新時代のポッドキャストはAIとの融合に“未来”がある?

 YouTuberやTikTokで独自のコンテンツを配信するオンラインアイコンたちが増えていく中、ビジュアルのない音声コンテンツはこれらに比べまだ未開拓だ。しかし同時にSpotifyのAnchorとGimlet買収や独占配信、アップルのオリジナルコンテンツ開発からもみられるように、ポッドキャスト市場の将来に期待がかかっていることも見て取れる。特に日本などでは、最近になってポッドキャストの日本語のコンテンツが充実してきた印象ある。これらの多くのコンテンツクリエイターたちは既にオンラインでの存在を確立した人たちが目立つ。そんな中、起業家であり億万長者でもあるマーク・キューバンはカスタマー中心のAIスタートアップNodeの創設者Falon Fatemiと共に、新しいポッドキャストビジネス 「Fireside」というプロジェクトに取り組んでいると話した。

ポッドキャストの始まりは偶然から?

 2004年、ポッドキャストの存在は元MTVのAdam Curryとソフトウェア開発者のDave WinerがラジオをiPodにダウンロードできるようにしようというアイディアから始まった。同時期、このアイディアについて取材していたガーディアン誌のジャーナリストのBen Hammersleyが、記事の中で編集者にあと一つ文章が必要だと言われて追加したものに含まれた造語が「ポッドキャスト」だった。iPodのpodとブロードキャスティング(broadcasting)のcastを組み合わせてポッドキャストが生まれたのだ。

 元々、ポッドキャストは早期のブログ時代と似ており、ネット上で個人が自分の好きなことを自由に発表するという媒体で、ほとんど編集せずにそのままの会話を録音して配信するというアマチュアな世界だった。しかし徐々に音声媒体として注目を浴びるようになり、ジャーナリストからラジオホスト、テレビホストやセレブなどが参入。アップルのiTunesの存在がこの媒体の普及を後押しした。この時点で収益化の方法は確立されておらず、媒体としては購読者たちを増やしていたが、同時に大きなブームがあったわけではなかった。

ポッドキャストの最盛期

 しかし2014年にリリースされた「Serial」というポッドキャストシリーズ、ポッドキャストの歴史を大きく変えた。人気ポッドキャスト番組となっていたThis American Lifeというポッドキャストからリリースされた今シリーズは調査ジャーナリズムポッドキャストと呼ばれるジャンルで、1999年に起こった殺人事件を再訪し冤罪で投獄されたかもしれない人物との電話会話を公開した。この年を境に次の5年間でポッドキャスト利用者は3倍ほど増加し、この時期にオバマ元大統領のポッドキャスト出演や大人気のThe Joe Rogan Podcastなどが始まった。2017年にはアップルがポッドキャストのユーザーを分析できる機能を発表。この解析から90%のリスナーがポッドキャストを最後まで聞き終えており、他の媒体に比べ集中して聴いている傾向にあるという結果が出た。

ポッドキャストのマネタイズ化

 これらの歴史を踏まえると、ポッドキャストでの広告というのは、受動的な映像メディアなどとは異なり、より集中度の高い状態にあるリスナーに届けることができる。つまり広告の影響が他よりも有効であるのだ。番組によっては購読サービスやドネーションを募るところもあるが、多くはそれぞれの番組にスポンサーがついており、トークの合間に広告が組み込まれる。多くのポッドキャスターたちは自身の価値観や、チャンネルのオーディエンスに合ったプロダクトやサービスを紹介するが、同時にそうなると選択肢が限られてくる可能性もある。Spotifyは独占配信コンテンツを確保することによって自分たちのプラットフォームでしか聞けないというポイントで、ユーザ数を確保しようとしている。これらのポッドキャスト内には広告が含まれており、有料無料ユーザー問わず聴くことができる仕組みになっている。

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