インタビュー連載『ゲーム実況のふるさと』

ゲーム実況者・倭寇(わこう)×えふやん対談 「企画は思い浮かんだ瞬間がピーク」

二人がよく見ていたゲーム実況者は?

ーーそもそも、えふやんさんはゲーム実況でブレイクしているなかで、なぜリスナーからメンバーを募集してまで“旅動画”を撮ろうと考えたのでしょうか?

えふやん:あるYouTuberさんがバイクで一人旅をしている動画が好きで、ゲーム実況を始める前から、実はやってみたいと思っていたんです。もっと言うと、“歌ってみた”もやってみたいし、ボーカロイドで曲も作ってみたいし、といういろんな思いがあって。実況動画を多くの人に観てもらえて、楽しく続けていたんですけど、「旅動画をやりたい」という思いはずっと消えなくて。でも、ひとりで撮る勇気はないし、撮影に付き合ってくれる友達もいないから、リスナーからメンバーを募集しようということで、生放送でオーディションを開いた、という流れです。

倭寇(わこう):もともとの友達じゃない、ということに不安はなかったんですか? 気心の知れた人と旅行に行くのとは、絶対に違うじゃないですか。

えふやん:そんなに不安は感じなかったんですけど、確かにぶっつけではアレなので、2012年の夏にオーディションをして、本編を収録する12月末までに3~4回一緒に遊んで、お互いのキャラをつかむ、みたいなことはやりましたね。チームをまとめることの大変さを感じたのは、そのあとというか(笑)。

倭寇(わこう):社会人が集まれば4人も集まればエゴがぶつかるから(笑)。なんの問題もおきない4人グループって、見たことないですもん。

えふやん:その点、倭寇さんの「チーム()」は仲が良さそうですよね。どんな流れでチームとして活動することになったんですか?

倭寇(わこう):茸(たけ)と友達で、生放送を見に行ったときに、「名前にカッコがついている実況者っているよね」という話になって。それで、まずはP(ピー)と藤吉(とうきち)も交えて動画を投稿しようと。同時に、えふやんさんの動画を観て旅動画を撮りたいと思っていたなかで、「ニコニコ町会議」というイベントがあって。その宣伝車として「ニコニコカー」という車があったんですけど、全国各地に運んで展示する形で、「車」ということをもっと活かせる企画はないかなと思ったんですよね。それで、運営さんに「この車で旅をしながらイベント会場に向かう、という動画を撮ったらどうですか?」と提案しよう……と思ったんですけど、「これは新世界グル~プに持っていかれるな」と思い至って(笑)。

えふやん:はははは(笑)。

倭寇(わこう):だから、先に旅動画の実績を作ろうと思って、チーム()で「隣接した県をサイコロで選んで旅すると目的の県まで行けるのか」を撮ることにしたんです。


ーーチーム()では、藤吉(とうきち)さん、茸(たけ)さんはもともと友人ということで、その意味ではP(ピー)さんが異質ですね。

倭寇(わこう):それこそ「高速マリオ」なんかは実況を始める前から観ていましたし、レジェンドクラスの実況者ですからね。でも、会ってみると印象が全然違うというか、動画だとあんなにぶっ飛んでいるのに、普段は天然でかわいい、“ちっちゃいおじさん”なんですよ(笑)。ただ、彼がいることによってチームに爆発力が生まれているのは間違いないですね。

 僕はメンバーに企画を一切伝えず、着替えだけ持って集合してもらうんですけど、えふやんさんは確か動画で、ろーくんと軽く打ち合わせと言われてましたよね。

えふやん:そうですね。短編の企画のときは相談しないこともあるんですけど、長編の企画のときは、彼がずっと運転をすることになるので、旅程などを先に相談しておいた方がいいだろうと。撮影当日に「これから4日間、キャンピングカーを運転してもらう!」とは無免許の僕からすると言いにくいですし、ろーくんは意外と知識も豊富なので、意見も参考になったりします。

倭寇(わこう):なるほど、その点、僕らは最初の撮影で唯一免許を持っていなかった茸(たけ)にも「それはおかしいだろ!」って教習所に通わせましたし、いまは全員運転できるから、負担が少ないかもしれないですね。えふやんさんは、旅動画のパート数って“取れ高”を見て決めますか?

えふやん:そうですね。これまで一番長かったのが15パート、短いのが12パートですけど、撮影前に決めたわけではないです。現場にいながら頭のなかで編集して、「今はたぶんパート2くらいだな」なんて計算はよくしますね。自分で応募してきたくせに、彼らは何も考えないので(笑)。その点、チーム()のメンバーはそれぞれ前のめりに取れ高を作ろうとしていて、うらやましいなと。

倭寇(わこう):ただ、僕はどれだけ取れ高があってもなくても、絶対にパート10前後で終わらせると決めているんですよ。取れ高によってそれが大幅に増えてしまうと、編集する自分にかかる負担がめちゃくちゃ大きくなるというか。えふやんさんなんか、メンバーの顔をアイコンで隠す作業もあるし、そもそも旅の日程も僕らより長いし、絶対大変ですよね。丸ごと3~4日の素材があるわけで、それを見直すだけでもさらに3~4日じゃないですか。

えふやん:5時間の移動を20分に編集したり(笑)。「この時間帯は何もなかったな」という記憶はあっても、「何もなかった」ことを確認するために、結局見直すんですよね。

倭寇(わこう):動画データの音声の波形を見て、無音のところは確認せずに切ってもいいかなと思うんですけど、意外と変顔してるのが面白かったり(笑)。


ーーそのようにプレイヤーとしてだけではなく、企画や編集でも忙しいなかで、今もゲーム実況動画は観ますか?

倭寇(わこう):以前ほどは観なくなりましたね。実況者の多くがそうだと思うんですけど、視聴者として熱中していた期間があって、動画を投稿しながら他の実況も楽しんでいた時期があって、だんだんと動画投稿に集中するようになるというか。少し前だったら、僕は縛り実況をすることが多いので、「縛りプレイ」みたいな言葉で検索して、片っぱしから動画を観ていたんですけどね。

えふやん:僕も、動画投稿をする前から好きだった人の新作とか、ちょっと古い動画を見返すくらいかな。

倭寇(わこう):ちなみにえふやんさんは、幕末志士さんやドグマ風見さんのほかに、どんな人の動画を観てました?

えふやん:例えば、今はまた別の名前で活動されているボルゾイ企画さんとか、チームTAKOS(つわはす・アブ・コジマ店員・セピア)のみなさんとか、まっくすさん、もちろんP(ピー)さんも観ていましたし、あとは変態スネークさんとか。ゲーム実況者って、みんなゲーム実況が好きなんですよね。倭寇さんはどんな動画を観ていましたか?

倭寇(わこう):僕はトシゾーさんとか、セピアさんとか。特にセピアさんは、ニコ生の枠がバイト中に終わってしまっていて、タイムシフトであとから視聴するために、ニコニコのプレミアム会員になったんですよ。それで動画を投稿できる容量が増えたのが、実況を始めたきっかけのひとつで。ゲーム実況って、こうやって連鎖みたいに広がっていったんでしょうね。相関図とか樹形図を作ったら面白そう。

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