『Apex Legends』人気の要因は「設定の緻密さ」と「二次創作文化」にもあった?
2017年にリリースされた『PlayerUnknown's Battlegrounds』(以降、『PUBG』)の大ヒットをきっかけに現代のオンライン対戦ゲームにおける主力ジャンルの一つとなった「バトルロイヤル」系ゲーム。数十人~100人近くにも及ぶ膨大な人数でたった一つの頂点を奪い合うこのジャンルは、今ではFPS/TPSの枠を超えて様々なジャンルに応用されるほどの人気を誇る。つい先日も、アスレチック・プラットフォームのバトルロイヤル『Fall Guys: Ultimate Knockout』がローンチを迎え、想定をはるかに超えるアクセスによって長期間に及ぶサーバーダウンに苛まれるほどの人気を博していた。
2020年8月現在、世界における「バトルロイヤル」系ゲームの頂点はやはり『フォートナイト(Fortnite)』だろう。ポップでコミカルな世界観と、建築システムによる奥深いゲーム性にクリエイティブ要素まで兼ね備えた本作は、基本プレイ無料という敷居の低さも相まって絶大な人気を獲得し、今やゲームという枠を超え、世界のポップ・カルチャーを語る上で決して避けて通れない存在となっている。
一方で、2019年2月と比較的後発のローンチとなりながら見事に多くのプレイヤーを獲得することに成功したのが、以前より『タイタンフォール』シリーズでコアなシューターファンの支持を集めていたRespawn Entertainmentが開発した『Apex Legends』である(運営はElectronic Arts)。タイトル発表と同時に正式リリース、同時にインフルエンサーを大量に起用して一気にタイトルを広めるという大胆なプロモーション戦略が功を奏し、新規タイトル(正確には『タイタンフォール』のスピンオフ作品という位置付け)でありながら配信開始1週間で累計プレイヤー数が2500万人を超えるという驚異的なスタートダッシュを決めることに成功した。国内でも、シューターとしての操作性の良さや、フレンド以外の人とも容易にコミュニケーションができるPingシステム、戦闘のテンポの良さや3人1組を前提とした優れたゲームバランス等が話題を呼び、あっという間に人気タイトルの仲間入りを果たすことになる。
あれから1年半が経過し、『Apex Legends』はバトルロイヤル系ゲームの代名詞の一つとしてすっかり定着した。とはいえ、世界的に見ると驚異的な安定感を誇る『フォートナイト』や遂に基本プレイ無料を導入した『Call of Duty : Warzone』といったタイトルが人気の主軸となっている。主にPC版におけるチーターの問題が主たる要因として挙げられるが、あまりにも前述の2タイトルが強力すぎるというのも正直なところではある。
とはいえ、『Apex Legends』の勢いは完全に失われたわけではない。むしろ勢いを取り戻しつつあると言えるだろう。2020年5月より開始した「シーズン 5 : 運命の行く末」は過去最高のユーザ保持率を記録し、新規プレイヤー数が大幅に増加、平均プレイ時間も向上と、歴代シーズン史上最大のローンチを迎えることに成功している。シーズン・トレーラーの再生回数は現時点で1100万回以上と既に前シーズンの数字を上回っており、新型コロナウイルスの流行に伴うビデオゲーム需要の急増も大いに要因としては考えられるが、少なくともローンチ以降では、今が『Apex Legends』史上最も盛り上がっている時期であると言えるだろう。
そして、実は海外以上に明確にピークを迎えているのが日本である。LINEによる若年層(全国の15〜24歳の男女)の2020年上半期流行調査では、『Apex Legends』が総合ランキングで前回の30位から8位と大幅にランクを上げており、これは昨年のローンチ時には見られなかった現象だ。(参考 : https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3299)
この背景にはYouTubeやtwitchなどでの配信での人気の上昇が大きい。配信技研による調査では、シーズン 5がローンチされた2020年5月以降、『フォートナイト』や『Dead by Daylight』、そして今年を代表するキラータイトルとなった『あつまれ どうぶつの森』といった人気配信タイトルを軽々と抑え、何と『Apex Legends』が圧倒的な視聴時間を記録しているのである。
さらに8月2日には、自身も世界大会に出場する程の腕前である渋谷ハルの主催による、バーチャルYouTuber(VTuber)のみのeスポーツ大会、「VTuber最協決定戦 ver APEX LEGENDS」が開催されている。これまで『PUBG』で開催されてきた同大会が今回は『Apex Legends』で実施され、YouTubeとSNSを中心に大きな話題を集める事になった。これもまた、本作が国内で第二のピークを迎えている事を象徴する出来事の一つと言えるだろう。