モデリングディレクターに聞く、アニメ『BanG Dream! 2nd Season』の細部に凝らされた意匠

 アニメ『BanG Dream! 2nd Season』の制作に迫る特集企画。第一回ではサンジゲンの代表取締役である松浦裕暁氏に話を聞いたが、第二回では“CGモデリング”について掘り下げるべく、同社京都オフィスのモデリングディレクター・武内泰久氏に取材を行った。

 RoseliaのMVからスタートした同プロジェクトのフル3DCG計画が、どのように発展をみせ、アニメ本編に活かされたのか。キャラクターの多かった同作におけるモデリングの視点から見ることで、少しでもその細部に凝らされた意匠が伝わると幸いだ。(編集部)

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“サンジゲンっぽさ”を感じる要因は「モデリング」にあった!?

サンジゲン京都オフィス・モデリングディレクターの武内泰久氏。

ーーまずはじめに、武内さんのお仕事について教えてください。

武内:3DCGのすべての基礎、図面から造形して立体化する。「モデリング」をする人たちを「モデラー」と呼びます。モデリングは、「キャラクター」だけでなく、「楽器」や「えんぴつ」、「コップ」などアニメに出てくる物すべてが、仕事の範囲です。僕の仕事は、そのモデラーさんにお願いして、品質チェックをしたり、修正を出したりする、責任者の立場なんです。

ーー武内さんがはじめから担当するものもあるんですか?

武内:『BanG Dream! 2nd Season』は、アニメ本編よりも前にRoseliaのMVを作っていて、僕はそこで湊友希那のモデリングを担当しました。作る順番として、Roseliaはメンバー全員のライブ衣装が近いデザインで揃っているので、衣装は後回しにして、頭部を先に作っていきました。

ーーはじめから終わりまで、一気にやらないんですね。

武内:共通する部分が多いものは、沢山の作業者に同時発注すると、モデルのクオリティーや作り込みの度合いにバラつきが出てしまいます。監修の手間を考えると、品質の整った原型を用意して、それから差分の作業に入った方が、出来上がりの品質も、制作時間も短くてすみます。顔や髪型を含む頭部に関しては、目や鼻、耳などパーツ単位では流用できることもありますが、顔のバランスや髪型などやはり原型モデルがあっても時間がかかります。

 そこで、まず、頭部をつくって原型として配布し、品質や作り込む度合いを提示して、他メンバーの頭部をスタッフが作業している間に、衣装を完成させて、また細部の違いをモデリングてもらいます。モデルが完成したあとも、細かい部分ですがデータの仕様や命名など社内規則で統一されているので、問題なくデータが整理されているかを確認して、後工程のリギング(キャラクターにアニメーションをつけるための仕込みを行なう作業)を担当するリガーさんやアニメーターさんに渡していきます。

 

ーーキャラ1体のモデリングを全て行なうとなったときに、どれぐらい時間がかかるものなのでしょうか。

武内:ざっくりとですが、キャラクター1体を作るのに一カ月くらいかかりますね。そのため、出番が多いキャラクターから優先的に作って、少ないキャラクターはデジタル作画をお願いすることもあります。

ーーでは、『BanG Dream! 2nd Season』のようにメインキャラクターが多い作品だと……?

武内:MVの制作が先だったので、その時点から各バンドのライブ衣装モデルは準備できていました。それでも2期全体で衣装違いも含めると80体超のキャラクターモデリングをしました。しかも1話で全員が集合して、制服やライブ衣装が見えてしまうので(笑)。

ーーやはり大変でしたか(笑)。制作をするなかで、モデラーならではの「ここが一番踏ん張りどころ」というポイントはありますか?

武内:キャラクターをモデリングする時って、100%元のデザイン通りには作れないんです。だからこそ、どうすれば見た目が一番良くなるのか、ということをどこまで突き詰められるかが踏ん張りどころでもあり、腕の見せどころですね。

ーー今回はアニメ「BanG Dream!(バンドリ!)」第一期(以下:一期)があったうえでの2nd Season(以下:二期)でしたが、流用できる部分もありましたか?

武内:一期でもCGパートはあったので、その時のモデルは提供いただいたんですが、今回の作品では「ゲームのイラストに近いテイストに」というオーダーがあったので、あまり一期からの流用は多くありません。

ーーサンジゲンの3DCGモデリングにおける強みってなんだと思いますか?

武内:自分が作っている感覚としては、基本的には昔のタイトルからの延長上にどの仕事もあって。視聴者の方からすれば、サンジゲンの作品って“サンジゲンっぽいな”と感じてもらえていると思うんですが、モデリングもその一つの要因なんです。『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』、『ブブキ・ブランキ』、『ID-0』と脈々と受け継がれ、改良されつづけた原型モデルが沢山あるのが強みだと思います。

ーー継ぎ足して作った秘伝のタレのようなモデリングだったんですね。『BanG Dream! 2nd Season』で難易度が一番高かったキャラクターは誰なんでしょう?

武内:各バンド色々な特徴があるので、なかなか難しい質問ですね。たとえばRoseliaだと、明らかに他のバンドに比べて情報量が多いんですよ。ライブ衣装についているブローチや、ボタンにも細やかな模様がついていたり、パスパレ(Pastel*Palettes)はフリルが大量にあって、そこにかなり時間をかけました。末端の部分でフリルが重なってたりすると、形的に干渉しやすいんですよ。現実のものは勝手にはみださないように動いてくれるんですが……。

ーーレイヤーを上手く作らないといけないわけですね。

武内:はい。モデリングの段階でできる限りのことはやって、あとはアニメーターのスタッフに頑張っていただく、という感じです。他のバンドの話もすると、Afterglowはみんな着てる服が違うからこその難しさがありましたし、ハロハピ(ハロー、ハッピーワールド!)は衣装に統一感があったんですけど、帽子と髪の毛の部分のバランスに苦労しました。特に苦戦したのは(松原)花音かもしれません。帽子をかぶらせるためには、髪の毛が帽子をはみださないよう“へこみ”を作らなければいけないんです。

ーーハロハピの場合は人型ではないミッシェルがいるわけですが、そこもやはり難しかったんですか?

武内:デフォルメされたキャラクターのため、頭を動かすと、体にめり込んでしまうので、苦労しました。

ーーそういう意味では、衣装に共通点のあるポピパ(Poppin'Party)はどうでしたか。

武内:ポピパは主人公で一番登場回数も多く注目度も高いので、、制服や私服、OP用の衣装など、衣装のパターンが他バンドより多いので、そこはしっかり作り込んでいます。普通の作品だと一番メインになるキャラから作業に入るんですが、今回は一番最後にポピパのモデリングをしたので、ある意味新鮮でしたね。それまでいくつもクリアしているからこそ、できることも増えてきましたし。モデルのチェックは、僕とスーバーバイザーの三村(厚史)さんが担当しているんですが、僕がリテイクを返したけど三村さん的にはOKだったり、またはその逆ということもあり、キャラクターの数を重ねるごとに”この辺りに気をつけよう”というポイントがどんどんわかってきたんです。

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