『風、薫る』が描く“患者の気持ち”を知ることの難しさ りんの思いは千佳子に届くか
『風、薫る』(NHK総合)第37話が5月19日に放送された。
和泉家侯爵夫人の千佳子(仲間由紀恵)の看護をまかされたりん(見上愛)。しかし、千佳子を怒らせてしまい、「思い上がらないで」と叱られる。
直美(上坂樹里)は、丸山(若林時英)に塗り薬を塗ろうとして「患者の気持ちなんてわかんなくて当たり前」と言われてしまった。だが、ここは直美が一枚上手だった。落ち込んだふりをして丸山をあわてさせ、自分に協力させる。
回診の時間、外科助教授の藤田(坂口涼太郎)を持ち上げさせ、間接的に直美自身の評価も上げる。藤田は気持ちよくおだてられ、自分が乗せられたことに気づかない。看病婦のフユ(猫背椿)からは「ずるい女」と嫌みを言われたものの、直美には、看護婦の地位を向上したいという強い気持ちがあるのだろう。
病室の千佳子は病気のせいか気難しさが前面に出ている。そんな千佳子も、家族にはわずかながら本音をのぞかせる。夫の元彦(谷田歩)と見舞いに訪れた息子の行彦(荒井啓志)に「手術をしたところで治る見込みは半分もない」と返すのだが、「わがまま」と言われて返す言葉がなくなってしまった。
患者の気持ちを知ることの難しさが第37話では描かれていた。わかろうとして悩むりんに対して、直美のほうは、わからないのは当然と割りきって、ある程度フラットに接しているようにも見える。そんなりんと直美の会話。
観察によって患者の気持ちを理解せよと説くナイチンゲールも、その方法は書いていない。患者の気持ちがわからなければ、適切な看護をすることもできない。どうしたら、患者の気持ちになれるのか。
りんはシマケン(佐野晶哉)との会話を思い出して、落ち込んでいるもの同士なら、互いの気持ちがわかりあえると考える。しかし、それは友人ならまだしも、患者には通用しない。直美が言うように「仕事だったら同じ気持ちじゃ駄目」で、看護婦として「わかるように努める」しかない。
そもそも直美がりんを呼び捨てにするくらい理解し合っている二人は、どうやって互いを理解するようになったのだろうか。時間をかけて観察すること、相手を知ることが基本にあって、りんと直美はあらためて自分たちの関係性に目を向けることになった。
看護婦養成所の同期は、共同生活を送り、同じ科で実習する中で関係が深まった。多江(生田絵梨花)と喜代(菊池亜希子)、しのぶ(木越明)や、トメ(原嶋凛)、ゆき(中井友望)も同様だ。夜がふけて裏庭で夕食をとる彼女たちは、誰よりも互いを知る仲間になっていた。裏庭の切り株は同期もひそかに訪れていて、柴田(飯尾和樹)が教えたのだろうと思われる。
仲間の存在を感じるほど、りんの頭には千佳子のことが浮かんでしまう。家族に理解してもらえず、一人で病を抱える千佳子にりんの思いは届くだろうか。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK