「ストリーミングは儲からない」は事実か誤解か ロイヤリティについて説明するSpotify「Loud & Clear」導入の意味を考察
また、Spotifyでは、これまでに音楽クリエイター向けのマーケットプレイス「SoundBetter」機能や、マーチャンダイズの販売、ライブ情報の提供など、ストリーミング以外でもアーティストの収益化を促進するツールを導入してきた。そういったことを考えると、先述のDaniel Ekの言葉は、単純にストリーミングのみで収益を稼ぎだすというより、刻々と多様化していくアーティストの収益化構造に対応可能なプラットフォームを作り上げるという意味として捉えることができる。そういったアーティスト支援施策をさらに認知させ、支持を得る意味でも、ストリーミングによるロイヤリティ支払いモデルの誤解から生まれる否定的な意見は、声を大きくしてクリアにしておきたかったのではないだろうか。
「Loud & Clear」のサイトには、Spotifyからのサイト設立の経緯について、「ストリーミングによるアーティストの収入に関する疑問や懸念は以前からあったものの、自分たちはその問題に対して、あまりにも大人しすぎた」とある。サイトの目的は建設的な会話のための貴重な基盤を提供することであり、「より多くの情報を共有することで、質問に答え、今日のストリーミング業界に関する有用なリソースを共有したい」と述べられている。
たしかに現時点では多くのアーティストが、Spotifyで大金はおろか、生活に必要な額を同社から支払われるロイヤリティから賄うことは難しい。しかし、「Loud & Clear」でロイヤリティの支払いモデルが改めてクリアになったことにより、アーティストも原盤権に関わる契約状況の見直しなど、自分にとって有利な状況を作り出すきっかけにもなったはず。今後は、このような対話的なスタンスが、今後のSpotifyとアーティストのより良い関係を築く足がかりになるはすだ。
(画像=Pixyより)
■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69
〈Source〉
https://loudandclear.byspotify.com/?question=loud-and-clear-launch
https://www.theverge.com/2021/3/18/22336087/spotify-loud-clear-website-launch-pay-artists-streaming-royalities
https://www.musicbusinessworldwide.com/the-odds-of-an-artist-becoming-a-top-tier-earner-on-spotify-today-less-than-1/
https://www.digitalmusicnews.com/2018/12/25/streaming-music-services-pay-2019/
https://career-picks.com/average-salary/america-heikinnenshu/