米国議会がFacebookの仮想通貨Libraに危機感 「我々の信頼に値しない」

G7でも「世界的な金融政策に影響を与える」と判断

 仮想通貨は、国際的な支払いでも手数料が抑えられるという利便性は確かにある。ビットコインなど仮想通貨の基幹技術として注目されるブロックチェーンをLibraも使用しているが、細部では異なる方式を採用している。ブロックチェーンの特徴は、分散型台帳技術だが、Libraは一部の人が記録管理を行う中央集権型構造だ。

 このことに対し、『CNBC』は「多くの専門家は、Libraを仮想通貨と呼べるか疑問視している」と報じている(参考:https://www.cnbc.com/2019/07/19/bitcoin-vs-libra-how-facebooks-cryptocurrency-is-different.html

 主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議でも「Libraは国家の通貨主権や世界的な金融政策に影響を与える」との見解で一致。マネーロンダリング、テロ資金、消費者とデータ管理といった課題も確認した。

 近年、ビットコインやイーサリアム等、あまたの仮想通貨が興隆している。デヴィッド・マーカス氏も、元々PayPalの出身だ。にもかかわらず、何故アメリカや世界各国の政府がLibraにこれだけ大きな拒否反応を示しているのだろうか。

 それは先述の通り、Facebookが危うさと規模の大きさの両方を兼ね備えている企業だからだろう。不祥事で伸び悩んではいるものの、最新の月間アクティブユーザーは、約23億7500万人で、ソーシャルメディアとしては1位と影響力の大きなプラットフォームであり続けている(参考:https://www.statista.com/statistics/272014/global-social-networks-ranked-by-number-of-users/)。

 これは、世界最大の人口14億人の中国を遥かに凌ぐ数であり、これだけの規模で流通する通貨が出来たら、各国の中央銀行が管理する法定通貨の地位は落ちることになるかもしれない。それだけではなく一企業が、地球政府の如く化けることを各国の政府関係者は恐れているのではないだろうか。

 CEOマーク・ザッカ―バーグ氏は、Libraについて、スイスの法規制の下で開発されるとしている。VisaやUberが既に出資しており、引くに引けないFacebookと各国政府の駆け引きは今後も続くだろう。

■Nagata Tombo
ライターであると同時にIT、エンタメ、クリエーティヴ系業界にも出入りする。水面下に潜んでいたかと思うと、大空をふわふわと飛びまわり、千里眼で世の中を俯瞰する。

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