『幻想水滸伝』はなぜ愛されるのか  支援額4億円間近の『百英雄伝』クラファン成功を機に分析

 7月27日、『幻想水滸伝』シリーズなどに携わってきたクリエイターの集結で話題を呼ぶ新プロジェクト『百英雄伝(洋題:Eiyuden Chronicle)』のクラウドファンディングがスタートした。

 同調達では、最初のステップを「50万ドル」に設定し、世界規模で出資を募ったところ、約2時間で目標へと到達。その後も額は増え続け、8月17日には300万ドルを突破した。

 いったいなぜ同タイトルにこれほどの期待と支持が集まったのだろうか。本稿では、その理由と密接に関わるであろう『幻想水滸伝』シリーズの魅力へと迫っていく。

一瞬で目標額に到達した『百英雄伝』のクラウドファンディング

 『百英雄伝』は、『幻想水滸伝』シリーズの生みの親と言われるゲームクリエイター・村山吉隆が中心となって開発される新作RPGだ。7月25日にプロジェクトの概要が発表され、中核を担うキークリエイターの名や、『幻想水滸伝』を感じさせるゲームデザインなどから、往年のシリーズファンを中心に大きな話題を呼んだ。

 プロジェクトリーダーの村山吉隆は、脚本とゲームデザインを担当。そのほか、河野純子(キャラクターデザイン)、小牟田修(ディレクション、システムデザイン)、村上純一(プロデューサー、アートディレクション)と、同シリーズやほかの人気タイトルで実績のあるクリエイターが中心メンバーにラインナップされている。

 7月27日には、PC版の開発資金を募るクラウドファンディングがスタート。最初の目標である「50万ドル」の調達を2時間でクリアしたことでも注目を浴びた。開始から7時間後には、家庭用プラットフォームでの発売を条件にした「100万ドル」のストレッチゴールも突破。8月17日には「300万ドル」にまで到達し、キックスターター史上、最も支援を受けたゲームの9位にもランクインした。

 なお、このクラウドファンディングは、8月30日まで実施予定。残り4日を切った時点で、3億8,000万円以上を集めている。『百英雄伝』のリリースは2022年10月。リワードのあるすべての支援(最少額は4,000円)で、同タイトルの製品版がリターンされる。

『百英雄伝』に携わるクリエイターが創始したJRPGの金字塔『幻想水滸伝』

 

 『百英雄伝』になぜこれほどの期待と支持が集まったのかを考えるとき、触れておかなければならないのが『幻想水滸伝』シリーズの存在だ。発売から25年が経ってもなお、“JRPGの金字塔”として扱われ続ける同シリーズは、当時コナミの社員としてゲーム開発に関わっていた村山吉隆・河野純子らによって創始された。

 しかしながら、シリーズ生みの親とされる2人は、直近の作品に携わっておらず、彼らの手を離れた『幻想水滸伝』は、いつの間にかゲーム史からフェードアウトしてしまった。2人が同時にシリーズ作品へと携わるのは、初作以来、実に25年ぶり。村山吉隆に至っては、名作と名高い『Ⅰ』『II』『III』以降、携わっていない。そのため、『百英雄伝』が評価の高い3作品から地続きのタイトルと考えられた格好だ。同タイトルが新規IPながら爆発的な支援を集めた背景には、『百英雄伝』がシリーズの“事実上の続編”であるという点が存在している。

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