Netflix『喧嘩独学』が好発進 フォロワー数至上主義に斬り込んだ、動画配信社会への風刺
Netflixシリーズ『喧嘩独学』が配信開始直後から国内ランキング上位にランクインし、話題を呼んでいる。
原作は韓国発ウェブトゥーン。陰キャの高校生・志村光太(鈴鹿央士)は、入院中の母親の治療費を稼ぐため、放課後もアルバイトに追われる日々。不良でありながら70万人超の登録者を持つ配信者・ハマケン(長田拓郎)から、動画の“ネタ”として扱われ、スクールカースト底辺の立場に置かれていた。
そんな中、同級生カネゴン(菅生新樹)との喧嘩が配信サイト「ニューチューブ」で誤って生配信される。泥臭い争いは予想外の拡散を見せ、一夜にして1000万再生を突破。「喧嘩は金になる」と気づいた光太は、カネゴンをカメラマンに据え、喧嘩系チャンネル『喧嘩独学』を立ち上げる。
光太に喧嘩の経験はない。頼れるのは、登録者0人の謎のチャンネルで配信される、ニワトリマスクの男「闘鶏」による喧嘩講座だけだ。一人で動画を観ながら心構えや技術を学び、それを実戦で試す。本作の真骨頂は、いじめられっ子の下剋上物語にとどまらず、不良との喧嘩がどこまでも「配信コンテンツ」として消費されていくところにある。戦いの勝ち負け以上に大事なのは、「どれだけ投げ銭で稼げたか」なのだ。
配信中の画面には、視聴者からのリアルなコメントが絶えず流れ続けるのだが、そこには純粋なエールや、弱者が強者に立ち向かう姿に勇気づけられたという人も……。しかし、調子に乗ったカネゴンの未成年飲酒が発覚すると、視聴者はあっさりと手のひら返し。光太やチャンネルに対する容赦ない誹謗中傷が浴びせられる展開は、顔が見えない人たちが、他人の意見に便乗して一斉に矛先を変えていくネット社会の危うさを浮き彫りにしている。
また、学校内ではSNSや配信でのフォロワー数=正義のように描かれていたのも特徴的。数字を持つ者ほど発言力を持ち、スクールカーストの頂点へと君臨していく。クラスの番長・ハマケンはその凶暴性を隠していい人キャラを演じ、架空のプレゼント企画でフォロワー獲得に励む。ハマケンのカノジョでインフルエンサーのルミ(浅川梨奈)は、フォロワー獲得に異常な執念を燃やし、そのために『喧嘩独学』のアカウント乗っ取りに加担してしまう。
配信者たちが周囲の迷惑を顧みず、ゲリラ的にライブ配信を行う場面も印象深い。クラス、店内、街中と周囲への配慮よりも再生数が優先される状況は、現実の配信文化が抱える問題とも重なり、衆人環視の中で派手な喧嘩が始まっても、止めに入る先生や警察官の姿が描かれなかったことにも、配信社会への風刺が強くにじんでいた。
しかし、こうした狂乱の世界にいても、光太は稼いだ金を一貫して母親の治療費に充て続ける。数字に振り回されていく周囲の人間とは明確に一線を画し、自分の本来の目的を見失わない。このブレない軸の存在があるからこそ、物語は成金ストーリーに留まらない安心感をもたらしている。
一方で、作中では光太や配信チームの“チャンネル愛”にも焦点が当てられていた。フォロワー数や投げ銭の獲得という明確な目標に向かう若者たちの姿は、エネルギッシュな青春ドラマとしても成立している。過激さと引き換えに注目を集める世界の中で、何を選び、どこに線を引くのか。その判断を視聴者にも委ねてくる点に、本作の面白さがある。
■配信情報
Netflixシリーズ『喧嘩独学』
Netflixにて世界独占配信中
出演:鈴鹿央士、見上愛、菅生新樹、濱尾ノリタカ、浅川梨奈、前田拳太郎、長田拓郎、関口メンディー、高山璃子、坂口涼太郎、前田公輝、名村辰、伊勢谷友介、佐野岳、オラキオ、大鶴義丹、片岡鶴太郎、原田美枝子、生見愛瑠
原作:『喧嘩独学』(PTJ cartoon company)
作画:金正賢(LINEマンガ連載)
監督:武内英樹
脚本:徳永友一
エグゼクティブ・プロデューサー:福井雄太(Netflix)
企画・プロデュース:稲葉直人
プロデューサー:前田茂司
企画制作:ミリアゴンスタジオ
制作プロダクション:楽映舎
製作:Netflix