急増した芸能人YouTuber、成功の法則は? 2020年~2021年のYouTubeを展望するライター座談会(前編)

「さすが芸能人!」という実力や才能、一芸を見せられるか

――年末にオリエンタルラジオが吉本興業を退く、というサプライズがありました。中田さんのチャンネルが大成功していることは周知されていますが、藤森さんのチャンネルも実は盛り上がっているということは、一般にはあまり知られていなかったようです。

藤谷:数字的には中田さんが300万人、藤森さんが50万人なので。とはいえ今年の春に始めて、この数字はすごいことです。ゲストを招いてのドライブ動画は、形としては以前からあったものかもしれませんが、藤森さんが流行させた感がありますよね。コロナ禍においてあまり密にならず、大規模な予算も必要なく、仕事の合間の移動時間にも撮影できる上、ファンも普段見ることができない顔が見れてうれしいという、とても優れた企画ですね。

こじへい:藤森さんのドライブ動画で最初にヒットしたのは、マネージャーの“とびちゃん”との動画ですが、当初はカメラの位置も微妙に定まっていませんでした。それが、運転席と助手席を均等に画角に収める形で固定されて、他の芸人さんやタレントさんたちも同様の動画を出すようになっていきましたね。『ウンナンの気分は上々。』など、テレビでは昔からあった撮り方ですが、YouTubeでは新鮮でした。

【直撃】吉本のマネージャーに本音を聞いてみました

藤谷:聞き上手でジェントルマン、という藤森さんの個性が活きる企画で、特に女性芸人の扱いがとても上手だなと思います。ある種、フィギュアスケートのペア演技のようなもので、才能のある人が時間をかけて培った技術を見せてもらっている、という気分にもなりますね。

こじへい:中田さんが「友達が多いからあいつ(藤森)は伸びるよ」と言っていましたが、まさにその通りだなと。

――カジサックさんのように下手に出るコミュニケーションとはまた違う、スマートな“ホスト力”があり、あらためてタレントとしての能力の高さに気づかされます。ドライブ動画は中田さんの教育動画と同じくらい、本人のパーソナリティにあった企画だと思います。

こじへい:相手を気遣いながら、ゲストによっては芸能界の先輩としての立場から言葉をかけることもありますし、とても自然体ですよね。

佐藤:そういう意味では、「さすが芸能人!」という実力や才能、一芸を発揮している人は、YouTubeでも注目を集めますね。「流行っているからなんとなくやってみよう」で終わってしまっている人は、知名度は抜群でもあまり伸びないというか。芸能界で培った力を発揮する意欲と、それにあった企画がなければ、勝ち抜くのは難しいということがわかります。

藤谷:手越さんもそうで、緊急記者会見という否応なしに注目される動画からスタートしたので初速は素晴らしかったのですが、動画を一覧で見てみると、物申す系やUberEatsで注文した料理を食べるだとか、いわゆるYouTuber的な企画より、「歌ってみた」系の動画が大きな再生数を獲得しています。ヒカルさんも指摘していましたが、これまで磨いてきた歌やダンスというものが、まさにファンの求めるもので、さらにファン以外の人も巻き込む力を持つんだなと。

猫 / DISH// 手越祐也が歌ってみた!

佐藤:もともとジャニーズだったので、歌やダンス以外にもいろいろなことをやる、というのは大前提だったと思うのですが、ファンには「もっと本人のやりたいことをやってほしい」というフラストレーションがありました。その意味で、手越さんは「歌いたいのに、歌う場所がない」という切実な状況にあり、そこをヒカルさんに後押しされたのが大きかったですね。

――YouTubeに第二の人生をかける人もいれば、仲里依紗さんや本郷奏多さんなど、もともとYouTubeが好きで、視聴者にもワクワク感が伝わってくる微笑ましいチャンネルもあります。

佐藤:仲里依紗さんの動画を見ると、毎回「本人が楽しんでいるのが一番だな」と、YouTuberの原点を感じさせられます。再生回数がどうだ、マネタイズがどうだ、毎日投稿がどうだ、コンプラがどうだ……というような細かい議論は不要で、本人が動画を出したいからただ出していて、それを「いいじゃん!」と思う人たちが集まってシンプルに楽しんでいるのが、YouTubeだなって思うんです。

ふっつーのメイク動画😂🤣✨💛❤️✌️

今後のYouTuberデビューが期待される大物は?

――さて、石橋貴明さんの参入もあり、もう誰がYouTubeデビューしてもおかしくない、という状況になっています。一般には、ダウンタウン・松本人志さんのチャンネル開設を待望する声が大きいように思いますが、みなさんはどんな人がチャンネルを開設したら大きなサプライズになると思いますか? 個人的には、例えば堀北真希さんのような、惜しまれつつ芸能界を退いたスターが登場すればすごいな、と思ったり。

佐藤:確かに、アイドルグループを卒業して、一般企業で働いている元タレントさんがYouTubeチャンネルを開設するケースもありますし、自分の手の届く範囲でまた表現活動をしよう、という元大物芸能人が出てきてもおかしくないですね。例えば、安室奈美恵さんがVlog的な活動を始めたとしたら、日本だけでなく、アジアを中心に世界でも注目されるかもしれません。ジャニーズからの独立組では山下智久さん、アスリートであれば羽生結弦さんも間違いないところです。

藤谷:山口百恵さんと三浦友和さんがカップルチャンネルを始める、みたいな(笑)。もうそれくらいのことがないと、衝撃といえるほどのインパクトはなくなってしまっているかもしれませんね。

こじへい:木村拓哉&工藤静香夫妻の娘さん、CocomiさんとKoki,さんがチャンネルを開設したら面白いなと思います。外出自粛期間中に展開していたインスタライブも視聴者数が多かったですし、YouTube世代のスターで、もし「チャンネル登録100万人突破したら親子配信します」なんてことがあったら、江頭2:50さんの記録を抜くかもしれませんね。使えるリソースがあまりに多い、というか。あとはやっぱり、実現可能性もそれなりにありそうな島田紳助さんですかね。以前から大ファンで共演したいと公言しているヒカルさんに対して、宮迫さんが「コロナが落ち着いたら必ず紹介する」と言っているので、コラボ動画の誕生に期待したいところです。

関連記事