空間演出ユニットhuez「3.5次元のライブ演出」第四回

でんぱ組.inc配信ライブで魅せた、空間演出ユニット・huezの力 「変わりゆく世界における、ライブ演出の行方」

本番直前まで繰り返された演出の"引き算"

ーーhuez内の通しリハはどのように行われたのでしょうか。

としくに:今回、とてもありがたかったことに、でんぱ組のカメラチームから各曲のスイッチングコンテを全曲分頂いていて、曲のどのタイミングでカメラが誰を抜くのか、というところのアタリを予め付けることができました。

 それを見ながら、いただいた通し映像にこちらで作ったエフェクトを重ねてリハを進めたんですけど、厳密にはリハになってなかったんですよね。実際の6分割の画角とは見え方も異なりますし、スイッチングのチームが同席したわけでもないですし、環境も違う。なのでとりあえずエフェクトを重ねてみて、画面がどれだけうるさいか、みたいなチェックをオペ確認と一緒にやりました。

ーースイッチングされていない通し映像にエフェクトを上からかけているだけだから、厳密にはハマっているのかわからないわけですね。

としくに:そうなんです。実際に人が動いていると画面の賑やかさも変わりますし。

YAVAO:むしろこのときに初めて「どういう画になるか」だけはわかったって感じだもんね。全部並行してhuez内で作っていたものをようやく合体させたので。

ーー前もってメンバーさんを交えたリハは行われたのでしょうか?

としくに:本番当日1回ですね。通しをやっただけです。

YAMAGE:こちらの演出も前もって部分的に映像を取り出してお渡しすることはできたんですけど、結局前日深夜にリハが出来て、こちらも全貌が掴めたって感じなので、当日それぞれフタを開けてみたって感じでした。

としくに:この演出プランを組んでいるときに大変だったのは、正解がわからない、ってところでした。僕が普段ライブ演出をするときは、1回プランを組んで作ってみてから、スタジオリハや本番当日のリハで足し算引き算して、演出プランの想像と実際見たときの整合性を確認していく。生ライブであれば経験値もあるので、「これくらいが良いだろう」という塩梅がわかるんですが、今回はまあズレまくりました。huezの中で1回やってみて、やっぱり違うよなって引いてみて、本番当日になってメンバーさんが入って通しリハをやってみて、まだ全然違う。また引き算して変えて……みたいな調整を短期間ですごい回数やりました。

ーー本番のリハ後にも演出の変更が?

としくに:リハの段階でアニメーションっぽい映像を被せまくってたんですけど、本番になって30%くらい引き算しましたね。見て、これだとダメだと。でんぱ組の皆さんのパフォーマンス能力がめちゃくちゃ高くて、エフェクトをかけずにメンバーだけが見える方が良いと思ったところは徹底的に引いたし、かぶせるところはかぶせるっていう調整をやりました。

 もふくちゃんからこのお仕事をいただいたとき、「せっかくの舞台なのでライブを食ってやるぞ」くらいの気持ちで望んだんですよ。でもメンバーさんのパフォーマンス力が予想を遥かに超えてきました。

 例えば「ギラメタスでんぱスターズ」の途中でえいたそさんが、カメラに向かって指で輪を作ってパフォーマンスをするんですけど、これってカメラでしか できないんですよ。これを本番で仕掛けてくるっていうのがすごい。本人たち用のモニターを用意していたので、当日のリハで「自分たちがどう見えるか」を捉えて、「こういうパフォーマンスをすると見栄えが変わるんだな」というのをメンバーそれぞれが認識している。おそらくマイクの持ち方から意識しているんです。「この瞬間は顔をどこに置いとかなきゃいけない」みたいなことを的確に捉えていて、彼女たちにこの能力がないと成立しなかった演出がたくさんありました。

えいたそさんの「指で輪を作るパフォーマンス」

YAMAGE:動きに合わせて表情を変えてくださっていたりして、やはりプロだなあと。

としくに:でんぱ組さんからも「huezがいなかったらできなかった」って言っていただいてるんですけど、それはこっちのセリフでもあって。あなたたちじゃなきゃこれは成立してないよ、と。芸歴・経験・才能が詰まっているチームだと実感させられました。絵作り自体はでんぱ組チームにもちょいちょい共有はしてたものの、本番まで「自分たちがどう映るか」はほぼほぼ分からなかったわけですから。短い時間の中で自分たちがどう映るかを把握して、こう映ったらきれいなんじゃないか、かっこいいんじゃないかっていうのをその場で考えていたんだと思います。

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