三宅裕司×ブレント・オリアン、日米の映画観を語り合う 戦争をエンタメとして描く意味

 劇団スーパー・エキセントリック・シアターの第64回本公演ミュージカル・アクション・コメディー『愛と友情の大脱走~ラブ&ピースフォーエバー〜』にゲスト出演するブレント・オリアンと、SET主宰の三宅裕司。公演を前に、ふたりが好きな映画や、お互いにおすすめしたい作品について語り合ってもらった。

 東京で9年間、バイリンガルナレーター兼俳優として活動しているブレント。日本語が堪能だが、ちょっとおちゃめなところもある。三宅は座長ならではの懐の深さで終始やさしく彼の話を聞く。『愛と友情の大脱走~ラブ&ピースフォーエバー〜』は軍から逃げてきた米兵が日本の人たちと交流する物語だが、今回の対談そのものが、まるで温かな異文化コミュニケーションの場となっていた。

映画談義から見えた二人の温かな関係性

(左から)三宅裕司、ブレント・オリアン

――最近ご覧になったお気に入りの映画や、お互いにおすすめしたい映画を教えてください。

三宅裕司(以下、三宅):好きな映画は『MERCY/マーシー AI裁判』『クライム101』。おすすめしたいのは『荒野の七人』です。僕くらいの年齢になると、好きな映画がたくさんありすぎて、なかなか2作品に絞れない。だから今年観て好きだった2本を選びました。『クライム101』はクライムサスペンスです。サスペンスといっても凄惨な殺人がなく、それでいてハラハラドキドキで、最後は感動する。義賊的な主人公がカッコいいんです。

ブレント・オリアン(以下、オリアン):タイトルは聞いたことあるんですけど、まだ観られてないです。

三宅:最近の映画ってすぐ上映が終わっちゃうからね。

オリアン:そうなんですよね。配信でチェックしてみます。

三宅:『MERCY/マーシー AI裁判』は人間をAIが裁判することになったという近未来の物語です。90分という制限時間のなか、容疑者役のクリス・プラットがAIの判決を覆して無実を立証できるかという、これもサスペンスですね。最後、AIが自分の気持ちを語る場面がすごくいいんです。何を言うかは、ネタバレになるから言わないですが(笑)。

オリアン:それもまだ観てないです(笑)。

三宅:あと、ぜひ観てほしいのは『荒野の七人』。黒澤明監督の代表作のひとつ『七人の侍』を西部劇にした映画で、この映画をきっかけに出演者たちがどんどん売れていったんですよね。スティーヴ・マックイーン、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソン……。みんなカッコいいんです。黒澤明監督は知ってます?

オリアン:もちろんです! 『七人の侍』はアメリカでもとても有名な映画です。でも実は僕は通しで観たことはなくて……。

三宅:え?

オリアン:名場面が時々、テレビ番組などで紹介されることがありますよね。そういうので部分的に観ただけなので、ちゃんと観なきゃと思います。

三宅:それは観たとは言わないよね(笑)。ぜひ1回、通しで観てね。

オリアン:観ます(笑)。

三宅裕司

――ブレントさんが選んだ3作はどれも三宅さんへのおすすめ作品だということですね。

オリアン:まずは『紅の豚』。日本人にスタジオジブリの映画をおすすめするのもおかしな話なんですが(笑)。

三宅:いや、僕は『紅の豚』は観てないかもしれない。

オリアン:僕の一番好きな映画です。映像も音楽も素敵なんですよ。興味深いのは、ストーリー構成がアメリカの映画と違って複雑なんです。アメリカ映画はシンプルに緩急がついていて、山場がわかりやすく大きく作られているものが多いですが、『紅の豚』は違っていておもしろいです。

三宅:アメリカ映画は昔からハッピーエンドが多いですよね。

オリアン:そうですよね。あとの2作は洋画作品で『トゥルーマン・ショー』と『エンド・オブ・ザ・ワールド』です。

三宅:『トゥルーマン・ショー』は大ヒットした有名な映画ですね。でも僕も通しでは観てないかもしれない(笑)。

オリアン:(笑)。僕はコメディアンがドラマをやるのが大好きなんです。とくにジム・キャリーが好きで。『トゥルーマン・ショー』を観たときは、夢中になって1週間ぐらいは映画のことで頭がいっぱいでした。『エンド・オブ・ザ・ワールド』は文字通り世界が終わる話ですが、コメディーかつヒューマンドラマなところが魅力です。

三宅:コメディーかつドラマというのはSETのお芝居と似ていますね。

――二人が知り合ったきっかけを教えてください。

三宅:『愛と友情の大脱走~ラブ&ピースフォーエバー〜』の出演者オーディションのときに初めて会いました。60年代の日本にいる脱走アメリカ兵を演じる俳優を探そうと思って、日本人よりも背が高くて、日本語ができて稽古場でのコミュニケーションに難がなく、日本の女性歌手が惚れる設定なので、甘いマスクの人がいいなと。彼にはそういう条件がすべて備わっていたし、やる気も感じました。

オリアン:外国人が日本で活動するとたいてい似たような役を求められるんです。例えば、屈強で真面目な軍人のようなタイプやとてもセクシーなイケメンなど。それが今回は脱走兵と聞いて、複雑なキャラクターになるのではないかなという期待感がありました。非常にチャレンジングで楽しそうだと思い、オーディションに臨みました。

ブレント・オリアン

――ブレントさんは、台本を読まれてみて率直にどう思いましたか?

オリアン:日本語が流暢なわけではないけれど、日本語がまったく話せないわけではないという微妙なニュアンスを台本に書くのは多分とても難しいと思うのですが、その塩梅がうまく書かれているように感じました。外国人のキャラクターはデーブ・スペクターさんのように日本語が完璧な人か、逆に全く日本語ができないタイプに分かれます。でも今回は多分中間ぐらいのバージョンになっています。

三宅:ブレントさんが演じる脱走兵は日本でしばらく匿われていて外へ出られないから、室内でテレビばかり見ていて、テレビから学んだ日本語は話せるという設定です。だから時々、変なことを言ったり、当時流行っていた曲のワンフレーズを口ずさんだりします。ずっと英語でしゃべっていたあとに、日本語で言い放つ第一声がどういうものになるのか……、ぜひ注目していただきたいです。

オリアン:ベトナム戦争のことは教科書にも載っていて勉強したので、反戦運動している団体の存在もなんとなくは知っていました。ただ、脱走をお手伝いしている人たちがいたことは知りませんでした。

三宅:史実を元に作られたフィクションです。ベ平連とは「ベトナムに平和を!市民連合」の略ですが、作品に出てくるのはまた違うグループ(ベトナム平和維持・連絡市民団体)の設定です。僕が演じるのは永井和平というベ平連のメンバー。モデルは存在しないオリジナルのキャラクターです。こんな名前の人はなかなかいないよね。

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