莉子・神尾楓珠が出演する『ブラックシンデレラ』が令和版“花男”である理由

 更に特筆すべきは『ブラックシンデレラ』に令和ならではの新たな価値観が取り入れられているところ。本作はラブコメとしてだけではなくメッセージ性の強さでティーンを導く力を持っている。ここには、「ミスコン」という容姿に関わるコンテストに憧れるヒロインと、それに出場する容姿が優れたキャラクター、そしてそのコンテストを良く思わないキャラクターがそれぞれの意見を持って登場する。SNSで写真をシェアすることが増えた今日では、容姿に関する悩みは最早ティーンにとって無視はできない問題だ。外見ばかりを重視して評価するルッキズムの思想に苦言を呈する人々が増える一方で、若い女性をターゲットにした広告にはムダ毛の処理やまぶたを二重にすること、痩せられることに重きをおいたものが未だ多いことも事実。このような環境下で、ティーンが容姿に関しての自分なりの価値観を構築するのは難しい事かもしれない。

 そんな中で、愛波がミスコンやその後のとある事件をきっかけに向き合っていく環境は、こうしたルッキズムの問題を考えるのに非常に適したストーリーだと言えよう。さらに4話では“イケメン”であることにアイデンティティを見出しているように思われていた圭吾が整形をしていた事実も発覚し、容姿に関わる問題との向き合い方がさらに真摯に描かれる。男女問わず、見た目で判断されることのまだまだ多いこの時代に、改めて「あなたはどの価値観を選ぶか」ということを問い直すきっかけになってくれるに違いない。メインのキャラクターに対しては“イケメン”をキーワードとして扱っていながら、こうした骨太なストーリーで魅せることで思わず大人をも唸らせるシーンがそこに描かれる。加えて多感な時期にこの作品に出会うことで、自分を見つめ直し奮い立たせることで救われるティーンも多いだろう。

こうした現代の“リアル”が描かれた『ブラックシンデレラ』は、回を追うごとに新たな事実が明らかになり、そこに込められた真摯なメッセージも、より奥深いものとなっている。圭吾と空の真摯なアプローチにときめきつつも、“平々凡々”な女子高生のはずだった愛波が自分の容姿と向き合いながら成長する姿を最後まで見届けたい。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

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