『悪魔城ドラキュラXセレクション』レビュー 現行機に蘇るシリーズ珠玉の名作、しかし注意点も

 2018年10月25日、KONAMIよりPlayStation 4ダウンロード配信専用ソフトとして、『悪魔城ドラキュラXセレクション 月下の夜想曲&血の輪廻』がリリースされた。

『悪魔城ドラキュラX・セレクション月下の夜想曲&血の輪廻』プロモーションムービー

 本作は1993年10月29日にPCエンジンSUPER CD-ROM2用ソフトとして発売された『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻(ロンド)』、その続編で1997年3月20日にPlayStation、1998年6月25日にセガサターン向けにも発売された『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』のカップリング移植作である。

 1986年9月26日、ファミリーコンピュータディスクシステム用ソフトとして産声をあげた『悪魔城ドラキュラ』は、ゴシックホラーの世界観と鞭を用いた独特の攻撃アクションと高い難易度、そしてメロディアスな音楽で好評を博し、KONAMIを代表する人気シリーズの一つとなって多くの続編が制作された。

 特に『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻(ロンド)』、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』はシリーズ屈指の名作との呼び声が高い作品で、前者は2007年11月8日にPlayStation Portable向けに『悪魔城ドラキュラX クロニクル』なるフルリメイク版も発売されている。

 此度のセレクションは、二作共にオリジナル版を一つにした構成となっている。

 ただ、ちょっとした注意点がある。詳しくは追って紹介しよう。

正統進化を目指した新作と新境地開拓に挑んだ続編

 ゲーム内容は二作共に異なる。

 時系列順として『血の輪廻』から解説すると、こちらは横スクロールのステージクリア型アクションゲーム。主人公のリヒター・ベルモンドを操作し、宿敵ドラキュラ伯爵の打倒と囚われた女性達を救出するため、全部で9以上に渡るステージの攻略に挑むというものだ。

 リーチの長さが特徴の鞭攻撃、そちらで対処できない場面をカバーする「サブウェポン」など、ゲームの骨組みは初代『悪魔城ドラキュラ』を踏襲。また、シリーズ第三作『悪魔城伝説』からルート分岐が採用されている。しかし、今作の分岐はステージ内に隠されたルートを辿ることによって次のステージ、ボスが変わる探索色を押し出した独自のもの。関連して途中経過の記録(セーブ)、ステージセレクトの機能も追加され、クリアしたステージを後から再プレイできるようにもなっている。

 更にプレイヤーセレクトシステムも導入。今作では主人公のリヒター・ベルモンドともう一人、「マリア・ラーネッド」という少女もプレイヤーキャラクターの一人として名を連ねており、一風変わったアクションを楽しむことができる。

最初からは使えない。あるステージで救出する必要がある。

 他にサブウェポンの真の力を解き放つ必殺技「アイテムクラッシュ」が導入されているほか、今作は大容量のCD-ROM用ソフトとして発売されたのもあり、フルボイスによるビジュアルシーンが挿入され、演出面も強化。まさに正統進化以上の仕上がりで、シリーズ10作目だからこその気合の入れようが伝わってくる作品となっている。

 続く『月下の夜想曲』は『血の輪廻』から4年後の世界を舞台にした作品。内容は全くの別物で、横スクロールのアクションゲームなのは共通しているが、ステージクリア型ではなく、探索型。シリーズでは、1987年にファミリーコンピュータディスクシステム用ソフトとして発売された『ドラキュラII 呪いの封印』以来の採用で、広大な悪魔城内部に点在するエリアを隈なく探索し、城の謎を解き明かしていくものとなっている。

 システム周りは先述の『呪いの封印』とは趣が異なる。特に象徴的なものが経験値とレベル、装備によるステータス変化と言ったRPG要素。これに関連して経験値でレベルを上げ、その強さを活かして押し切る選択肢も用意され、アクションゲームに苦手意識のあるプレイヤーにも門戸を開いた難易度に刷新されている。また、操作性も一新され、ジャンプ後の空中制御が自由に行えるようになっている。

 武器が鞭でないのも特色。主人公の「アルカード」は剣を初期装備とし、俊敏な攻撃を行うことができる。また、ゲームが進むと剣以外の武器も登場し、バリエーションに富んだ攻撃を繰り出せるようになる。

主人公アルカード役には置鮎龍太郎氏を起用。ちなみに2017年より、Netfilixで独占配信中のアニメ『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』では、主人公のトレバー・ベルモンド役を務めている。

 他にキャラクターデザインも小島文美氏による耽美的なものに一新されたほか、『血の輪廻』のようなビジュアルシーンは一部しかないものの、フルボイスも継承。あらゆる面で、今までとは違うドラキュラを体現した作品になっている。当然ながら、ゲームの仕組みが違うだけあってボリュームも倍増しており、長く、じっくり楽しめることも特徴だ。

関連記事