『VIVANT』は堺雅人のためのドラマだった? 乃木、F、リュウの“3つの顔”を成立させた手腕

 堺雅人が主演を務める日曜劇場『VIVANT』(TBS系)が、11月8日に第2シーズンの最終回を迎える。2023年の第1シーズンから続く物語は、別班、公安、テントに加え、新たな勢力である中国の諜報組織シンシーも登場し、さらに複雑さを増した。海外ロケや巧妙に張り巡らされた伏線、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、二宮和也、役所広司らの競演も見どころだが、ここまで観てきて強く感じるのは、『VIVANT』が堺雅人のためのドラマだったということだ。

 まず振り返りたいのが、第1シーズン序盤の乃木憂助だ。丸菱商事の社員である乃木は、巨額の誤送金を回収するためバルカ共和国へ向かうが、現地で爆破事件に巻き込まれ、公安警察の野崎(阿部寛)らに助けられながら逃走を続けることになる。相手の顔色をうかがうような話し方や、何かあるたびに慌てふためく姿からは、どこか頼りなさが感じられた。『半沢直樹』(TBS系)で相手を圧倒するような力強いせりふ回しを見せてきた堺だけに、乃木の気弱な振る舞いはなおさら印象的だった。そうした堺のこれまでのイメージとの落差も、序盤の乃木を特徴づけていたように思う。

 ところが第4話で、乃木が自衛隊直轄の非公認組織「別班」の一員であることが判明する。テントの協力者である山本(迫田孝也)と対峙した際には、それまでの穏やかな表情が一変。鋭い視線で相手を威圧し、容赦なく情報を聞き出そうとする姿は、序盤の気弱な会社員とはまるで別人だった。ここで前面に現れたのが、乃木のもう一つの人格「F」である。ただし、それまでの乃木の優しさがすべて偽りだったわけではない。人に柔らかく接する乃木と、任務のためには冷徹な判断を下すF。堺は目つきや声の調子を変えることで、その違いを鮮やかに描き分けている。声の張り方や姿勢まで違うため、乃木とFのやり取りは、1人の俳優が演じているとは思えないほど、自然な会話として成立している。

 さらに興味深いのは、乃木とFが常に意見を同じくするわけではないことだ。合理的な判断と、誰かを守りたいという乃木の感情がぶつかるとき、2人のやり取りは葛藤を目に見える形にしてくれる。心の中の迷いをモノローグで説明するのではなく、堺自身にもう1人の自分を演じさせることで表現する。こうした作りも『VIVANT』が堺の演技力を前提としたドラマであることを印象づけている。

 第2シーズンでも、乃木の内面が見える場面は少なくない。黒須(松坂桃李)ら別班員の救出を断念するよう命じられながら、乃木は弟のノコル(二宮和也)に協力を求める。第1シーズンではテントを追い詰めた立場だけに、すぐには頼み事を切り出せない。諜報員としては優秀でも、家族との関係には不器用なところがある。第20話で仲間の救出に向かった乃木にも、仲間を失いたくないという切実さがあった。

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