『バッド・ルーテナント:トウキョウ』は“クズで自堕落”な小栗旬が楽しめる贅沢な映画

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、この原稿の締切を大幅に破ってしまった、映画に出てくるクズを見るとほっとする住本が『バッド・ルーテナント:トウキョウ』をプッシュします。
『バッド・ルーテナント:トウキョウ』

東京・歌舞伎町を舞台に主演・小栗旬演じる悪徳刑事=バッド・ルーテナントが暗躍する日米合作映画『バッド・ルーテナント:トウキョウ』。小栗のバディ役にはハリウッドのトップ女優リリー・ジェームズを、捜査対象となるセレブ女性役には世界最大のプロレス団体WWEのトップスターであるリヴ・モーガンを迎え、世界中にファンを持つバイオレンス映画の巨匠・三池崇史がメガホンを握る豪華な布陣も話題だ。しかし、この映画最大の特徴は、豪華なプロダクションとは裏腹に(?)「ほとんどクズしか出てこない」「ほとんどセックス&バイオレンスしか出てこない」ことにあるように思われる。
主人公の矢吹恭二(小栗旬)は暴力団とズブズブの関係にある刑事で、普段からドラッグ三昧に博打三昧。多額の借金を抱えており、妻子からも逃げられてしまう。
そんな矢吹が2つの猟奇的な連続殺人事件を追うことでストーリーが駆動していくのだが、体感で言えば前半30分ほどは矢吹のクズで自堕落な生活ぶりがひたすら描かれるところから映画は始まる。小栗といえば、現在放送中のドラマ『LOST10』(TBS系)でも、クズとは言わないまでもかなり胡散臭い保険調査員を演じており、いずれも一筋縄ではいかないその姿が独特の色気を漂わせている。

そして、ようやくストーリーが本格的に動き出すところで登場するのが、ある人物を追って来日したFBI捜査官グエン(リリー・ジェームズ)である。彼女だって決して正義のヒロインではない。初登場シーンで挿入される、彼女のバックの曇天の空に大量のカラスが舞い飛ぶショットはとくに印象的だ。やけに口が悪く、喫煙所で小栗とすこし話してすぐに「こいつが私のバディだ」と確信するところからもすでに彼女のダーティな雰囲気が漏れ伝わってきているのだが、視覚的にもわかりやすく悪側にいることを示すのである。実際、のちほど彼女が携わっている捜査は政治的にかなりきな臭いものであり、その仕事を引き受けざるを得ない彼女自身にもなにか後ろ暗い過去があることが示唆される。
その他、主な登場人物は暴力団関係者、薬の売人、薬物中毒者などで構成されている。野村周平演じるロン毛のこれまた胡散臭い売人が、悪がはびこるこの街ではむしろお人好しの部類に入るくらいに見えてくる(このキャラクターのすっとぼけた感じがなんとも言えず良い)。そして、そんな彼らが繰り広げるのが、ひたすらセックス&バイオレンスの世界である。

三池監督が描くセックス&バイオレンスは、ご存じのとおりケレン味たっぷりだ。挙げだすときりがないが、最も印象的だったのは終盤に出てくる複数の車を使ったアクションシーン。その途中で、ある人物が車と車のあいだで押しつぶされて絶命するのだが、少し引きの画角から、押しつぶされる人物が車の影に隠れるかたちでその様子が収められたかと思うと、一瞬の間をおいて大量の血しぶきが車のあいだからビュッと上方に向けて飛び出す。思わず笑いを上げずにはいられない痛快な最期である。そうやって、この映画はこの世界を笑い飛ばしているように見える。
この映画にシリアスな展開が全くないわけではない。小栗演じる矢吹はかつて相棒を裏切って死なせてしまったことにトラウマを抱えているし、後半ではある登場人物の台詞をきっかけに「お前はなんのために生きているのか?」が複数の登場人物に対して繰り返し問われることにもなる。しかしながら、半分ネタバレを覚悟で言えば、最終的に矢吹は実に身も蓋もない結末を迎える。途中で現れたトラウマや問いは、ラスト近くでもう一度映される曇天の空とそこを飛び交うカラスたちとともに、どこかに雲散霧消してしまうのだ。
豪華な俳優陣と舞台を使いながら「この世界に意味なんてないよ」と嘯く、ただ観ていて楽しいだけの映画。極めてポジティブな意味で、これこそ最高の“贅沢”の1つだと思わせられる一本である。
■公開情報
『バッド・ルーテナント:トウキョウ』
全国公開中
出演:小栗旬、リリー・ジェームズ、間宮祥太朗、リヴ・モーガン、野村周平、西野七瀬、向里祐香、岩田剛典、渡邊圭祐、中野英雄、村上淳、國村隼、舘ひろし(特別出演)
監督:三池崇史
脚本:天願大介
主題歌:Ado「Raven Sky」(UNIVERSAL MUSIC / Capitol Records)
製作:ジェレミー・トーマス、サム・プレスマン、北島直明、坂美佐子
製作幹事:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
制作プロダクション:OLM
配給:(日本)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、(北米)NEON
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