それにしても、全17話まである本作だが、ひとつひとつのエピソードはわずか5分少々。その中に丁寧にも「前回までのあらすじ」と決まりの形の「オープニング」、そして「次回予告」が織り交ぜられているので、物語の長さとしてはすべて合わせたところで少し短い映画1作品といったところだろう。放送時間枠が決まっているテレビドラマから、時間の枠に特段の制限が求められないVOD配信サイトのドラマが新たな潮流となり始めている中、さらにフレキシブルな形でドラマの新しい手法が現れたわけだ。

　たしかに、この長さであればいつでもどこでも観ることができる動画配信のメリットを、さらに高めることができる。ひとつひとつのエピソードに前後とのつながりを設けていることからも、それらを連続して一気に観られるという可能性よりも、1話ずつ観られる可能性を視野に入れていることがわかる。

　もちろん通常の1時間ドラマであろうと2時間の映画であっても、好きなタイミングで停止と再生を繰り返すことができる中で、あえて作り手側が物語の切れ目を（極めて短いスパンで）提示しているというのは、作品が持つインパクトとキャラクターの強さをある種の刹那的なものとして見せようとしているのではないだろうか。いずれにしてもこの『＃アスアブ鈴木』という作品は、作品の中身だけでなくそれを提供するフィールドにも目を向け、両方に新しい何かを提示しよういう気概にあふれた、ドラマ界のエポックメイキングな作品になるのかもしれない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■配信情報
『＃アスアブ鈴木』
YouTubeにて毎週金曜 最新話配信（全17話）
出演：松本穂香、西山繭子、田中偉登、広山詞葉、谷のばら、大沼遼平、木村知貴、芦原健介、中沢健、三坂知絵子、AKI、松井理子、鳥谷宏之、大野大輔、根矢涼香、加藤啓
監督・脚本：大野大輔
製作：AlphaBoat合同会社