世界を変えるカラオケスタートアップ、なぜフィンランドから登場? 創設者に聞く“業界への問題意識”

 フィンランド発のカラオケストリーミングサービス『Singa』は、「現代化されたカラオケ」だ。残念ながら今はまだ日本でサービスを行なっていないが、カラオケマシンやディスクの販売を伴わないカラオケビジネスとしては世界最大手であり、世界のカラオケに革命を起こすサービスとして、知名度が上昇中。他のサービスで例えるならば「カラオケ版Spotify」であり、「カラオケ版Netflix」であるともいえる。

 より詳しいSingaの説明もしていきたいところだが、まずは『Singa』の生まれたフィンランドと、カラオケが生まれた日本とのカラオケ文化の違い、そして『Singa』誕生のきっかけについて、フィンランドのカラオケストリーミングサービス『Singa』の共同創設者でCEOのアッテ・フヤネン(Atte Hujanen)氏へのインタビューを交えながら記していきたい。

「卒業」できていないフィンランドのカラオケ

 大雑把に言えば、日本を含むアジアとその外ではカラオケ文化は大きく異なる。日本ではカラオケが生まれてしばらくの間は、カラオケスナックなど飲み屋などに設置されたカラオケマシンで歌うのが主流だった。

 このことについて、フヤネン氏は「フィンランドや、他の西洋諸国では、そのカラオケの元々の形に近い状態が今も保たれている。つまり、カラオケはバーなど共有空間で楽しむもの」と話してくれた。

 しかし、日本をはじめとするアジア圏では、その「元々の形」のカラオケから、客が個室でカラオケを楽しむのが主流な形へと変わってきた。フヤネン氏の言い方で興味深かったのは、フィンランドはバーで楽しむ形から「まだ卒業できていない」という点だ。

 フィンランドには、VIPスペースにカラオケがある程度のプライベートなカラオケならあるが、日本のような個室タイプのカラオケはいまだ存在しない。

文化の多様性と西洋の個室カラオケ

 そうはいうものの、アジアの外に個室タイプのカラオケで歌うという文化が存在しないというわけではない。フヤネン氏によれば、西洋諸国でも文化の多様性が大きい都市では、海外で暮らして帰ってきた人などが海外文化を導入することで、現代日本と変わらない個室タイプのカラオケ様式が普及しているという。

 西ヨーロッパではイギリスの各都市部、北欧ではスウェーデン、ノルウェー、デンマークの首都部で、このようにして輸入された個室カラオケが一部に存在する。南半球側でもオーストラリアでは、東南アジアからきた人たちなどがアジアの個室タイプのカラオケ文化を豪州に持ち込んでいる。

 文化の多様性が豊かな都市部では個室カラオケがある一方で、フィンランドの首都ヘルシンキには未だ存在しない。そんな、ある意味カラオケ文化では後れをとっているとも言える、フィンランドのカラオケ文化はどのようなものだろうか。

フィンランドのカラオケは「楽しい時間を過ごすための一手段」

 氏によれば、フィンランドではカラオケは「主に楽しい時間を過ごすための手段であり、多くの場合友達と共に楽しむもの。もしくは、一人のファンとして自分の好きな歌手、好きな歌と繋がる手段の延長線上に存在する」とのこと。

 もちろん日本でもカラオケは楽しい時間を過ごすための手段ではあるが、フィンランドでは「友達とワイワイ楽しむ」行為の延長線上にバーやナイトクラブが存在し、そこにカラオケシステムが備え付けられている場合がある(全てのバー・ナイトクラブにあるわけではない)。加えて、仲の良い友達とそのような場所に赴いても、みながみなカラオケで歌うわけではない。歌いたい友達はカラオケし、そうでない人は他の人が歌っているのを横目に飲んだり話したりして楽しむ。仲間の誰かが歌わなくても、他の客が何かを歌っている、という状況だ。

 対して、日本を始めとするアジアでは、個室カラオケの発展以降、カラオケをすることそのものを楽しむ文化ができあがっている。カラオケをするために出かけ、カラオケでは歌うことが中心となり、その周りにそれ以外の行為、飲む、食べる、話す、などが存在する。

 また、東京を始め住居空間の狭いアジアの都市部では、家に人を呼ぶホームパーティーの代わりに、カラオケルームがパーティー会場となりえたり、反対に「一人カラオケ」といった、リラックスするためにカラオケに行くなどもあり、フヤネン氏は「カラオケに多様性がある」と表現した。

 一概に「カラオケで歌う」と言っても、国が違えばその持つ意味が異なる。

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