『ヤニねこ』で世界に知られてしまった日本アニメの“多様性” 韓国人が衝撃を語る
原作とアニメ版における「汚さ」の描き方の違い
原作『ヤニねこ』は、にゃんにゃんファクトリーのメンバーのうち、主に荒井小豆、みき郎、おさとうの3人が、それぞれ1話ずつ担当するリレー形式で描かれている。同じヤニねこでも、顔つきや表情、身体の捉え方には少しずつ違いがある。それでも読んでいて別のキャラクターとして受け取ることはない。
アニメ版では松浦力がキャラクターデザインを担当している。原作では話数ごとに少しずつ違っていた顔や身体の形が、アニメではより揃っている。耳や髪型、顔の比率、体格、服装にも共通した基準があり、どのカットでも同じヤニねこだとすぐにわかる。
ただし、汚れまでキャラクターの身体に固定されているわけではない。髪の一本一本に脂っぽさを描き込んだり、服全体を汚れで覆ったりはしない。キャラクターだけを抜き出して見ると、線も色もむしろ単純なほうだ。
一方部屋はそれよりずっと複雑だ。壁や床、布団や生活用品には、長い時間をかけて積み重なった痕跡が残っている。ヤニねこの身体だけではわからなかった暮らしぶりが、扉が開いて周囲が見えた瞬間に現れる。
ヤニねこは比較的単純な形のまま動く。煙草を探す。だらしなく寝転がる。やるべきことより先に煙草を吸う。壁の染みや床の汚れ、布団の黒ずみは、その周囲に残り続ける。
一方、煙草はその空間の中で動き続ける。手から口へ運ばれ、やがて吸い殻が残り、煙が広がる。部屋にこびりついた痕跡と、いま新しく生まれる痕跡が同じ画面の中に並ぶ。
漫画では一つのコマに収まっていた染みやゴミ、煙草や煙が、アニメではそれぞれ違う仕方で残り、動く。部屋の汚れや物はそこに残る。煙草は手や口とともに動き、吸い殻はその場に残る。煙は絶えず形を変える。他の人物が顔をしかめる表情も、ヤニねこがどれほどひどい暮らしをしているのかを伝える。
脂っぽい髪や服の汚れといった細部をキャラクターそのものに固定すれば、身体が動くたびにその形も追い続けなければならない。だから『ヤニねこ』では、汚さのかなりの部分が身体の外側に置かれている。ヤニねこ自身を毎カット汚く描き込むより、汚れた空間の中で動かすほうに比重が置かれている。
その違いは、画面を見る順序にも表れる。全身が汚れで覆われていれば、キャラクターを見た瞬間に汚い人だと思うだろう。『ヤニねこ』ではまずヤニねこを見る。扉が開けば部屋を見る。煙草を吸えばその習慣を見る。別の人物が入ってくれば、その反応を見る。見続けるほど、どれほどひどい暮らしをしているのかが少しずつ見えてくる。
『着せ恋』を観ていた当時の私は作品の内側に入り込んでいて、作品が好きだと言うことが、いつの間にか自分の好みを語ることに変わっていた。『ヤニねこ』では、部屋や煙草、周囲の人物の反応を追いながら、ヤニねこがどう暮らしているのかを長く眺めることになる。見終わったあとにまず話したくなるのは、自分の好みではなく、ヤニねこがどんな暮らしをしていたのかということだ。
参照
※1. https://kai-you.net/article/94525/page/2
※2. https://thetv.jp/news/detail/1431087/
■作品情報
TVアニメ『ヤニねこ』
各配信サイトにて配信中
キャスト:夏吉ゆうこ(ヤニねこ役)、松岡美里(ヤクねこ役)、船戸ゆり絵(ハメねこ役)、清水彩香(カンサイねこ役)、井澤詩織(アルねこ役)、本泉莉奈(妹子役)、明智璃子(おちんぽ達郎役)、稲田徹(大家役)、中林新夏(字書きねこ役)
原作:にゃんにゃんファクトリー『ヤニねこ』(講談社『ヤングマガジン』連載)
監督:木村拓(スタジオ・レモン)
脚本:あおしまたかし
キャラクターデザイン:松浦力
美術監督:丸山由紀子(アトリエ・ムサ)、吉野翔太郎(アトリエ・ムサ)
色彩設計:太田ゆいは
撮影監督:米澤寿
編集:武宮むつみ
音楽:鈴木慶一
音響監督:濱野高年
音響制作:マジックカプセル
アニメーション制作:バイブリーアニメーションスタジオ
OP主題歌:忘れらんねえよ「なんもねえ」
ED主題歌:ネクライトーキー「煙とブルー」
©にゃんにゃんファクトリー・講談社/ヤニねこ製作委員会
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