『takt op.(タクトオーパス)』特集

LAM×まらしぃ対談 2人がイラストとピアノで提示した「クラシックへの“アンサー”」

表情差分のイラストが、楽曲のアレンジに厚みをもたらした

――まらしぃさんからすれば、参照元が2つある状態でしたよね。LAMさんが描いたビジュアルと、原典のクラシック曲と。そこのバランス感覚は難しくありませんでしたか?

まらしぃ:多分、何もオーダーをいただかずに「運命」を弾いてくださいと言われたら、また違ったアプローチになったと思うんですよ。アレンジのテイストを変えようと思えば、いくらでも変えられてしまうので。むしろそのときにヒントになったのがLAMさんのキャラデザでした。個人的には、表情差分を見せていただけたのが良かったですね。

LAM:あ、そう! 表情差分見られたの恥ずかしかったんですよね……!(笑) でも作品のことを考えたら、見ていただいた方が絶対に良いんですけど。

まらしぃ:ビジュアルだけだったら、どの子ももう少しかっこいいテイストになっていたと思うんです。表情差分を見たことで、みんなにいろんな一面があることを知った状態でアレンジできました。

LAM:“運命”が、ああ見えて実は子どもっぽく笑ったり泣いたりするとかですよね。そういうのがわかってくれているまらしぃさんだったから、本当に生きているみたいに、生き生きとした楽曲になったんですね。

 イラストの世界でも、たとえば二次創作を描くとき、「原作のこのキャラクターがどんなキャラで、どういう魅力を持っていて、自分はその子のどんなところが好きか」といった部分を整理して描くことで、絵にも深みが出るんです。

 まらしぃさんは多分、もっともっと難しい次元の戦いをされていると思いますけど。だって僕で言えばゴッホやレンブラントとかピカソとか、そういう偉大な画家の絵を現代風にアレンジしてくださいと言われているようなものですから、絶対無理です(笑)。

まらしぃ:(笑)。クラシックは聴いている人も莫大であれば、それぞれが持っている解釈の数も膨大にある世界だと思うので、自分なりにかみ砕いて、「『takt op.』の“運命”に寄り添った曲はこれです」と、胸を張って言える曲ができたとは思っています。そこがあるかないかは、結構大きいなと思いますね。

――LAMさんには以前の対談でも制作過程について話していただきましたが、改めてどのようにデザインを決めていったのか、伺えますか?

LAM:曲に対して元から持っているイメージはあったものの、どういう成り立ちで生まれた作品なのかとか、作者がどんな意図を込めたのかとか、そういうバックボーン自体は全然詳しくない状態でした。まずはクラシック楽曲の情報を吸収する所からスタートしましたね。

 DeNAさんからは「LAMさんなりの“運命”を描いてください」というオファーをいただいたものの、曲自体があまりにも有名なので、すべての人のイメージに叶う“運命”が自分に描けるのか、最初はすごく悩みました。しかも今回は物語として、今後も生きていくキャラクターたちを描くわけですから。

 けれど人によって感じ方は違うし、全員が納得するキャラクター化はそもそも不可能だなと思ったんです。であれば僕にできることは、LAMなりのアンサーを示すこと。僕は普段から音楽にインスピレーションを受けてイラストを描くことが多いので、それと同じように、感じたことを素直に吐き出す作業に注力していました。

まらしぃ:キャラクターが浮かんでくるまでに、どのくらいの時間がかかりましたか?

LAM:マッハでしたよ。最初に描いたのは“運命”だったんですけど、運命といえば縛られる者のイメージだな、となると茨とか薔薇かな、と考えていって。銀髪のウェーブは……ベートーヴェンが浮かんだからでしょうね(笑)。そのまま髪の先をクルクルにして、薔薇みたいにしちゃえとか。本当に“運命”は困らなくて、好きに描けました。

未発表のムジカートたちも多数制作中

――すでに数人のムジカートが発表されているわけですが、その他のムジカートについても準備は進んでいるのでしょうか?

LAM:はい、まだ発表されていないムジカートもいます。ムジカート以外のキャラクターも制作していて、人数も結構いますね。別衣装や髪型パターンなど、個々のキャラクターを拡張できる要素も用意しています。

まらしぃ:拡張熱いですね!

LAM:熱いですよね。まらしぃさんは好きなキャラクターとかいますか?

まらしぃ:最初は“きらきら星”だったんですけど、最近見せてもらった●●(未発表のムジカート)も良くて……でも今は“ワルキューレ”がすごく好きなんですよ。人間味があって。

――3月の公式生放送では、「まらしぃさん、“きらきら星”好きそう」という反応もありましたね。

まらしぃ:ばれてる(笑)。打ち合わせで最初に見せていただいたときに思わず、「あ、この子好きです!」と言っちゃいました。

LAM:苦労して作ったかいがあります。しかし、きらきら星→●●(未発表のムジカート)→ワルキューレって、路線の変わり方がすごい……(笑)。

まらしぃ:LAMさんのお気に入りの子はいますか?

LAM:まだ名前は出せないのですが、メインビジュアルで“運命”の横にいた、仮面を付けている子ですね。あの子は完全に僕の好みで描きました。もちろんどの子も、忖度なしで同じくらい好きなんですけどね。

まらしぃ:本当に、キャラクターからでも良いですし、『takt op.』がクラシック音楽に触れるきっかけになったらうれしいですよね。

LAM:そうですね。最近は馬の擬人化作品が流行ったことで、競走馬に注目が集まって、業界が盛り上がったり引退馬への支援が活発になったりしています。同じようにクラシックの世界にも『takt op.』が良い影響を与えられたらうれしいですし、音楽を志す子どもたちや音楽が好きな人たちにとって、大切な作品になっていけたらいいなと思いますね。

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