東海オンエア・虫眼鏡のトークはなぜ面白い? 個人チャンネル「放送部」の50万人登録を目前に考察
6人組YouTuberグループ・東海オンエアのメンバーである虫眼鏡の個人チャンネル「虫眼鏡の放送部」の“登録者数50万人”という節目が、目前に迫っている。この機会に、同チャンネルの魅力とともに、虫眼鏡のトーク力について掘り下げてみたい。
「虫眼鏡の放送部」では、「虫も殺さないラジオ(通称:虫コロラジオ)」と題して、虫眼鏡が“部員”(「虫眼鏡の放送部」の視聴者のこと)から寄せられるお便りに答えていく動画を、東海オンエアのメインチャンネルがお休みとなる月曜日を中心にアップしている。ファンの描いた一枚絵に声のみを乗せるシンプルな動画だけのチャンネルで、もともと東海オンエアを知らないリスナーも巻き込み、登録者数を増やし続けている要因は、ひとえにそのトークが面白いということだ。それでは、その“面白さ”の源泉はどこにあるのか。
東海オンエアの動画では、メンバーに対して知的なツッコミや皮肉の利いた毒舌を披露している虫眼鏡だが、「虫コロラジオ」でもそのスタイルは基本的に変わらない。送られてくるお便りは1週間で1000通を越え、「おでんで1番好きな具は?」といった軽いものから「彼氏の携帯を見てしまう……」といったお悩み相談まで、内容はさまざまだ。なかには「クリエイターと視聴者はどっちが偉いのか?」など、答え方によっては物議を醸しそうなお題も寄せられているが、どんなお便りに対しても”正しい答え”や”視聴者が求めている答え”ではなく、あくまで”虫眼鏡自身が思うこと”を包み隠さず話している。冗談半分の言葉も含め、場合によっては暴論に聞こえる意見もなくはないが、感心させられるのは、それでもリスナーを納得させてしまう“説得力”だ。
例えば、東海オンエアのサブチャンネル「東海オンエアの控え室」の人気動画、「打ち上げのしゃぶしゃぶのだしを決める討論」(タイトル通り、20分に渡りしゃぶしゃぶのだしを話し合うだけの動画)では、「虫眼鏡が司会をしながら自分の思い通りに討論をコントロールしている」といったコメントが殺到。また同チャンネルの「なんでもない平日にてつやをラーメンに誘ってみました」という動画では、嫌がるてつやのじゃんけんを華麗に退け、見事にラーメン屋に誘い出すことに成功している。言葉巧みに……というと聞こえが悪いかもしれないが、人の心理を突く話術が、言葉の“説得力”を支えているように思える。
また、持論をズバッと展開したあと、気分を害する可能性のある人への配慮を欠かさないバランス感覚が見えるのも大きい。例えば、「#24 デート代、男が出すのは時代遅れ?」にて、「自分が出した駐車場代や軽食代に対してお礼を言わない彼氏にモヤモヤする、男がお金を出して当然とは思わないが少しは遠慮してほしい」というお便りに対して、虫眼鏡は「男が全部出すべき」ときっぱり。理由はいたってシンプルで、本人が「全部出す男の方がかっこいい(と思う)から」。一方で、「付き合うまでの経緯や2人の関係性を知らないので適当なことは言えない」「”ありがとう”が言えない人はちょっと怖いな」とフォローを入れており、納得感が生まれやすい。
また「#48 虫眼鏡はYouTubeなくなったらどうするの?」では、「アニメの実写化において原作の設定を変更するのが不満」というお便りに対し、自分の意見は真逆だと言う。「原作に対する愛ゆえの意見を否定するつもりはない」としつつ、「映画というのは原作とはまた別の作品。なぜ自分が知っている話をもう一度観に行こうと思うのか。脚本家や監督のオリジナリティが足された別の結末の方が絶対に面白い。映画を作る人というのはみんなが観たいものを期待通りに作る人ではない」と熱く語った上で、しかし「意見が違ったらどちらかが間違っている、というわけではないので、違う意見の人を受け入れるコメント欄になってほしい」と締めくくっている。