『90メートル』が伝える大切な人と生きる日々の愛おしさ 余韻が深まるメイキング映像も
山時聡真と菅野美穂がW主演を務めた映画『90メートル』のBlu-ray&DVDが10月2日に発売された。
本作は、人生の岐路に立つ高校生の息子と難病を抱えながら我が子の希望ある明日を願うシングルマザーの揺るぎない愛を描いたヒューマンストーリー。『少女は卒業しない』『か「」く「」し「」ご「」と「』などで知られる中川駿が監督を務め、中川監督自身と自身の母を重ね合わせてキャラクターを作り上げ、脚本も手がけた。
難病を抱えた母・美咲と2人で暮らす高校3年生の藤村佑を山時、佑の母・美咲を菅野がそれぞれ演じたほか、美咲が利用する介護施設のケアマネジャー・下村香織役で西野七瀬、佑が所属するバスケ部のマネージャー・松田杏花役で南琴奈、バスケ部員・大平翔太役で田中偉登らが出演した。
本編は、バスケに打ち込む幼い頃の佑と彼を熱心に応援する美咲(菅野美穂)の元気な姿から始まる。試合に負け、チームメンバーたちが大泣きしていても泣かなかった佑に、美咲は優しく声をかけるが、佑は小さく返事をしただけで表情を変えなかった。感情をうまく表に出せない子とその子の成長を願う母。ありふれたようで尊い親子の時間が描かれたのち、場面は一転する。
チャイムのような音が鳴り響く夜の家の中。受験を間近に控えた佑(山時聡真)は勉強しながら寝てしまっていたようで、チャイムが何度か鳴り響いてから気がつき、1階へ降りていく。そこには介護用ベットに横たわり、かつての快活さは感じられなくなってしまった美咲の姿が。佑は母を起こし、車椅子に乗せ、トイレの介助をし、同じ手順でベットへ。慣れた様子の佑だがその顔には疲れが滲んでいた。
病気は、皆にある日“突然”襲いかかってくる。冒頭では元気だった美咲が、いつから、どうして、このような状態になったのかなどが丁寧には描かれず、美咲への24時間ケア体制が整ったことで、“高校生”としての時間を少しずつ取り戻していく佑の回想という形で、親子の辿ってきた日々が断片的に思い出されていく。
バスケが好きだった佑が、いつの間にかバスケ部を辞めざるを得なくなり、勉強をする暇もあまりなく志望校はD判定で望みが薄い状態になってしまう現実。そして、美咲がお気に入りのコップを持つことができなくなり、ふとした瞬間に割ってしまった皿を拾うのに何分もかかるようになってしまう日常の変化。中川監督の半自伝的映画でもある本作は、そんな、日常を塗り替える病気の“容赦なさ”がリアルに描かれている。
だからこそ、不器用だけれどお互いを思いやる2人の優しさが一筋の柔らかい光のように物語全体を包み込んでいく。「ちゃんと勉強できてる?」「ご飯は食べられてる?」「忘れ物はない?」 病気でたどたどしくしか話せなくなっても、美咲は小言のようなことしか言わない。佑もそれにぶっきらぼうにしか返せない。だが、その裏には言葉にできないほどの大きな愛があることを本作は静かに、でもしっかりと伝えてくれる。