という相反する2つの要素をうまく組み合わせる方法を生み出したいとしている。

 製造にかかるコストは7億ドル(約779億円)の見込みで、2025年の初出航を予定している。定員425人のうち、165人をスタッフが、160人を科学者が占めるとのこと。また20人の学生と、経済学者、エンジニア、芸術家、政治家などの20人の専門家が乗船し、“各分野の専門家の集合体”を形成する予定だという。船のシンボルといえる13階建ての巨大な球体型施設には、20の科学研究所を収容しているようだ。そのほか、船には20のVIPルームがあり、研究資金として1人100万ドル(約1億1000万円)を支払えば、一般の観光客もこの旅に同行することができるとしている。

 ただ2025年までに原子炉の認可を得ることは難しく、当面の間は燃料で運転する可能性が高いようだ。ラグジュアリーでエコフレンドリーな未来型の船は、予定通りに出航できるのだろうか。

Earth 300より
Earth 300より

(画像=Earth 300より)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://earth300.com/
https://edition.cnn.com/travel/article/earth-300-megayacht/index.html

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