『フォートナイト』は最低1年App Store復帰できず 反乱の大義は「メタバースの実現」にあり?

 人気バトルロイヤルゲーム『フォートナイト(Fortnite)』を開発するEpic Gamesが独占禁止法違反でAppleを訴えた「フォートナイトの乱」は、両社とも一歩も退かない姿勢を貫いているため、まったく出口が見えない状況となっている。こうしたなか、Epic Gamesが反旗を翻した理由を考察する記事が公開された。

「Appleでサインイン」は利用できるものも……

 『フォートナイト』がApp Storeから削除されてiOSプレイヤーがチャプター2シーズン4に参加できないなか、Appleがさらなる追い打ちをかけた。9月11日以降、Epic Gamesアカウントへのサインイン時に「Appleでサインイン」が利用停止になる、と『フォートナイト』公式ツイッターアカウントは発表したのだ(下のツイート参照)。Epic Gamesアカウントへのサインインは、iOSプレイヤーでなくても利用できるサービスなので、同サービスの影響範囲は大きいものだった。

 しかし、以上の発表から程なくして、「Appleでサインイン」の利用停止が無期限に延長されたことが発表された。同サービス利用停止を事実上撤回したのは、影響範囲の広さを考慮して「過剰な報復措置」と法廷で解釈されるのをAppleが懸念したから、と推測される。

 もっとも、Appleは他の一手をすでに打っていた。イギリス有力紙The Guardianが9日に報じたところによると、AppleはEpic Gamesに対して直接支払いシステムをあえて実装した行いに対して、「行いの性質を考慮して」少なくとも1年間はApple Developer Programへの再申請を拒否する、と通達したのだ。この通達は、少なくとも1年間は『フォートナイト』のApp Store復帰はないことを意味している。

 ちなみに、『フォートナイト』のApp Store削除直後には、Appleは直接支払いシステムを撤回すれば速やかに同ゲームを復帰させる、と明言していた。今回の通達により、AppleはEpic Gamesに対してより強硬な態度をとることが明らかになった。

『フォートナイト』こそオアシスに最も近い

 『フォートナイト』のApp Store復帰が遠のいたなか、ビジネス系メディア『VentureBeat』は11日、「フォートナイトの乱」を考察する記事を公開した。この記事は、反乱の経緯とEpic GamesとAppleそれぞれの主張をまとめている。

 注目すべきは、Epic Gamesが反旗を翻した理由を解説するところである。同記事は、同社がAppleを訴えた理由がプラットフォーム使用料を値下げするべき、あるいはプラットフォーム使用料を無料にすべきというような「Apple税減額抗争」でないことを改めて強調している。反乱したのは、ユーザにプラットフォーム使用料を支払う以外の決済方法を提供できるように、市場としてのApp Storeの自由化を求めているからである。そして、こうした自由化を阻んでいるのが、AppleによるApp Storeの独占的運営なのだ。

 それにしても、なぜEpicは『フォートナイト』のiOSプレイヤーを失うリスクを冒してまでApp Storeの自由化を頑なに求めているのか。同社がApp Store自由化の先に見ているものは、完全なメタバースの実現である。メタバースとは、簡単に言えば、映画『レディ・プレイヤー1』に登場する「オアシス」のようなあらゆる活動が可能なバーチャル空間のことである。

 『フォートナイト』は、Travis Scottのバーチャルライブやバーチャルイベント空間「パーティロイヤル」の実装に見られるように、ゲームを超えたメタバース実現への道を着実に歩んでいる。将来的にはゲーム内での各種イベントチケットの販売、さらにはユーザが制作した創作物の販売といった取引が生じる可能性も高い。App Storeのプラットフォーム使用料が現状のままの場合、使用料分をiOSユーザに転嫁せざるを得ないという事情から、iOSユーザだけに割高な取引を強いてしまう。こうした状況は、メタバースの成長を阻害する要因になるだろう。しかし、もしApp Storeが自由化されれば、平等な取引が可能になるはずなのだ。

 以上のようなEpic Gamesの一連の主張に対して、AppleはEpicを「ロビンフットのふりをしている金持ち」と手厳しく揶揄して、『フォートナイト』の乱で提起された問題の核心は金銭に関する基本的な意見の相違に過ぎない、と法廷で述べている。

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