AIは人間の仕事を“奪う”だけでなく”増やす”側面もーー米研究結果が話題に

 スタンフォード大学の研究グループがAI活用と雇用に関する新たな研究を発表した。

 2013年、オックスフィード大学のマイケル・A・オズボーン博士が共著論文「雇用の論文」を発表して以降、いずれAIが人間の仕事を奪うという現実を不安視する風潮が高まっている。ところが、スタンフォード大学のAI研究所(HAI)によると、AIは人間にとっての脅威となるどころか、AI関連の仕事が増え、それが経済成長を促す起爆剤となり、ひいては社会福祉の改善という有益な結果をもたらし得ることになるという。

 研究グループはまず独自のAI指標に基づき、米国の各都市におけるAI関連の求人数を調査。その結果、2014年から2018年までの間にAI関連の求人数が急増した都市では飛躍的な経済成長を遂げていることが明らかに。さらに、ウェルビーイングの5つの尺度(身体的、社会的、キャリア、コミュニティ、金銭的)をもとに米国人1000名の日々の生活を調査したところ、AI関連の求人数と、(特に身体的、社会的および金銭的側面における)ウェルビーイングの向上との間に正の相関が認められた。

 スタンフォード大学のHAIでは、人間福祉の向上を主眼に置きつつ、AI関連の政策決定に纏わる研究を進めている。同研究所のサウラブ・ミシュラ博士は、「都市においては、インターネットにスムーズに接続できる環境にあること、そして市民はプログラミングスキルを備えていることが重要であり、これらは今後の経済成長に欠かせない要素である。AI基盤の産業をサポートすることで、都市の経済成長が促されるとともに、結果的に市民のウェルビーイングにも寄与することになる」とコメントしている。

 これは見方を変えれば、都市と地方間の二極化を招きかねないということでもある。インフラ構築のためのAI活用に積極的な都市ではAI関連の仕事が増え、都市の大幅な成長が見込まれるかもしれない。その一方で、AI活用に積極的でない地方の町との溝はさらに深まり、地方衰退の加速化の一因となり得ることが十分予想される。この難局をどう乗り切れるかが今後の課題として浮上する。

 コロナ禍をきっかけに、我々を取り巻く社会は一変しつつある。就業体制は従来のオフィス勤務からテレワークへと移行し、多くの教育現場ではオンライン授業へと切り替えられた。また、自宅で過ごす時間が増えたことが影響し、NetflixやSpotifyなどのオンラインサービスの需要が大幅に伸び、Netflixにいたってはエンタメ大手のウォルト・ディズニーの時価総額を上回るという異例の事態をもたらした。

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