『テラスハウス』東京編:第13~16話ーー点在する“ディスコミュニケーション”の正体とは?
タイミングを合わせにいく努力
莉咲子からの再三のアプローチを受けてもビクともしなかったケニーが、第12話のラストでついに告白に至る。それに対して「まだわからない」と答える莉咲子。もうちょっと早く、抜群のタイミング(というのがもしあるとすれば)で想いを告げていたら、莉咲子は「オーケー」と即答していたかもしれない。しかし、結果は「ノー」。いま決めてほしいと言われると「それほど(好き)じゃない」と返すしかなかった。そうして一度終わったと思った恋が、ケニーのライブパフォーマンスによって再び熱を上げることに。大勢の前で「彼女ひとりのための歌を披露する」なんてことを、できる人は限られているけれど、だからこそ“タイミング”などという細かいことを吹き飛ばして、強烈に心を引きつけてしまう。
そうした一瞬のマジックアワーは存在したものの、莉咲子はグズグズ悩んで、結局、長いスパンでケニーのことを考えていきたいと煮え切らない解答を示した。そして、一緒にテラスハウスを出ると決意。恋愛におけるタイミングはとても重要だけど、なかなかピタリと噛み合わない。しかし、合わないからこそ長い時間をかけて合わせようと努力する莉咲子の姿が、強く印象に残る瞬間だったと思う。あんなに晴れやかな表情で家を出たのだから、彼らにとって、最良の道すじを辿っているに違いない。
コミュニケーションの難しさといえば、なんだか深刻なのは、流佳だ。特に女子メンバーとの間の会話がなかなか成り立たないこと。第13話では、次のアルバイトを探している流佳に香織が、(バーよりも)自分の将来につながるような仕事だといいよねとアドバイスを送る。それに対して流佳が「ここはアメコミのバーだから。普通のバーだったら働こうと思わない」と答えると、香織は「そうだよね」と身を引いてしまう。同様に、第14話では春花が「もっとちゃんとしてほしいな」とズバリ流佳に檄を入れるが、あまりピンときていない様子だった。
流佳には流佳なりの考えがあるのだろうけど、それもうまく言語化できず、両者の溝だけが広がるばかり。食事の約束をしていた香織には、「(何を話したらいいかわからないから)もうちょっと仲良くなってから行こう」とリスケを言い渡されてしまう。流佳の将来については何度も話題に出ているが、それから状況が変わっているようには見えないのが気になってしまうところ。香織や春花も、どれだけ親身に接しようとしても、さすがに流佳のお母さん役にはなってあげられないというのが、ここにきての正直なところなのだろう。
悠介の恋が終わる瞬間もまた儚かった。日本での滞在時間が限られていることに春花の思わせぶりな態度も相まって、やや急ぎ気味に気持ちを伝えることになった悠介。久々の登場となったエビアンからも「ちょっと早かったんじゃないかなって思うけど……」と指摘され、ここでもまた“タイミング問題”が浮上することに。これに関してはタイミング以上に、春花側がコミュニケーションの取り方を間違えていたと見るほうが正しい気がするが、いかがだろうか。