噂される「Apple Glass」は、引き算の技術によって作られている? 新特許に見えた傾向

「Apple Glass」とVirtual Touch Interface

 すでにデバイスとしては「Apple Glass」の存在があちこちで話題となっているが、それらにどのようなAR/VR技術が搭載されるのかについては長らく憶測が続いていた。アップルはAR機能を搭載したヘッドセットのような大きめのものを2021年リリースを目処に、さらに軽量でコンパクトなメガネ型のものを2023年リリースを目指し開発を進めていると言われている。

 その中で先日特許申請された「Virtual Touch Interface」は、今後のAR技術の応用に大きく適用されるかもしれない。この新しく申請された技術は、現実に存在するものへのタッチを第一レイヤーとして認知し、その背景にある物理的現実を第二レイヤーとして認識。二つのレイヤーの温度差を感知することで、ARから現実に表示されたコントロールボタンなどの操作を、より正確に行うことができるという仕組みだ。

 従来のAR技術における操作性というのは、人間の体に物理的にタッチセンサーをつけたり、実際にARで表示されるスイッチなどを大きくすることによって、誤作動を防ぐというものだった。しかしアップルはすでに存在するもの、そして必ず存在する人間の体温と、背景にある物理的表面との温度差を感知することによって、ARの精密さを開拓した。スイッチやある表面を人間の体が触れてから(スイッチを押すなどの動作)離すまでの、温度の低下増加の微妙な変化を感知するという細やかな技術だ。

 これらの「Apple Glass」やARの開発に伴って研究されている「rOS」はAR/VR専用のOSで、iPhoneに搭載されているiOSをベースにしており、iPhoneとの互換性を強調している。アップルはすでに業界に存在している「足し算」の技術ではなく逆説的に「引き算」の技術、既に私たちの持っている身体的そして物理空間の特徴を利用することによって、この新しい温度差感知をベースにした技術にたどり着いた。

 これがさらに開発・応用されていくことで、より多くの人たちがARという技術、体験にアクセスすることが可能になるかもしれない。

■mugiho
ニュージーランドの大学でマオリ文化の発展・都市計画・教育について学びながら映画、テック、文化芸術について執筆するフリーライターと翻訳家。人間観察をしながらたまにそれらについて書いたり撮ったりしている。

〈Source〉
https://www.macrumors.com/2020/07/21/apple-glasses-touch-surface/
http://patft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO2&Sect2=HITOFF&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsearch-adv.htm&r=36&p=1&f=G&l=50&d=PTXT&S1=apple.AANM.&OS=aanm/apple&RS=AANM/apple
https://appleinsider.com/articles/20/07/21/apple-glass-could-turn-any-surface-into-a-display-with-touch-controls
https://www.macrumors.com/roundup/apple-glasses/
https://mobidev.biz/blog/augmented-reality-future-trends-2018-2020

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