なぜ人はSNS中毒になってしまうのか……テック業界関係者が語る“危険性”から考える

「たくあん脳」から子どもを守るために

 昨今は子どもにスマートフォンを持たせる親が増えており、低年齢化が進んでいます。筆者の息子は、『ポケモンGO』をプレイしたいからという理由で7歳の時にiPhoneを欲しがりました。理由が理由なので却下しましたが、小学校入学と同時に子どもの安全のためにiPhoneを持たせている親もいるそうです。

 なぜ見守りサービスではなく、スマホなのか。それは、親が使っていたスマホを子どもに渡す方が、新たに見守りサービスに加入するよりも初期費用がかからない、ということも大きいでしょう。GPSトラッキングアプリを入れておけば親が逐一居場所をトラッキングできますし、何かあれば電話でSOSを発信することも可能です。

 それだけでなく、語学やプログラミングのアプリを入れておけば勉強にもなりますし、公共の乗り物を使った移動中に静かにさせることだってできます。

 しかし、年齢の低いうちからスマホに触れさせることは、はたして子どもにとっていいことなのでしょうか? 答えはおそらくNOです。

 それは、シリコンバレーで働く、テック業界の親たちが自身の子どもたちにスマホを持たせず、SNSの使い方を厳しく制限していることからもわかります。

 そもそも、SNSは子どもが使うことを前提にデザインされていません。幼い頃からSNSに触れ、自尊心を高める前に、自分の存在価値を他人の「いいね」に左右されるようになってしまっては危険です。事実、2010年以降、10代の子どもたちが精神を病んでしまったり自殺率が増加しているそうです。

 子どもたちを依存症から守り、精神的な健康を維持させるためにも、スマートフォンの使用はできる限り遅らせ、SNSが無料である仕組みを親子ともに理解する必要があるでしょう。

 では、SNSは悪で、私たちの生活から完全に排除するべきなのでしょうか?

SNSは改善できる

 同作の中でも、危険性が高いと警告を鳴らされているSNSですが、元々は人々の生活を明るく豊かなものにするために開発されました。「いいね」ボタンにしても、中毒性を高めようと生み出されたわけではなく、愛を広めようとしたことが発端です。

 筆者の個人的な経験でいうと、古い友人と再び交流を持つようになったり、遠く離れて暮らす友人らと繋がり続けることができたり、仕事のご縁をもらったことがありました。

 問題はSNSのビジネスモデルであり、再び良いサービスに変わることができると『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』に登場する人たちは口を揃えて言います。

 そこで求められるのが、SNSを取り締まる法律です。

 しかしながら、残念なことに今はその法律がありません。法を求める声が大きくなってきているので、いずれ作られるでしょう。しかし、すぐにではありません。

 そこで、せめてもの抵抗として、依存症を高める「通知を切ること」が推奨されています。YouTubeの「おすすめ動画」機能も同様で、この機能を作ったGuillaume Chaslot氏本人が、その中毒性の高さに恐怖し、オフにすることを勧めています。

 加えて、SNSやアルゴリズムの仕組みを知ることも重要でしょう。広告が表示されても、その広告がなぜ表示されるのかを理解していれば、逆手にとって自分を見つめ直すこともできるはず。

 Facebookに特化していえば、アルゴリズムによって自分と似通った意見の人ばかりが集まる傾向にあるので、意識して反対意見に目を向けて見聞を広げられるようになるかもしれません。

 筆者は、SNSの通知をオフにしていたので、SNSに振り回されることはありませんでしたが、YouTubeは際限なく見ていたので、「おすすめ機能」の通知をオフにし、スマホとタブレットからアプリを削除しました。布団に入ったら読書の時間と決め、ネットは基本的にパソコンでのみと自分にルールを課しました。


 仕事柄ネットを使う時間が多く、スマホ中毒を自覚していたので、改善できるかはわかりません。

 しかし、『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』を見て、SNSの裏側を知ったからには、『マトリックス』のネオのようにコンピューターが支配する世界から脱出し、自由を手にしたいと思っています。

■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter

Netflixドキュメンタリー『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』独占配信中

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