三宅裕司×ブレント・オリアン、日米の映画観を語り合う 戦争をエンタメとして描く意味

オリアンが異文化に触れて気づいた「人間はみんな一緒」

(左から)三宅裕司、ブレント・オリアン

――脱走兵を演じるうえで、ブレントさんが感じられたことはありますか?

オリアン:脱走するのは「臆病」か「勇気がある」のか、どっちなんだろうとずっと考えています。当時の歴史について調べたところ、脱走する人数がとても多かったことを知ったのですが、それにはどんな理由があるのか、台本を読みながら考えています。

三宅:台本を読んで米兵の気持ちをそういうふうに解釈してくれのはすごくいいなと思いました。今の我々は戦争に行ったことがないのでわからないけれど、おそらくものすごく過酷ですよね。でもだから逃げ出すんじゃなくて脱走することによって自国のアメリカに抗議した人たちもいるそうです。今回の物語では、そうした米兵が脱走し、日本の田舎のおばあちゃんや子供たち、また自由を謳歌しているヒッピーの人たちなど、いろいろな人と出会います。そこで対立したり理解し合ったりして愛や友情が生まれていくわけですから。最初の気持ちをしっかり掴んでいればきちんと演技できるってことですよね。

オリアン:稽古を頑張ります。頑張るしかないです。

『愛と友情の大脱走〜ラブ&ピースフォーエバー〜』ポスター

――ブレントさんも、異国の地である日本に来てさまざまな日本人と交流するという点では、米兵と同じだと感じます。日本に来てどんなことを考えましたか?

オリアン:入国する前から、日本には古典的な文化と現代的な文化の両方があるということは知っていましたが、いわゆる日本オタクというタイプでもなかったです。寿司、侍、ピカチュウ、ニンテンドーというような認識で(笑)。アメリカに生まれ育った僕は、日本に興味があったというよりは、外の世界に興味があったんです。まず韓国に行き、そこから日本に来ることになり、日本で何ができるかを探りながら9年になります。

三宅:日本の何が面白かった? 日本へ来て驚いたことはある?

オリアン:驚いたのはアメリカと考え方が全く違うことです。アメリカは行動するのがめちゃくちゃ早い。「これやりましょう」となったらみんながすぐに動く。日本の場合はまず情報収集して、考えて、対案を出して、根回しして、みんなの意見がまとまったらようやく始める。それが全然違うなと。

三宅: あーなるほど。

オリアン:すぐやるのもじっくり根回しするのも、どちらもメリットがあると思います。反対に、国に関係なく飲み会に行くと人間はみんな一緒だなと思いました(笑)。誰もがおいしいご飯を食べたい、恋愛したい、眠りたいのは日本人もアメリカ人も同じでした。

三宅:あはは!(笑)

重いテーマをエンタメに昇華するSETの真髄

三宅裕司

――三宅さんは以前、1960年代の日本を舞台にした『ニッポン狂騒時代』(2024年)を上演しています。1960年代のカルチャーや歴史にも詳しいですよね。

三宅:そのときは実際にアメリカンポップスを日本に持ってきた訳詞家・漣健児さんの話で、「グッドタイミング」「可愛いベイビー」「ルイジアナ・ママ」などを劇中で使用しましたね。対して今回は、日本の歌謡曲を使用します。舞台の内容に沿って、伊東ゆかり、園まり、村田英雄、荒木一郎などの曲を選びました。また、フォークソングや反戦歌も歌われます。

オリアン:その頃の曲は現代でもカバーされていたりして、曲名や歌手名まではわからないと思いますが、耳にすれば「ああ聞いたことがある」となると思います。僕は、60年代の楽曲だとボブ・ディランが好きです。

三宅:いいよね。ヒッピーたちがボブ・ディランを歌ってもいいんだけれど、今回の選曲は日本の歌中心にしようかなと思って。当時を知っている人にはなつかしいものに、若い人たちには現代的なダンスを楽しんでもらえればと考えています。

――はじめにおすすめの映画を選んでもらいましたが、フェイバリットな一曲を教えていただけないでしょうか?

三宅:うわぁ、難しいですね。それこそ『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌「My Favorite Things」ですね。日本の曲だと……、加山雄三さんの曲全部。学生時代によく歌っていました。

オリアン:加山雄三さんは知らないです。でもこれも聞いてみたら、ああって思うかもしれません。

三宅:今度の公演では、曲名は伏せますが、ある曲でグッとくるように作ってあります。

――ブレントさんはこれを聞いたらグッとくる一曲はありますか?

オリアン:「Somewhere Over the Rainbow」です。『オズの魔法使い』の曲です。

三宅:すごいなそれは。SETは今年結成47年目ですけど、旗揚げ公演からそれがテーマソングです。

オリアン:え? そうなんですか。本当に?

三宅:うん。これは今回の公演、絶対に成功しますね(笑)。

三宅裕司

――最後に、公演を心待ちにしている方へメッセージをお願いします。

オリアン:人間の人生で取り戻せないのは「時間」だけです。だから舞台の数時間、私と同じ時間を一緒に過ごしてもらえたらとても光栄です。それで笑ったり泣いたり、楽しく歴史の勉強もできると思いますので、ぜひよろしくお願いします。

三宅:テーマは重く難しそうに感じられるかもしれませんし、真剣に向き合えば実際にその通りだと思います。でも、SETはそれをいかにエンターテインメントとして昇華させ、最後まで楽しく観ていただけるか。そして、観終わったあとに何かを考えていただけるか、ということを常に心がけています。ですから、まずは何も考えずに笑いにきてください。その結果として、いまの日本のことを少しでも考えてもらえたなら、私たちがこの作品を上演する意味があると思っています。

■公演情報
劇団スーパー・エキセントリック・シアター第64回本公演
『愛と友情の大脱走〜ラブ&ピースフォーエバー〜』
日程:10月29日(木)~11月8日(日)(全13公演)
会場:サンシャイン劇場
脚本:𠮷井三奈子
演出:三宅裕司
出演:三宅裕司、小倉久寛、劇団スーパー・エキセントリック・シアター
ゲスト出演:ブレント・オリアン
主催:劇団スーパー・エキセントリック・シアター ニッポン放送
企画・制作:(株)スーパーエキセントリックシアター、(株)アミューズ、(同)アタリ・パフォーマンス

■チケット情報
S席…8,500円
A席(土日祝)…7,000円
A席(平日)…4,500円 

※A席は土日・平日に関わらず2階席後方の席。
※開場は、開演の45分前
※未就学児の入場は不可
※車椅子の方はチケット購入前にチケットスペース(03-3234-9999)まで連絡を

■問い合わせ
公演:SETインフォメーション MAIL:info@set1979.com
チケット:チケットスペース 03-3234-9999(10:00~15:00 ※休業日を除く)

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