『おっさんずラブ』なぜネットで盛り上がった? キーワードは“二次創作の許容”

 先週、最終回を迎えた『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)は土曜夜の11時15分から放送される深夜ドラマでありながら、大きな盛り上がりを見せた。

 ツイッターのトレンドで一位を獲得し、SNS上で大きな話題となっていたが、番組サイドも、黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が主人公の春田創一(田中圭)を盗撮したInstagram「武蔵の部屋」を立ち上げ、イラスト投稿サイトPixiv(ピクシブ)でイラストを募集していた。また、公式サイトの募集ではないが「文章、写真、イラスト、音楽、映像などを手軽に投稿できるクリエイターと読者をつなぐサービス」を銘打つnoteでは本作の感想を募集していた。

 WEBサービスを使って、連ドラを盛り上げる試みはインターネット黎明期からあるものだ。その傾向は大きくわけて二種類。

 一つは、ホームページにインタビューや撮影風景を載せたり、裏設定やサブストーリーを掲載するという作品世界を補完するものだ。「武蔵の部屋」もこれにあたる。『トドメの接吻』等の日本テレビ系のドラマは、有料動画サイトHulu(フールー)でスピンオフを放送している。

 もう一つはファンが二次創作を楽しむ行為で、それ自体が大きな宣伝効果を持つ。これは公式ホームページが場を用意するものもあれば、ファンが自主的に盛り上がることもある。

 『踊る大捜査線』(フジテレビ系)や『ケイゾク』(TBS系)といった90年代後半に生まれた刑事ドラマは、細部が作り込まれたマニアックな作品だったため、視聴率は当時としては決して高くはなかったものの、作品を繰返し見て、細部に言及するマニアックなファンが登場し、彼らの後押しによって視聴率とは違う熱狂を獲得。放送終了後もレンタルやビデオセールスが盛り上がったことで劇場映画が制作されて大ヒットするという既存の視聴率競争とは違う評価軸を生み出した。

 こういったファン・コミュニティの盛り上がりは『新世紀エヴァンゲリオン』を筆頭とするアニメの消費に近いものだ。イラスト等の二次創作の盛り上がりも含めて、日本のテレビドラマの消費形態は、アニメや漫画の流れを後追いしているところが多い。

 2000年代後半にYouTubeやニコニコ動画といった投稿動画サイトが普及した際、アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』が無数の動画サイトにファンによって投稿された。著作権違反となる行為だったが、大きな宣伝効果となり、多くの視聴者を獲得することができた。投稿された動画には、視聴者が作品の名場面を編集して作ったMAD動画や、エンドロールでヒロインのハルヒたちが踊るハルヒダンスを視聴者が真似して踊る姿を撮影した動画もあった。

 テレビドラマでは2016年の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で星野源の「恋」に乗せて出演者の新垣結衣や星野源が踊る「恋ダンス」がネットで話題となったが、アニメではすでに10年以上前に起きていたことだ。

 2010年代になると、Twitter等のSNSが普及し、リアルタイム性が強まる。そんな時代の変化とマッチしてもっとも盛り上がったのが『ゲゲゲの女房』(NHK)以降の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)だろう。週6日間、1話15分のドラマを半年かけて放送し、BSも含めると一日に4回放送される朝ドラはSNSと相性が良かった。毎日、少しずつ放送される朝ドラの感想を見た別の視聴者がその話題に反応して、一度見てみようかなぁとなる。ヒロインの行動に対するネガティブな批判や時代考証に対するツッコミもあるが、そういった賛否も含めて話題となる。また、劇中のキャラクターのイラストをTwitterに投稿する人も多く、俳優が演じるキャラクターを二次創作で消費する傾向が本格的に可視化されていったのも、朝ドラからだった。

 後発の『おっさんずラブ』は、BL(ボーイズラブ)ということもあってか、漫画やアニメのようなオタクコンテンツで定番となっている二次創作的な消費を推進することで、作品を広めることに成功した。

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