『風、薫る』女郎の“生き地獄”を繊細に描く展開に 明治期に“自由”を求めた者たちの闘い

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』のモチーフとなっている大関和は、日本初のトレインドナースとしてのみならず、廃娼運動にも熱心に関わり、女性が初めて社会に参加した時代を生きた人物でもある。第10週「疾風に勁草を」記念すべき第50話では、女郎の夕凪(村上穂乃佳)の存在をきっかけにして、りん(見上愛)が廃娼運動へと傾倒していくこととなる。

 遊郭・錦栄楼の主人である権田(梅垣義明)は病院に乗り込み、夕凪を連れて帰ろうとする。そこに機転を効かせ手を差し伸べたのが、かつて遊郭のやり手婆をしていたヨシ(明星真由美)。しかし、それも時間稼ぎに過ぎず、夕凪が店に戻ればこっぴどくやられてしまい、かといって逃げてしくじればさらなる仕打ちが待っている。どちらにしても地獄。ヨシの話を聞き、りんと直美(上坂樹里)は「逃げよう」「逃げましょう」と声を揃えた。

 女郎が男と逃げて生まれた娘という生い立ちを持つ直美。居ても立っても居られなくなったりんは早退し、卯三郎(坂東彌十郎)のもとへと向かった。卯三郎と向き合うりん。「その女郎一人助けても遊郭の仕組みは変わりません。社会は変わらない」と卯三郎は冷静に答える。目の前に困ってる人がいたら手を差し出したいというりんは、「今、苦しんでる夕凪さんを逃がしたいんです。せっかく命を取り留めたのに、生きても死んでも地獄だなんて言わせたくない」と卯三郎に訴える。

 そこで卯三郎がりんに見せたのが、新聞記事。女郎の自由廃業を進めている廃娼運動家について書かれており、見出しには「廃娼運動の敵とは」とある。「もし彼らに協力を仰いで廃業させられたら、その女郎にも、社会にも、リターンがあるはずです」と提案する卯三郎の言葉に突き動かされたりんは、店を駆け出していった。

 りんと卯三郎の話を聞いていたのは、“シマケン”こと島田(佐野晶哉)。小説家としてなかなか認められない島田は、槇村(林裕太)から「世相を反映した題材が受けるのかもしれない」とアドバイスを受けていたからこそ、卯三郎の言葉とりんの姿勢が身に沁みていた。りんへの思いと自身の葛藤が混濁し、島田は頭を掻きむしる。夕凪に付き添っている直美も、母から与えられた唯一のお守りを握りしめていた。

 真風(研ナオコ)は「『月に叢雲花に風』。逆もまた然り」とつぶやく。「良いことや楽しいことには、とにかく邪魔が入りやすく、長続きしない」ということわざで、りんの今後を暗示していると思われるが、第11週「凪にそよぐ」の予告では梅岡看護婦養成所の閉所がりんや直美たちに言い渡されている。追い風を背に走り出したりんだったが、この先も向かい風に打たれていきそうだ。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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