仲間由紀恵×見上愛の距離感がもどかしい 『風、薫る』が描く“寄り添うこと”の難しさ

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』の“病院実習編”が2週目に突入。第8週初日の放送となる第36話では、りん(見上愛)の患者の視点に立とうとする姿勢が、千佳子(仲間由紀恵)との間にハレーションを生んだ。

 乳がんを患い、乳房切除手術に向けてりんたちが実習中の帝都医科大学附属病院に入院している千佳子。華族の奥様ゆえに病院側はVIP待遇を徹底し、見習生たちを彼女から遠ざけていたが、一転してりんに看護を任せたいと言い始める。千佳子は何かと理由をつけては次々と看病婦を交代させており、扱いに困り果てた病院幹部は見習生に体よくその役割を押し付けたのである。もちろん、何か問題があれば、見習生のせいにするつもりだ。

 バーンズ(エマ・ハワード)は病院側の魂胆に気づいており、直美(上坂樹里)を通じて「一ノ瀬りんにはまだ和泉侯爵家夫人の看護をする技量はありません」と伝える。しかし、直美はバーンズと意見が異なり、りんこそ千佳子の担当に相応しいと考えていた。最初に担当した園部(野添義弘)とはうまくコミュニケーションを取れず、怒らせてしまったこともあるりん。一方で、同部屋の患者たちは、何気ない会話を振ってくれる彼女の前で少しずつ笑顔を見せるようになっている。そんなふうに良くも悪くも患者の感情を動かせるりんなら、固く閉じた千佳子の心にも触れられるのではないかと直美は考えたのだ。

 バーンズにそう意見する直美に背中を押され、りんは自らやりたいと病院幹部に申し出た。バーンズも腹を括り、りんと直美に「患者のため、2人で協力しなさい」と告げる。常に正しい道を選び取ろうとするりんと、正しさだけでは生きていけないことを知っている直美は様々な場面で意見が合わず、ぶつかってばかりだった。しかし、ようやく仲間意識が芽生えてきた様子。りんを「あんた」と呼んでいた直美が、咄嗟に下の名前で呼んだことが何よりの証拠である。

 さっそく、千佳子の病室に挨拶をしに向かったりん。だが、千佳子は「女中ならうちの者で事足りています」とだけ言い放ち、背を向けてしまう。園部のときと同様に、会話すらもままならない状況だ。しかし、あのときと異なるのはりんがビクビクと怯えた態度を取らなくなったこと。バーンズから患者に感謝されたいと望むのは烏滸がましいと言われたことで、目が覚めたのだろう。看護婦がやるべきことは、患者と仲良くすることではない。患者をよく観察し、きめ細やかなケアを通じて回復を促すこと。千佳子の冷たい態度を特に気に留めず、淡々とできることをこなしていくりんは以前よりも看護婦らしく見えた。

 だが、脈を測ろうとした途端、腕を強く振り払われてしまう。さらにはお通じについて聞くと、「無礼者! 恥を知りなさい!」と千佳子は激怒し、りんは病室を追い出されてしまった。その夜、りんが仲間たちに相談を持ちかけると、舎監の松井(玄理)から「私も他人に体を触られるのはそれだけで緊張します」という意見が出る。彼女が言うように、たとえ相手が医療者であっても、よく知らない相手に体を触られるのは抵抗感が伴うもの。まして女性で、生粋のお嬢様である千佳子は尚更ではないだろうか。つまり、りんはまだ千佳子との間に信頼関係が築けていないのだ。

 それにもかかわらず、りんは看護婦の立場から当然のごとく脈を測ろうと、躊躇なしに千佳子の手に触れてしまった。その反省を活かし、次の日から徹底して患者の目線に立とうとするが、「奥様のお辛い気持ちはよくわかります」というりんの言葉が千佳子の逆鱗に触れてしまうのだ。千佳子の横暴な態度は単なるわがままではなく、突然病気になってしまったことへの怒りや不安からくるものではないだろうか。そんなときに健康な人間から分かったようなことを言われたら、怒るのも当然である。相手に共感を示すことが、すなわち寄り添うということではない。りんはまた「間違えた」。今回の間違いは、彼女がまた一つ看護婦として成長することに繋がるのだろうか。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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