『ブラッサム』井浦新の細やかな感情の機微 豪胆な編集長を支える“静”の役割を担う

 井浦新が、NHK連続テレビ小説『ブラッサム』の第5週から出演している。『なつぞら』以来、約7年ぶりとなる朝ドラで演じるのは、文芸雑誌『首都公論』の副編集長・山中勇三。豪胆な編集長・黒崎大三郎(遠藤憲一)の右腕として、雑誌を支える敏腕編集者だ。

 本作は、作家・宇野千代をモデルにした主人公・葉野珠(石橋静河)が生きる道を切り開いていく物語。第5週では、東京に移り住んだ珠が西洋レストラン「悠樂軒」で働き始め、黒崎や山中と出会った。仕事の傍ら小説を書き続ける珠にとって、文壇の大物との出会いは夢に近づく機会となる。

 1990年代から映画やドラマで多彩な役柄を演じてきた井浦。是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』(1998年)では、死者が大切な思い出を選ぶ手助けをする望月隆を演じ、『ピンポン』(2002年)では、無口で感情を表に出さない卓球選手・月本誠(通称スマイル)役を好演した。感情をあまり表に出さないスマイルだが、井浦は目線や声のわずかな変化で、彼が抱える迷いや葛藤を丁寧に表現していた。人の心の機微を表現するのが、実にうまい俳優だ。

 ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の法医解剖医・中堂系も印象深い。口が悪く協調性もない中堂は、同僚からすれば扱いづらい存在だ。だが、その怒りの裏には恋人を奪われた悲しみがある。井浦は刺々しい言動の中に、喪失感を抱えた人間の脆さをにじませた。反対に『最愛』(TBS系)の弁護士・加瀬賢一郎は、梨央(吉高由里子)を優しく見守り、献身的に支える人物。柔和な笑顔には安心感がある一方、梨央を守る思いが強すぎるあまり、どこか危うさも漂っており、頼りがいのある大人の男性というだけでは片づけられない役だった。

 NHKの出演作で言えば、大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)の藤原道隆も忘れがたい。穏やかだった道隆は、父の後を継いで権力を手にすると、次第に傲慢さを見せ始める。病に侵されてからは余裕を失い、家の繁栄に執着する姿が痛々しくもあったが、井浦は一人の人物が変わっていく過程を、表情や話し方で説得力を持って見せた。

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