「ほどよく難しいゲーム」を作り出すゲーム 『タケシとヒロシ』の斬新なシステムを紹介

ストーリーや音楽も一見の価値あり

 本作は斬新なシステムに目が行きがちだが、世界観もていねいに作り込まれている。ヒロシや周辺人物とのふれあいを描くドラマパートは、温かなタッチの人形劇として描かれており、NHK教育テレビのような雰囲気がある。そのため、子どもが遊べるゲームを探している人には特におすすめだ。

 また、病弱の弟のためにゲームを作るというストーリーは、モノづくりの経験がある大人にも刺さるのではないだろうか。タケシは子どもながらにクリエイターとしてのプライドを持ち、同じくゲームを作るクラスメイトに嫉妬したり、自分の能力の限界にぶつかったりする。そこには、多くのクリエイターが体験したような生身の感触があった。さらに、タケシはヒロシを自作ゲームの「ファン」としても捉えている。世界でただ一人のファンのためにゲームを作り続けるというストーリーは、キャッチ―でありながら安っぽさはない。

 BGMも昔ながらのビデオ・ゲームを想起させるサウンドになっており、耳に心地いい。ファミリー・コンピュータを遊んだ世代は懐かしい気持ちでプレイすることができるかもしれない。さらに、会話のテキストを送るたびにポップなサウンドエフェクトが入るため、ドラマパートも退屈しにくい作りとなっている。

 『タケシとヒロシ』のNintendo Switch版は、Nintendo eShopから900円で購入可能だ。斬新なゲーム性やハートウォーミングなストーリーを求めている人はぜひ一度プレイしてみてほしい。

■坂田憲亮
愛知県の田舎で自由気ままに暮らすフリーライター。アプリやゲームなどエンタメ分野をはじめ、国内大手の各種メディアにて記事を執筆中。取材から撮影、Webデザインまで行う自称・マルチクリエイター。

関連記事