Facebookのデータから、メンタルヘルス予測を可能にするアルゴリズム

アルゴリズム診断は現場で利用できるのか?

 しかし一方で今回の研究内容はまだ初期段階にあり、まだSNSのデータのみで診断を下すことは到底、不可能だとペンシルベニア大学の助教授Sarath Guntukuは話す。確かにSNSのデータのみだけに頼った診断ではアルゴリズム内にあるバイアスやSNSの外に存在する背景を汲み取っていくことはできない。

 ただ、同時にこれらのアルゴリズムは潜在患者を発見し、医療機関と繋ぎ診断の大きな手助けにはなり得る。また、客観性を発揮できるという点からもSNSデータは診断に大きく貢献できる。例えばカウンセリングセッションなどで患者たちに自発的に問いに対する答えを発してもらわないといけなかったり記憶を呼び起こしてもらわないといけなく、これは特にカウンセラーによく見られようというバイアスがはたらいてしまいセッション内容の信憑性を欠いてしまう可能性がある。

 これに反し、アルゴリズムは患者たちの無意識の行動を分析しながら自然で直接的な情報を得ることができることからより客観的で中立的な立場から患者を診断することができる。実際、Googleなどでは自殺関係の検索がかけられるとアメリカでは全国自殺予防相談室の電話番号が検索結果の一番に現れる設定となっている。プライバシーやデータ管理の問題などこれらの機能を応用していくのには解決すべき問題がまだまだあるが少しでも精神疾患の悪化を予防できる可能性がこのような身近なデータに存在することは未来の精神医療の希望になり得るかもしれない。

(画像=Pixabayより)

■mugiho
ニュージーランドの大学でマオリ文化の発展・都市計画・教育について学びながら映画、テック、文化芸術について執筆するフリーライターと翻訳家。人間観察をしながらたまにそれらについて書いたり撮ったりしている。

〈Source〉
https://www.wired.com/story/an-ai-used-facebook-data-to-predict-mental-illness/
https://www.nature.com/articles/s41537-020-00125-0
https://www.med.umich.edu/1info/FHP/practiceguides/depress/phq-9.pdf
https://www.pnas.org/content/115/44/11203
http://course.duruofei.com/wp-content/uploads/2015/05/Choudhury_Predicting-Depression-via-Social-Media_ICWSM13.pdf

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