『GTO』から『いろはの恋は時代をかける』へ 上白石萌音が更新する“型破りな教師”像

 そんな中、いろはが教室にもたらすのは、学ぶことそのものへの好奇心だ。子どもたちの好奇心を引き出すだけでなく、教師であるいろは自身が、新しい発見に誰よりも目を輝かせているのだ。

 例えば、円形の面積を求める授業。いろはは初めから公式を教えるのではなく、子どもたちに実際に円に触れさせ、どうすれば面積を求められるのかを考えさせる。答えを教えるよりも、その答えにたどり着くまでの面白さを、一緒になって味わっている。

 江戸時代、女性であることや身分を理由に、思うように学ぶことができず、教師になる夢もかなえられなかったいろは。だからこそ、知りたいと思ったことを自由に学べる令和の教室は、いろはにとって驚きと喜びに満ちた場所なのだろう。

 いろはの学ぶことへの貪欲さは、同僚の教師とのやり取りにも表れている。第3話では、タブレットを使わずに授業を進めるいろはに対し、生琉(向井康二)が現代の教育事情を説く場面があった。

 「タブレットなんて所詮道具です。でも今の時代、使えるのが基本なんです。息するのと同じように使えなきゃ見下される」。生琉はさらに、家庭によっては高価なタブレットを購入できず、学校で触れる経験が子どもの可能性を広げることもあると説明する。

 印象的なのは、それを聞いたいろはの反応だ。タブレットを「ただの道具」と軽く考えていたことを素直に反省し、生琉の言葉を受け入れる。いろはは、教師だからといって知らないことを恥じたり、自分の考えに固執したりせず、生徒からも同僚からも素直に学ぼうとする。教える側と教わる側。そんな教室の当たり前の境界を、いろはは軽やかに越えていく。そんな姿もまた、いろはならではの型破りさなのだ。

 そして、もう一人のいろは、現代の小学校教師・梨木彩葉の存在にも触れておきたい。彩葉もまた、子どもたちの学びに強い情熱を注いでいた。全学年の1年分の授業をノートに書いて準備し、採点したテストには一人ひとりにイラストを添える。子どもたちに尽くそうとする一方、授業以外の膨大な業務や学校の現実に追い詰められ、心を病んでしまった。

 いろはと彩葉は、どちらも子どもたちに学ぶ喜びを伝えたいと願っていたはずだ。けれど、一方は教師になることさえ許されず、もう一方は、教師になったことで苦しむことになった。時代が教師に求めるものが増え続ける一方で、教師自身が学ぶことを楽しみ、子どもたちと向き合うための時間は、どれほど残されているのだろうか。だからこそ、令和の教室で目を輝かせるいろはの姿が、これほどまぶしく映るのかもしれない。

 今のところ、彩葉の魂がどこへ行ったのかは明らかになっていない。2人の教育観が今後どのようにつながっていくのかも、注目したいところだ。教師になれなかったいろはと、教師であり続けることに苦しんだ彩葉。2人の物語が重なったとき、私たちが教師に求めてきたものも、また違って見えてくるのかもしれない。

■放送情報
火曜ドラマ『いろはの恋は時代をかける』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:上白石萌音、向井康二、山中柔太朗、大森元貴、剛力彩芽、大西礼芳、白山乃愛、YOU、イモトアヤコ、保田圭、竹財輝之助、柳ゆり菜ほか
脚本:長田育恵
演出:田中健太、福田亮介
音楽:Ken Arai
主題歌:MISIA「さよならばっか」
プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子
協力プロデューサー:阿部愛沙美
編成:渡邊晏夏、関川友理
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitoki_tbs/
公式X(旧Twitter):@koitoki_tbs

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