松下洸平はなぜ視聴者を“虜”にするのか 『銀河の一票』で体現した危ういカリスマ性
第1話で、茉莉が託した告発文を星野幹事長に密告した後の流星のセリフは強烈だった。「もう誰も追い込まない国にする」という流星の理想は、のちにあかりたちが掲げる「誰も消えたくならない東京都」に通ずるものがある。
しかし、そこへ至るアプローチはまるで別物だ。理想を叶えるために多少の犠牲を払っても仕方ないという流星の思想は、ともすれば自己責任論に結びつく危うさがある。そのとき真っ先に取り残されるのは、ガラさんの相談所に駆け込まざるを得なかった人々をはじめ、あかりたちが歩み寄り、声をすくい上げようとしている人々ではないだろうか。
だが、流星というキャラクターを「冷徹な政治家」として片付けられないのは、彼の考え方に共感する人も少なくないと思うからである。生きることに必死で、誰かを思いやる余裕すら失われつつある時代。まずは自分が生き延びなければ――そんな切実さの延長線上にあるのが自己責任論だ。むしろ流星は、いまの時代の空気を誰よりも体現した人物なのだろう。
だが、かつては流星も“取り残される側”だった。会社が倒産した父から無理心中を迫られ、母が家を出ていったという凄惨な過去が明かされたのは第5話のことだ。それでも心折れなかったのが、流星の類いまれなる“強さ”である。彼は、たまたま見かけた若き日の星野に自らの“かわいそうな物語”を売り込む。そこから逆境を跳ね返した流星は、現在の日山流星へと至る。
「ちがうよ、茉莉ちゃん。お父さんは変わったんじゃない。変えたんだよ、自分が背負う物語を」
この流星のセリフを聞いたとき、蛭田直美の前作にあたる『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)を思い出した。区議会議員選挙への出馬を見据えた元テレビプロデューサーの一平(香取慎吾)が、イメージ戦略の一環として亡き妹の夫一家との共同生活を始める物語だ。4人の脚本家による共同執筆作だが、選挙編に突入した終盤の3話は蛭田が中心となって手がけている。
本作にも、選挙当選のために“物語”を背負う主人公がいた。きっちりと地盤を固め、党の公認候補(ちなみに『日本一の最低男』に登場するのも民政党!)として出馬を目前に控えていた一平は、区長選の出馬へと舵を切る。そして、ある企みのために、一平は自分が背負う物語を“日本一の最低男”へと変えるのだ。「言ってたよな、人を動かすのは物語だって」と笑いながら。
もしかしたら一平や星野幹事長のように、流星もまた背負う物語を変える日が来るのだろうか。それとも、いままでの物語を最後まで貫くのか。日山流星、最後までなかなか食えない男である。
■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
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