村上穂乃佳、初の“朝ドラ”出演で圧倒的存在感 『風、薫る』上坂樹里と関わる重要人物に

 放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』では、2人のヒロインの人生がさらに前進。看護を学ぶ一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)は次の実習先へと進み、一人前の看護師に少しずつ、けれども着実に近づきつつある。とくに直美に関しては、とある女性との出会いによって、ここで人生が大きく動きそうな予感。とある女性とは、「夕凪」という名の人物だ。演じているのは村上穂乃佳である。

 本作は、激動の明治期を舞台に、2人の“トレインドナース(=正規に訓練された看護師)”の活躍を描くもの。生まれも育ちも大きく異なるりんと直美はどうにも馬が合わなかったものだが、同期の仲間や先輩たち、医者や患者と過ごす日々の中で、特別な関係性を築きつつある。2人が“最強のバディ”になるのも、今ではもう夢の話じゃないだろう。

 そんなドラマも放送開始から2ヶ月が経過。第10週のタイミングで初登場したのが、村上が演じる夕凪である。彼女はりんたちの新たな実習先である内科に運び込まれてきた女郎。男とともに服毒自殺を図ったものの、一命を取り留めた。直美を捨てた母も女郎らしく、その名は「夕凪」であるかもしれないことが第8週で明かされている。直美の人生が大きく動きそうだと先述したのは、これが理由だ。

 この夕凪は年齢からして直美の母ではないだろうが、直美のルーツに関する何かしらの情報を持っていそうである。彼女の名はおそらく源氏名で、名跡を継いで「夕凪」という名を得た可能性がある。果たして夕凪が何者なのかはこの後の展開を待ちたいが、これと同じくらい視聴者にとって気になるのが、この重要人物と思しきキャラクターを演じる村上穂乃佳という俳優についてだろう。

 彼女が朝ドラに出演するのは、これがはじめて。だから多くの方にとっても、これが出会いの場になっていることだろう。しかし村上は新人ではない。すでに10年以上のキャリアを築いてきた俳優だ。『虎に翼』(2024年度前期/NHK総合)と『ばけばけ』(2025年度後期/NHK総合)でヒロインの父を演じた岡部たかしや、『ばけばけ』で借金取りを演じた岩谷健司が常連俳優として参加している「城山羊の会」の『相談者たち』(2017年)で初舞台を踏み、2023年にも同カンパニーの『萎れた花の弁明』に出演。加藤拓也が作・演出を手がける「劇団た組」の『私は私の家を焼くだけ』(2020年)などにも出演してきた、知る人ぞ知る演技者である。

 映画ファンにとっては、ミニシアター系の作品として大いに話題となった『誰かの花』(2022年)で主要人物のひとりを演じた俳優として記憶されているのではないだろうか。団地のベランダから落ちたひとつの植木鉢が悲劇を生み、人々を翻弄しては苛むヒューマンドラマだ。

 村上が演じていたのは最も観客に近い立場の人物だった。主人公たちと深い関わりを持つ彼女は、彼らに寄り添いたい気持ちがある。しかし、目の前の悲劇を客観的に捉えてみると、それが正しい選択だとは思えない。落ちた植木鉢はひとりの人間の命を奪った。そしてこれを落としたかもしれない人物は、高齢のために薄れゆく記憶の中を彷徨っている。ヘルパー役の村上の演技は繊細で、同時に強さの感じられるものだった。公開から4年が経ったが、今でも鮮明に覚えている。これに同意してくださる方は多いことだろう。

 大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(2025年/NHK総合)や『ボイスⅡ 110緊急指令室』(2021年/日本テレビ系)、今年は『テミスの不確かな法廷』(NHK総合)などのドラマ作品に出演しているが、いずれもレギュラーでの参加ではなかった。こうしてタイトルを示すことで、「あの役の人か」となる方もいるのではないだろうか。そして今作『風、薫る』で務めるのは、直美と特別な関係性を築くことになるであろう役どころだ。

 りんたちの介抱によって、夕凪はどうにか命をつなぎ留めた。が、彼女が苦しげに絞り出す言葉はどれも重く厳しいもの。短いシーンではあるが、私たちの誰もが夕凪という人間の“これまで”を想像させられることになったはずだ。ベッドの上で横になったままという表現を抑制された状況でも、その悲痛な声と表情とに村上は夕凪の心情をにじませた。

 これから彼女が口にする言葉たちは、直美と母の関係に肉薄するものになるのかもしれないし、そうでなくとも、直美を捨てた母の当時の心境に思いを馳せることになるのは間違いない。『風、薫る』が描くのは明治期の医療の現場のリアルだけでなく、他者の痛みを知ること、知ろうとすることの大切さでもある。村上が演じる夕凪は、本作において極めて重要な役どころだといえるだろう。その決定的なシーンが訪れたとき、村上穂乃佳という演技者は私たちにとって、これまで以上に特別な存在になるはずである。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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