『素晴らしき新世界』にハマる人なぜ続出? 異色のタイムスリップが覆すジャンルの定石

「罰か、褒美か。生き残ったなら、この手で褒美にすればいい」

 第1話で放たれたこの台詞が、Netflixシリーズ『素晴らしき新世界』の持つ圧倒的なエネルギーを象徴している。本作は、過酷な過去から未知の現代へと放り込まれたヒロインが、持ち前の生命力で運命を切り開いていく異色のタイムスリップ劇だ。

 朝鮮時代に死罪を言い渡され、毒殺されたはずの悪女・姜禧嬪(イム・ジヨン)。しかし目を覚ますと、彼女は現代の時代劇の撮影現場におり、周囲から「ソリ」と呼ばれる無名女優の体にタイムスリップしていた。

『素晴らしき新世界』(SBS公式サイトより)

 ソリ(=姜禧嬪、以下ソリ)を待ち受けていたのは、目も眩むような高層ビル群と、誰もが手元の小さな端末を見つめて歩く、異様な光景。言葉こそ通じるものの、常識も、社会のシステムも、人間関係の距離感も、彼女がいた時代とはまるで違う。すべてを失った彼女は、未知の文化を前にして激しく困惑する。しかし、彼女はそこで立ち止まるような女性ではなかった。持ち前のタフさと観察眼で、この「新世界」を生き抜くための術を、泥臭く模索し始める。

 韓国ドラマにおける「タイムスリップ」は、1つの独立した巨大なジャンルとして君臨している。不条理に命を落とした、あるいは裏切りによって絶望の淵に立たされた主人公が過去へと回帰し、あらかじめ知っている未来の知識を武器に人生をやり直す。「あのときこうしていれば」という後悔を、やり直しによって回収していく展開は爽快で、近年のタイムスリップ作品の大きな潮流だった。

 一方、本作の主人公が直面するのは、やり直すべき過去ではなく、誰も正解を知らない「未来(新世界)」を生きることだ。新しい価値観、想像を絶するテクノロジー、そして全く知らない人間関係の荒波へと、身一つで放り込まれるソリ。スリルに満ちた状況の中でも、たくましく自分の居場所を掴んでいこうとする彼女の姿に、思わず胸が躍る。

『素晴らしき新世界』(SBS公式サイトより)

 そんな“新世界”でソリが出会うのが、ホ・ナムジュン演じる財閥社長チャ・セゲである。本作を語る上で、ソリとセゲを演じる、イム・ジヨンとホ・ナムジュンが繰り広げる掛け合いの妙は外せない。一見すると水と油のような2人の噛み合わないやり取りが、本作になんとも心地よいテンポを生み出しているのだ。

 イム・ジヨンといえば、日本でも話題となった『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』での、冷酷な悪役の印象が今なお鮮烈だ。『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』で見せた、身分を偽りながらも過酷な運命を生き抜いていくタフなヒロイン像も記憶に新しい。これらの作品を経て、“強い女”のイメージを築いてきたイム・ジヨンだが、本作はそのイメージを、単なる既視感ではなく、コメディの推進力へと昇華している。

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