国内タフネススマホは5GよりSIMフリー化が必要? 京セラ「TORQUE 5G」発売から考える

タフネススマホの現状と課題


 京セラは独自分野に特化し、タフネススマホの代名詞「TORQUEシリーズ」を生み出した。国内企業では、過去にパナソニックなどもタフネススマホを作っていたが、現在は京セラの独占状態といえるだろう。

 しかし、TORQUEシリーズには、ひとつだけ課題がある。それは"au専売"という点だ。

 初期の「TORQUE SKT 01」を除いて、すべてのTORQUEシリーズがauを通して発売された。現在、国内のタフネススマホは、TORQUEシリーズしか選べない上、キャリアも指定されている状況だ。これでは、新たなタフネススマホユーザーの獲得が難しいといえるだろう。

 TORQUEの最新作が5Gに対応したことで、確かに話題性はあるかもしれない。しかし、ユーザーがタフネススマホに望むのは、本当に5G対応なのだろうか。本作の利用シーンにおいて、5G対応であるメリットはそこまでないようにも見える。

 それでも5G対応にすれば、今後対応地域が増えていくことでスマートフォンとして重要な通信面をカバーし、他社の5G製品と比べた際に、見劣りしてしまう恐れを回避できるのだ。また、この件については、販売側であるauとの事情も関わってきそうだ。auは、5Gスマホ(参考:https://www.au.com/5g/)に力を入れており、昨年9月には、今後発売するスマホはすべて5Gになると宣言している。

 京セラは、5G対応の前に、少なくとも本作と同時に、TORQUEのSIMフリー化を実現するべきだった。

 なぜそこまでしてTORQUEのSIMフリー化を急ぐべきなのか。その理由として、新たなタフネススマホユーザー獲得の他に、中国のタフネススマホ市場の存在が大きく関わってくる。

SIMフリー化を優先すべき理由

 海外では、「ラグドフォン(Rugged Phone)」という名称でタフネススマホが愛されている。主に、京セラが海外向けに展開する「DURA FORCEシリーズ」や、アメリカのCaterpillar社が開発した「CATシリーズ」などがある。

 そして近年、特に勢いがあるのは、中国のタフネススマホ市場だ。

 「Blackview」「DOOGEE」「Ulefone」「UMIDIGI」「OUKITEL」「Unihertz」などのメーカーが、続々とタフネススマホを発売している。これまで技適や対応バンドの関係上、日本で使えないものが多かったが、徐々に使えるものが増えてきた。

 こうしたタフネススマホは、京セラにとって脅威になり得る存在だ。優れた耐久性はもちろん、圧倒的な端末価格の安さ、デザインの豊富さ、スペックの高さはユーザーにとって魅力的に映るだろう。

 現段階では、こうしたタフネススマホの販路が少ないため、一般的なユーザーにとってTORQUEが第一選択肢となる。しかし、中国のメーカーが本気で日本市場をターゲットにすれば、一気に情勢は変わることだろう。

 だからこそ、国内ユーザーに向けてTORQUEのSIMフリー版を展開し、柔軟な選択肢を用意しなければならない。これまで以上に中国製スマホの勢いが増す昨今、タフネススマホだけが例外的にシェアを奪われない、というわけではないのだ。

タフネススマホをより多くのユーザーへ

 京セラはニッチな領域で戦い続けてきた結果、国内で唯一タフネススマホを展開する企業になった。しかし、中国のタフネススマホ市場を考えると、今後安定した展開は難しくなるかもしれない。

 絶滅危惧種に近い国産タフネススマホを広めるためには、「新たな動き=SIMフリー化」が必要なことは明白だ。

 タフネススマホユーザーの流出を防ぐため、そして日本で培ってきた技術を守るため、一刻も早くTORQUEシリーズのSIMフリー化を実現してほしい。

■菊池リョータ
個性派スマホを愛するライター。ガジェット系を中心に記事を執筆。デザイン性の高いスマホに目がない。

関連記事